今度こそ実現されるか? APRIL社が新たな方針を発表
2015/08/27
2015年6月3日、主にインドネシアで原料調達を行ってきた製紙メーカーAPRIL社が、改訂版「持続可能な森林管理計画2.0」を発表しました。インドネシアのスマトラ島を中心に自然の熱帯林を破壊し、植林地として開拓することで紙原料を調達してきたAPRIL社。その操業のあり方については、長年にわたりWWFをはじめとする、多くのNGO(市民団体)が問題を指摘してきました。今回の方針の発表は、同社が2014年1月に発表した「持続可能な森林管理方針」に続くものですが、この方針の後も自らが掲げたその方針に違反して熱帯林を破壊していることが、現地のNGOの調査によって明らかになっていました。
繰り返された誓約と違反 NGOは実行を期待
1990年代にインドネシアのスマトラ島での操業を開始したAPRIL社。
それから約20年以上にわたりインドネシアの貴重な自然林を破壊し、植林地を拡大する原料調達のあり方が世界から問題視されてきました。
現地において自然林の破壊は、単なる森林の減少のみならず、野生の動植物への悪影響、大量の温室効果ガス排出、地域社会との紛争など多くの問題にもつながっています。
指摘される多くの問題にAPRIL社は過去に幾度となく、貴重な自然林の破壊をこれ以上行なわないことを誓約してきました。
直近では2014年1月に「持続可能な森林管理方針」を発表、管理する植林地と同等の面積の土地を保全、森林を回復することも発表しました。
WWFを含め、インドネシア現地で森林の保全やモニタリングに取り組む多くのNGOは、こうした発表を歓迎しつつも、本当に操業の現場において変化がもたらされるのかを懸念し、同社の操業のモニタリングを継続してきました。
しかし「持続可能な森林管理方針」から約1年が経過した2015年1月末、同社の操業には何の変化も認められないことを報告、自らが掲げた方針の徹底を再度強く求めました。
そして2015年6月、APRIL社は「持続可能な森林管理方針」をアップグレードした改定した改訂版「持続可能な森林管理方針2.0」を発表。
WWFインドネシアは、この方針が発表されたこと自体は歓迎しつつも、これまでの歴史から、掲げる方針を自らが確実に行動に移すことを期待すると下記の声明を発表しました。
WWFインドネシア:記者発表資料 2015年6月3日
APRIL社の森林破壊の一時停止を歓迎 しかし実施には慎重な調査が必要
ジャカルタ発: 2015年6月3日、WWFは、製紙メーカーAPRIL社から発表された改訂版「持続可能な森林管理方針(SFMP 2.0)」における自然林皆伐と新たな泥炭地開発の即時一時停止を歓迎する。
これについてWWFインドネシアのCEOエフラン博士は、「本日APRIL社により発表された強化された持続可能な森林管理方針は、長年にわたる森林破壊の停止を呼びかけてきた市民社会への同社の応えである。WWFは、同社の潜在的な環境・社会的影響を考慮し、この誓約が完全に実施されることを期待する」と述べた。
その一方でWWFは、APRIL社が今回の方針を完全かつ厳格に実施するかについては依然として慎重であり、インドネシアで森林をモニタリングするNGOの連合体、アイズ・オン・ザ・フォレストのようなステークホルダーと連携して進行状況を監視するつもりである。
APRIL社の新方針では、新たな土地や伐採ライセンスの取得、またこの方針における森林保護措置に違反して開発された植林地を持つサプライヤーと取引しないことを誓約している。同社は、新たな皆伐や泥炭林開発(排水)は行わないものの、劣化した泥炭地の開発は独立した専門家の推薦に基づき続行するとしている。また新方針には、高炭素蓄積(HCS)地を定義し、保全するために設立されたHCS運営グループによって定められた「高炭素蓄積地の測定アプローチ(注1)」によって特定された高炭素蓄積地の保護に関する誓約も含まれている。
ステークホルダー諮問委員会のメンバーとして、WWFは、他の専門家や市民社会と共に、APRIL社が誓約を履行し、責任ある生産者への変わるための支援と助言を継続する。また同社に対し、市民社会からの抗議を踏まえ、「持続可能な森林管理計画(SFMP 2.0)」の実施においてはその進捗状況の独立した評価報告を実施するよう求める。さらに、明確で透明性のある方法でステークホルダー諮問委員会および重要なステークホルダーからのすべての勧告や助言に対処するよう要請する。
WWFインドネシアの森林コモディティ市場変革プログラムリーダーのアディティヤ・バユナンダは、「今回の強化された誓約は、APRIL社の責任ある、かつ持続可能な生産に向けた道のりにむけた前向きな一歩である。また同社に対し、新方針に記されているように、常に先住民の土地所有権を尊重し、既存の社会紛争の解決に向け真摯に努力するよう求める。WWFは、市民社会と協力し同社の誓約とコンプライアンスのモニタリングおよび評価を継続する」と述べた。