ペット問題にも影響? 環境省が特定外来生物の防除強化方針を明らかに


環境省が、特定外来生物の防除を目的とした地方自治体向けの交付金を拡充するため、2023年度の予算要求を行なう方針を固めた、との報道がありました。

これは、今年5月に改正された外来生物法に基づく政策で、都道府県や市町村に実施を求めている、外来生物対策を支援するためのものです。

また、地方自治体に対し、交付金だけでなく、防除のためのマニュアルや専門家の派遣などの準備も検討するそうです。

対策の対象となるのは、ウシガエルやヒアリなど、外来生物法で規定された特定外来生物。

いずれも在来の野生生物を捕食したり、すみかを奪うなど、生態系の攪乱を引き起こしているほか、農作物に甚大な被害を及ぼす、人の健康を害する、といった悪影響を及ぼす生物として選定された生物です。

そしてその中には、カミツキガメやアライグマ、ガビチョウのように、ペット目的で輸入され、野生化し、外来生物として定着した動物も、含まれています。

とりわけ、日本はこうした海外の野生動物を多く輸入しているペット大国。

今後も新たな野生動物がペット目的で持ち込まれ、日本で野生化して増え続ければ、新たな外来生物問題を引き起こす原因になりかねません。

現在までに特定外来生物に指定されている生物は156種類。

すでに外来生物になってしまった生物の防除も必要ではありますが、外来生物を新たに増やさないよう、日本への持ち込みの取り締まりや、飼育・販売・管理を強化する政策を実現していくことも、重要な取り組みです。

外来生物となる生きものに罪はありません。外来生物問題の元凶は、あくまで人間の行為です。

野生動物のペット飼育という観点からも、この外来生物問題を見つめ直し、政策に反映させていければと思います。

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自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

学士(芸術学)。事務局でのボランティアを経て、1997年から広報スタッフとして活動に参加。国内外の環境問題と、保全活動の動向・変遷を追いつつ、各種出版物、ウェブサイト、SNSなどの編集や制作、運用管理を担当。これまで100種以上の世界の絶滅危惧種について記事を執筆。「人と自然のかかわり方」の探求は、ライフワークの一つ。

虫や鳥、魚たちの姿を追って45年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの30年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと願っています。

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