生物多様性条約第11回締約国会議(COP11)がインドで開会
2012/10/08
2012年10月8日、生物多様性条約第11回締約国会議(COP11)が、インド中南部のハイデラバードで始まりました。10月19日までの12日間、190カ国以上が参加して、地球資源の持続可能な利用を目的に締結された「生物多様性条約(CBD)」の実行について議論をおこないます。開会に際し、WWFは各国の政府代表団に向けて以下のようなメッセージを出しました。
各国は生物多様性保全のための資金目標を定め、「愛知目標」を実行すべき
2010年に名古屋で開催されたCOP10では、各国が現状以上の種の絶滅や貴重な自然の減少を防ぐことに合意し、「愛知目標(※1)」が採択されました。しかし、多くの国々はこれを実行に移していません。WWFはCOP11に参加するすべての国に対し、愛知目標を実行に移すことを呼びかけます。
WWFインターナショナル自然保護部長ラッセ・グスタフソンは、
「愛知目標は、各国政府が協力しあって地球を守る意志があるということを表明するものです。そして今、各国政府はこの目標を達成するための資金を動員し、実行に移す必要性があります」
と話しています。
生物多様性条約締結国のうち91%は、すでに自然および生物多様性を保護するための戦略と計画を策定しています。しかし名古屋で合意された新戦略計画を考慮してこれを見直した国と地域はわずか14しかありません。自国の開発計画に生態系サービスを組み入れる手段を講じた国と地域の数は、さらに少なくなります。
現状はこのように悲観的ではありますが、愛知目標で合意されたことを実行に移し始めている国々もあります。
たとえば、インドネシア政府は森林炭素生物多様性保護プログラムに合意し、米国と2,850万米ドルの自然保護債務スワップ(※2)を締結しました。ガイアナ共和国では2012年7月に保護地域信託基金を設立するための糸口となる自然保護信託基金が立ち上がりました。
またEUでは、CBDの目標を達成するための戦略を合意しており、これが実行されれば2020年までに生物多様性の損失を止めるという目標に近づけるかもしれません。
WWFインターナショナル生物多様性政策コーディネーターのロルフ・ホーガンは、
「これらの目標を達成するためには、投資する覚悟が各国政府に求められます。経済的に余裕のある国々は貧しい国々を援助しなければいけませんし、すべての国で生物多様性保護に投資する国家予算を増額しなければいけません。自然は、人類が地球上に存在できる基盤です。もし各国政府が人類の未来を真剣に考えているのであれば、自然に投資するべきです。生物多様性と自然を守ることは、人類の未来への投資なのです」
と話しています。
前回の議長国・日本は…
日本は2010年のCOP10の議長国としてCOP11の開会を宣言し、COP11の議長選出までその役割を担うことになっています。開会式ではCOP10の議長を務めた松本龍・元環境大臣が挨拶をする予定です。
また、2012年9月28日に「生物多様性国家戦略2012-2020」が閣議決定されており、名古屋で合意された新戦略計画を考慮して生物多様性戦略を見直した14の国と地域に入っています。
自国の地名を冠する「愛知目標」の実行に向けて日本がどれだけ真摯な姿勢を見せるのか、また世界の国々が資金をはじめとした重要課題を解決して生物多様性保全に一歩を踏み出すことができるのか、会合の動向に注目が集まっています。
※1.「愛知目標」とは
「愛知目標」とは、2010年10月に愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(CBD・COP10)で採択された、「生物多様性を 保全するための戦略計画2011-2020」の中核をなす世界目標。この会議で、2020年までに生物多様性の損失を食い止めるための緊急かつ効果的な行動をとることが合意された。そのために各国に求められる行動が20にまとめられ、愛知目標(愛知ターゲット)と名づけられた。
※2.「自然保護債務スワップ」とは
先進国やNGOが、途上国での自然保護施策を推進させることの約束を交換条件として、その途上国の累積債務を負担すること。
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