マレーシア最大の海洋公園が誕生


2016年5月30日、マレーシアで新たにトゥン・ムスタファ国立公園が設立されました。対象となっているのは、ボルネオ島北東部のサバ州沿岸、約1万平方キロの海域で、サンゴ礁やマングローブ、海草藻場が広がる、豊かな漁場でもあります。WWFマレーシアは13年間にわたり、政府当局や地域社会と協力し、この国立公園の設立に尽力。今回の実現は、東南アジアの貴重な海洋生態系を守ると共に、貴重な自然資源の保護と、地域の持続可能な開発を促進する重要な一歩になると期待されています。

活動開始から13年!ついに新しい保護区が誕生

250種以上の造礁サンゴ、360種を超える魚類、そして、絶滅の危機にあるアオウミガメやジュゴン。

広さ1万平方キロ、50以上の島々が浮かぶ海洋保護区、トゥン・ムスタファ国立公園に、そうした生きものたちが息づく、東南アジアでも屈指の豊かさを誇る海域です。

しかし、自然の貴重さが早くから知られる一方で、近年は無計画な開発や水産資源の乱獲、汚染などにより、環境の悪化が指摘されてきました。

サバ州の国立公園当局が、WWFマレーシアをはじめとする国際的なパートナーや、地域社会の人たち、またマレーシア政府と協力しながら、この海域を国の保護区である「国立公園」に指定する動きをスタートさせたのは、2003年のことでした。

漁場としても長年利用されてきた海域を、保護区にすることには、さまざまな困難が伴います。しかし、それでも計画は頓挫することなく、その後13年間にわたり、関係者による不断の努力が継続されてきました。

そして長年の取り組みの末に誕生した、トゥン・ムスタファ国立公園は、環境と地域社会の双方に利益をもたらす目標を持つ新たな海洋保護区として、そのスタートを切ることになったのです。

地域の豊かな海を守っていく試みとして

トゥン・ムスタファ国立公園では、特に指定された海域内で、地域の人々が漁業を継続できる仕組みになっています。

そこでは毎日、約100トンの魚の漁獲(70万~100万マレーシアリンギット=約1,900万~2,700万円)があり、それが、保護区内の沿岸域や島での生活を支えることにつながっています。

漁業をはじめ、観光業などを生業とし、国立公園内に住み暮らす人の数は8万人以上。

いずれもサンゴ礁やマングローブ、海草藻場といった海洋生態系が、こうした人の暮らしを支える海の恵みの母体となっているのです。

この自然を、広域で健全に保全することで、さまざまな野生生物はもちろん、地域の漁業や暮らしを支え、両立させることを目指すこと。

それが、トゥン・ムスタファ国立公園の担う重要な役割であり、これからの挑戦です。

今回の新たな国立公園の設立に接し、WWFマレーシアのディオニシウス・シャルマ事務局長は、次のように述べました。

「長い間の努力が実を結び、豊かな生物多様性を育む海のための画期的な保全を実現したことは、素晴らしいことです。トゥン・ムスタファ国立公園は、WWFが力を合せて目指している、自然と人の暮らしを支える取り組みの、国際的なシンボルなのです」

2015年4月には、これに関連した取り組みを評価され、サバ州政府から表彰を受けたWWFマレーシアは、今回の国立公園の設立を心から歓迎するとともに、今後もその運営・管理を軌道に乗せるため、協力と技術的な支援を継続していく予定です。

関連情報

この記事をシェアする

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP