アマゾンの新種 10年で1,200種発見!CBD・COP10で発表


南米のアマゾンで、2009年までの10年間に、新たに新種として確認された野生生物の数は、およそ1,200種! 生物多様性条約の締約国会議(CBD・COP10)が開かれている名古屋で、WWFは新たな報告書を発表し、生物多様性の宝庫アマゾンにおける、驚くべき新種発見の事実を発表しました。アマゾンでは過去50年間に、熱帯林全体の少なくとも17%が破壊されており、生物多様性が脅かされています。

3日に1種!アマゾンの驚くべき発見

2010年10月26日、WWFはCBD・COP10が開かれている名古屋で、南米アマゾンの生物多様性に関する、レポート『Amazon Alive! A decade of discovery 1999-2009(命あふれるアマゾン!1999-2009年の10年間の発見)』を発表。

1999年から2009年の間に、1,200種以上の植物と脊椎動物の新種が、アマゾンの生物圏で発見されたことを報告しました。この数は計算すると、3日に1種、新種が発見されてきたことになります。

レポートで紹介されている新種には、637種の植物、257種の魚類、216種の両生類、55種のは虫類、16種の鳥類、39種の哺乳類が含まれています。

この中には、新たに存在が確認されて新種と認められた生物だけでなく、これまで存在が知られていたけれども、他の種と同一と見なされていた種が、研究の結果、別の種であることが判明した例も含まれています。

新種はいずれも、博物館、大学、政府機関、NGOなどに所属する、世界各地の科学者によって同定されたもので、すでに一部は科学雑誌でも報告されています。

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炎のような模様を頭に、水門のような模様を足に持つ新種のカエル(Ranitomeya benedicta)。主な生息地は、ペルーの低地雲霧林

新種の爬虫類

新種の鳥類

新種の魚類

新種の両生類

新種の哺乳類

まだまだ未知の大自然

このレポートの意義について、WWFアマゾン・プログラム代表のフランシスコ・ルイスは、次のように言っています。

「このレポートは、アマゾンというこのきわめて興味深い地域について、私たち人類が、今なお無知であることを教えてくれます。そして、今のまま開発が進められれば、アマゾンで何が失われてしまうのか、私たちに気づかせてくれます」。

実際、アマゾンは、地球上で最大の熱帯林と流域の自然を擁した、生物多様性の宝庫。
その景観は、湖沼から草地、山岳の森林から低地の森林まで、600以上の異なったタイプによって構成されています。

また、世界で今までに知られている野生生物種の10%が生息しているといわれており、これには、アマゾン固有の生物種や、絶滅のおそれのある動植物も多く含まれていますが、今回のレポートが示すとおり、アマゾンにまだまだ未知の生物が息づいていることは、間違いのない事実といえます。

しかし、多くの知られざる生命の真実を秘めたまま、アマゾンでは今も、森が失われ続けています。

過去50年の間に、アマゾンの熱帯林は、少なくとも17%が失われました。その面積は、スペインの国土を2倍したよりも大きな面積となります。

森林破壊の主な原因は、肉や大豆、バイオマス燃料を生産するための、農地の拡大です。破壊されたアマゾンの森林の80%は、牛の放牧場で占められていると見積もられており、さらに、持続可能でない開発が、急速な地域経済の成長と増大するエネルギー需要に応じて推進され、アマゾンの生物多様性に影響を与えています。

失われるアマゾンの影響

ルイスは、アマゾンの破壊について、次のように言います。
「アマゾンの破壊の影響は、アマゾンに生きる地域の人々だけでなく、アマゾンによって気候の安定を得ている、遠く離れた国々の人たちにも及ぶことになるでしょう。アマゾンにおける熱帯林の保全は、地域の人々、世界の経済、社会、あらゆる面に利益を提供してくれるのです」。

事実、アマゾン地域では、3,000万以上の人々がその自然の恵みに頼って生計を立てており、北米やヨーロッパ地域にすむ何千万もの人々も、アマゾンがもたらす気候の安定の恩恵を受けています。

また、アマゾンの森に生育する木々が蓄えている炭素の量は、推定で900億-~1,400億トン。
今後、森林の破壊が進み、この炭素が放出され続けることになれば、地球温暖化は加速し、取り返しのつかない事態になるでしょう。

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2002年にアマゾン源流域のボリビアで確認された、長さ4mにもなるアナコンダの一種(Anaconda boliviana)。当初は緑色と黄色のアナコンダの交雑体と考えられていたが、後に独立した種として記載された。

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頭部に羽毛を持たないハゲインコの一種(Pyrilia aurantiocephala)。ブラジル国内の限られた場所でしか生息が確認されていない。生息地の消失のために個体数がかなり減っているとみられる。

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アマゾンカワイルカ(Inia geoffrensis)の亜種とされていたボリビアのカワイルカ個体群が、2006年に別種(Inia boliviensis)に分類された。アマゾンカワイルカよりも、歯が多く、頭が小さく、幅広で丸い体形をしている。

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ブラジルのロンドニア州で発見されたナマズの一種(Phreatobius dracunculus)。地下水系にすみ、井戸から発見された。目が退化している。

アマゾンの保全は未来のため

この恐るべきシナリオを回避するためには、「アマゾンの生態圏を国土にもつ、すべての国々が、現在採用している開発の方法を、大きく転換すること」が必要だと、ルイスは言います。

その転換を促すため、WWFはアマゾン・プログラム(Living Amazon Initiative)を展開しています。
このプログラムの目標は、環境・経済・社会、それぞれの側面において、自然環境の保全と、持続可能な開発の実践を目指してゆくこと。

アマゾンの自然の生態系を、社会的、経済的視点から適切に評価し、土地や資源の計画的な利用を実践して、エネルギーの基盤整備を行なうことで、文化や環境への影響と、地域の貧困を抑える計画を実践することです。

生物多様性条約の下では、アマゾンに関係する国々が協力し、保護区を効果的に管理することで、そこに生きる生物種を保全してゆく取り組み「多国間アプローチ」も検討されています。

国際生物多様性年の2010年は、各国の首脳がアマゾンの生物多様性に、これまで以上に関心を持ち、その保全を支援する絶好の機会。
多くの人々が、その生物多様性から受けているさまざまな恩恵を見直し、未来に向けてその供給を確かなものにしてゆくためにも、アマゾンの保全を目指した試みは、大きな意味を持つものとなります。

 

レポートのダウンロードはこちら

 

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