300万立方メートルの土砂を投棄?グレートバリアリーフの危機をめぐって
2014/05/12
オーストラリア、クイーンズランド州の港湾拡張事業により、港湾内から浚渫(しゅんせつ)された大量の土砂が、グレートバリアリーフのある海域で投棄されようとしています。2014年5月1日には、世界遺産の登録・管理に携わるユネスコも、新たな報告書の中で事態の懸念を表明。浚渫土砂の投棄を認可したオーストラリア連邦政府に対し、事業計画の見直しを強く求める声が国際的にも高まっています。
オーストラリア政府が承認した土砂投棄
2014年1月、オーストラリア連邦政府は、クイーンズランド州にあるアボットポイント港を拡張するため、港湾内の浚渫を行ない、その土砂を沖合の海洋に投棄することを認可しました。
投棄される予定の浚渫土砂の総量は、およそ300万立方メートル。
しかも、投棄が予定されている海域は、世界屈指の規模と豊かさを誇るグレートバリアリーフのサンゴ礁に近いため、その生物多様性への悪影響が懸念されています。
この問題について、2014年5月1日、ユネスコも新たに発表した報告書の中で、事態の懸念を表明。
サンゴ礁への悪影響が十分に予測でき、環境配慮の選択肢が他にもあったにもかかわらず、投棄の認可が行なわれたことは不適切であった、と指摘しました。
さらに、土砂の投棄が実際に行なわれれば、世界自然遺産に登録されているグレートバリアリーフが、「危機遺産のリスト」に記載される可能性についても言及し、2015年の世界遺産委員会の会議が開かれるまでに、サンゴ礁保全管理の改善について、詳細をまとめた報告を提供するよう、オーストラリア政府に対して求めました。
こうした国連機関が、このグレートバリアリーフ海域での土砂投棄の許可について、公式にコメントを発表したのは初めてのことです。
サンゴ礁を守りたい!人々の願いをとどけるために
この問題については、長年グレートバリアリーフの保全に携わってきた、WWFオーストラリアも、サンゴ礁の危機が明るみに出た時より抗議の意を表明。
オーストラリア政府に対して、土砂の投棄中止と、環境保全対策の伴わない港湾の拡大計画を見直すよう強く求めると共に、現在もオーストラリア国内に向けて、広く問題の指摘と情報の発信に取り組んでいます。
この問題を担当しているリチャード・レックは、今回のユネスコの報告と指摘について、「ユネスコの懸念は、数千人のオーストラリア人の科学者と、世界一流の数百人の科学者が共有するものです」とコメントし、土砂の投棄を禁ずるよう、オーストラリア政府にあらためて呼びかける意思を示しました。
世界的にも貴重かつ大規模なグレートバリアリーフは、世界遺産に登録された後にも、減少や劣化の一途をたどっています。
世界遺産であるグレートバリアリーフの海を、未来に引きついでゆくためにも、このオーストラリア政府の決定と、土砂投棄の計画の見直しは、欠かせない取り組みとなるでしょう。
ユネスコそして多くの科学者やNGO(非政府組織)の声を受けて、クイーンズランド州政府とオーストラリア連邦政府が、どのようは判断を下すのか、注目されます。
関連情報
▼WWFインターナショナルのサイト