久米島でサンゴの大群集を発見


沖縄島の西約100kmに位置する久米島の沿岸で、大規模なサンゴ群集が発見されました。WWFジャパンの「久米島応援プロジェクト」に参加している研究者が、2010年4月および5月に、現地で潜水調査を行なったところ、数百メートル四方を超える広大な範囲に広がっており、貴重な環境が残されていることが明らかになりました。

「久米島応援プロジェクト」の現地調査で確認

今回発見されたサンゴ群集は、久米島(沖縄県久米島町)にある、「ナンハナリ」と呼ばれる沿岸域の、深さ15~35mの海域に広がっており、2009年8月に、久米島の漁業者とダイビングインストラクターによって発見されました。

WWFジャパンの「久米島応援プロジェクト」では、11月からこのサンゴ群集の調査を始め、2010年4月と5月に潜水調査を実施。
その結果、発見されたサンゴ群集が、枝状のミドリイシ属の一種(現時点で種は未確定)が多くを占める大群集で、数百メートル四方を超える規模を持つことが明らかになりました。

また、この群集は、被度(海底を覆うサンゴの割合)が、70~80%に達する、密度の高い群集であることも分かり、周辺の海域にサンゴの幼生を供給する、生態学的にも高い価値を秘めた環境である可能性が認められました。

沖縄の海では近年、赤土の流出や、サンゴを喰うオニヒトデの大発生、また、サンゴの白化現象を引き起こす水温上昇などの影響により、多くの海域でサンゴ被度が低下する状態が続いています。その中で、今回のような高被度群集が形成・維持されていたことは、大きな驚きであり、また貴重な発見となりました。

保全に向けた取り組み

今回の調査では、主要な群集の分布範囲を長さ300m、幅200mまで確認できましたが、全体の規模はさらに大きいものと思われ、継続した調査が求められています。

この大群集を発見した、地域の海域に詳しく、高い潜水技術を持つ地元の漁業者やダイバーの方々が、研究者と連携して調査を行なう体制ができれば、さらなる発見もあるかもしれません。

一方で、このようなサンゴ群集は、ダイビングのスポットとしても価値があるため、たくさんの人が押しかけた場合、残されている貴重な環境が、損なわれてしまう怖れがあります。

WWFジャパンの「久米島応援プロジェクト」では、このサンゴ群落を保全するため、2010年6月に現地で説明会を開催し、漁業関係者や地元のダイバーと協力しながら、調査と持続可能な海の利用のあり方を検討することにしています。

関連情報

久米島応援プロジェクトについて


記者発表資料 2010年5月18日:沖縄・久米島でサンゴの大群集を発見

WWFジャパン「久米島応援プロジェクト」現地調査

【東京発】沖縄島の西約100kmに位置する久米 島(沖縄県久米島町)の沿岸(ナンハナリ)において、水深15~35mの海域に広がる大規模なサンゴ群集が確認された。このサンゴ群集は、2009年8月 に久米島の漁業者とダイビングインストラクターによって発見され、2010年4月及び5月にWWFジャパン「久米島応援プロジェクト」に参加している研究 者らの潜水調査によって確認された。

調査によると、発見されたサンゴ群集は、枝状のミドリイシ属の一種(現時点で種は未確定)が優占する大 群集を中心に、数百メートル四方を超える広大な範囲に広がっており、学術的にも貴重なものである。「久米島応援プロジェクト」では、来月にも現地での説明 会を開催し、漁業関係者や地元ダイバーと恊働しながらこのサンゴ群集に関する調査を進め、持続的な利用を考慮した保全のあり方を模索する予定。

発見の経緯 「深場」に広がるサンゴの大群集

今 回確認されたサンゴ群集は、久米島南東部沿岸の「ナンハナリ」と呼ばれる場所の水深15~35m付近にあり、2009年8月に久米島泊漁港の漁業者(田端 敦氏および田端裕二氏)とダイビングインストラクター(COLOR CODE 代表の塩入淳生 氏)とによって漁とダイビングポイント調査の過程で発見された。一方、WWFジャパンが中心となって進めている「久米島応援プロジェクト」では2009年 11月から現地調査を開始し、久米島の漁業者への聞き取り調査を行う過程でその情報を入手。2010年4月と5月に、同プロジェクトに参加する研究者ら と、発見者らとによる合同潜水調査を行い確認した。

発見の学術的価値

この大群集は、枝状のミドリイシ属の一種(今後、採捕許可を得て標本を採集し、種同定や群集の規模等を調査の予定)が優占する群集を中心に、水深15~35m付近のやや深所に分布する、被度70~80%の高被度群集である。

今 回の予備的調査で主要な群集の分布範囲を長さ300m、幅200mまで確認できたが、全体の規模はさらに大きいものと思われる。また、本群集には、枝状ミ ドリイシ類以外にも多くのサンゴ種が含まれており、周辺海域への幼生の供給源として、生態学的価値も高いと考えられる。

大規模なサンゴ群集 としては石垣島白保のアオサンゴ群集(南北約300m、東西約150m)、深所のサンゴ群集としては西表島網取湾のアミトリセンベイサンゴ群集(水深 40~50m)が良く知られるが、特に深所にある大規模群集については,その成立過程、維持機構、生態系における役割などについての研究例も少なく、この 点からも学術的価値は高い。

今回の大群集の発見は、同様の水深帯(環境)での野外調査の重要性を示している。今回のように、地域の海域に詳しく高い潜水技術を持つ漁業者及びダイバーと、研究者とが密に連携して研究を行うような体制づくりを進めれば、今後、他地域でも同様の発見が期待されるであろう。
沖 縄のサンゴ礁は、近年、赤土等の流出やオニヒトデ大発生、白化現象を引き起こす高水温などの影響により、サンゴ被度の低い状態が続いており、全般に健全と はいえない。このような状況下で今回のような高被度群集が形成・維持されていたことは、大変興味深く、同時に希望を抱かせるものといえる。

観光利用と保全のあり方

今回発見されたサンゴ群集は、やや深所にあるものの、レジャーダイビングでも十分楽しめるため、ダイビングポイントとしての利用が考えられる。

しかし、多数のダイバーが頻繁に利用することになった場合、経験の浅いダイバーの接触によるサンゴの破壊等の影響が懸念される。また、久米島周辺の多くのダイビングポイントでは船の係留ブイが設置されていない状況にあり、船のアンカーによる破壊も懸念される。

一方、同海域は地元漁業者にとって重要な海域であり、漁場として利用されているため、係留ブイが漁業の操業に支障をきたすことも十分理解する必要がある。今後の対策としては、

  1. 漁業の邪魔にならないような係留ブイ(中層ブイ)の設置
  2. レジャーダイビングにおける利用ルールの設定
  3. 地元ダイバー/漁業者による定期的な監視(モニタリング)

などを行なって持続的な利用を目指すことが考えられる。

対策の実行にあたっては、漁業者・ダイバー・研究者間での十分な協議が必要であると思われる。「久米島応援プロジェクト」では、6月にも今回のサンゴ群集の発見についての現地説明会を開催し、今後の持続的な利用と保全のあり方について模索する予定である。


共同記者発表資料 2010年5月18日:WWFと久米島町が協定書を締結 地域活性化を視野に入れた環境保全活動で連携

【那覇発】WWF(世界自然保護基金)ジャパンと久米島町は、地域活性化を視野に入れた環境保全活動を相互に協力しながら実施することに合意し、協 定書を締結することとなりました。サンゴ大群集をはじめとした久米島ならではの豊かな自然の資源を持続的に活用してゆくための工夫や沖縄県各域で深刻な問 題となっている赤土等の流出などについて、久米島内外のさまざまな個人、団体の連携を促し、効果的な保全対策を進めます。

2010年5月31日11時より、沖縄県庁(5階)記者会見室において、WWFジャパン樋口隆昌事務局長、久米島町平良朝幸町長による協定書の調印式ならびに記者会見を行ないます。

今 後は協定に基づき、WWFジャパンは、地域が活性化する南西諸島の生物多様性保全モデル活動の展開と普及活動の一環として実施する『久米島応援プロジェク ト』(脚注参照)において、久米島町は、久米島町第一次総合計画に基づいた自然環境の保全活動ならびにしまづくり活動において、地域活性化を視野に入れた 環境保全活動を相互に協力しながら実施します。

WWFジャパンと久米島町は、上記活動を実施するために必要な組織を整備し、目標を定め、その目標を達成するための方針及び計画を策定し、実施してゆきます。活動期間は、2010年6月1日から2012年9月30日です。

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