「REDD+」を視野に、ボルネオで森の森林調査を実施
2012/06/23
東南アジアの熱帯の島、ボルネオ島。WWFは、世界で最も生物多様性が豊かな場所の一つとして、この島の生物多様性の保全に取り組んでいます。2012年6月から、WWFは京都大学の協力を得て、島中部東カリマンタン州のクタイバラ県で森林の植生調査を開始しました。これは森林保全と地球温暖化防止を組み合わせた「REDD+」事業を、今後現地で進めるための布石にもなる取り組みです。
ボルネオ島での森の調査
2012年6月、WWFジャパンは京都大学北山兼弘教授らのチームの協力を得て、ボルネオ島で熱帯林の植生および哺乳動物の生息数についての調査を開始しました。調査の対象地は、島中西部のクタイバラ県内の林産企業が管理する森林。
このクタイバラは、今もおよそ240万ヘクタールの森林がまとまった規模で残っている場所で、WWFが現在保全を進めている、ボルネオ島の中央部から北西部にかけての広大なエリア「ハート・オブ・ボルネオ」にも含まれます。
今回の調査は主に、森林内の樹種やその大きさ(太さ)を調べるもので、結果は9月頃までに京都大学によってまとめられる予定です。また、野生動物調査のため、自動撮影カメラ(カメラトラップ)を全域に設置した調査も開始。現地で今後行なう調査のためのデータ収集の方法を、京都大学のチームに指導していただきました。
また、この調査結果からは、生物多様性の豊かさだけでなく、地域の森がどれくらいの炭素を保持しているか、その推定に必要な情報が得られることも期待されています。
森林を保全することで地球温暖化の防止にも貢献する、「REDD+」と呼ばれる取り組みを、現地で進めてゆくにあたり、その規模と可能性を明らかにするためです。
適切な森林管理が進む森
今回調査を行なった森は、伐採業者が伐採権を所有する森でした。この業者は、FSC(森林管理協議会)の認証を目指しており、森林の環境や社会に十分な配慮をしながら事業を行なうことが、認証取得のために求められている業者です。
認証を目指していることにたがわず、森林の環境は比較的よい状態で保たれており、過去に伐採が行なわれた場所でも、回復の傾向がみられました。
とりわけ、この業者が認証を目指し始めた2010年以前と、それ以降に厳しい管理のもとで伐採を行なってきた森を比べると、2010年以降の森の方がよい状態で回復している点が視覚的に認められました。
これは、適切な森林管理を行なうかどうかが、森林回復や炭素の蓄積の状況を、大きく左右することを示していると考えられます。こうした視覚的に認められる効果を、科学的に証明することが、今回の調査の目的の一つです。
今回、調査を行なった森から生産される木材は、いずれフローリングや合板に加工されて日本へ輸出される予定ですが、こうした適切な管理のもとで生み出された木材を、消費国である日本がきちんと認識し、選んで使ってゆくことは、現地の取り組みを支え、森林保全と温暖化の防止を推進することに直接つながります。
利用している木材と温暖化の原因になる炭素、さまざまな野生動物の生きる森、その全てが一つにつながっていることを認識し、破壊的な伐採によって安く生産される木材や紙の利用をあらためることは、消費国である日本の責任といえるでしょう。
「ハート・オブ・ボルネオ」の取り組み
WWFが現在保全を進めている「ハート・オブ・ボルネオ」2200万ヘクタールにおよぶエリアの活動では、森林破壊と木材、炭素と温暖化、地域社会の問題までを、一つの問題として捉え、解決する取り組みを進めています。
その要となるのは、広大なエリアに含まれる、それぞれの地域内における土地利用計画の在り方を変えてゆくこと。貴重な森を残しつつ、利用する森の管理を徹底し、安易な開発を食い止めてゆくための施策を、地域ごとに実現してゆくことです。
今回のクタイバラ地域での活動は、その中でも進んだREDD+プロジェクトの事例として注目されており、今後の展開が期待されています。京都大学との調査でREDD+プロジェクトが生物多様性にも良い影響があることが確認できれば、この取り組みはさらに進むことになるでしょう。
今後は、現地より林業関係者らを日本に招き、現地の森林管理をより充実したものにするための研修やイベントなども計画しているほか、こうした適切な森林管理のもとで生産された木材や、現地の林業の様子についての、日本国内での発信にも取り組んでゆきます。
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