日本初!宮城県の養殖カキが、環境と社会に配慮した国際的養殖認証(ASC認証)を取得


記者発表資料 2016年3月30日

東日本大震災からの「暮らしと自然の復興」への大きな一歩

【日本、東京発】本日、2016年3月30日、環境と社会に配慮した、責任ある養殖業を認証する国際的な認証制度、ASC認証を、宮城県漁業協同組合志津川支所の戸倉事務所が、カキ養殖で取得しました。日本国内ではASC認証を受けた例はこれまでになく、今回の認証取得は、日本初のASC認証養殖業の誕生となります。

ASC認証は、世界で急速に拡大する養殖業による自然環境や地域社会(人権や労働等)への負の影響を最小限に抑えることを目的とした厳格な基準にそって養殖場管理や運営を認証する国際的な制度です。さらに認証を取得した養殖場で生産された水産物にエコラベルを付けて流通させることで、生産現場から食卓までのトレーサビリティを確保するとともに、消費者の選択により責任ある養殖業を支援し、自然環境の保全と地域の人々の暮らしを両立させようという仕組みです。

以前から、養殖の過密化を原因とするカキの成長不良や品質低下という問題に直面していた戸倉事務所は、2011年3月の東日本大震災以後、豊かな海の自然を守りつつ経済的にも持続可能な水産業の実現という真の復興をめざして、WWFジャパンと協働で「暮らしと自然の復興プロジェクト」を進めてきました。

同プロジェクトの一環として、WWFは志津川湾の環境および漁業経済調査を実施しつつ、主として漁協と漁業者の方と、震災後の養殖業のあり方について意見交換を続け、ASCという2010年に生まれたばかりの養殖認証の取得の可能性を検討し、その取得を目指して活動してきました。審査では、漁場環境が良好に保たれているか、生産の記録がきちんと管理されているかなど環境への影響の具体的な項目も厳しく問われ、その結果、本日同プロジェクトのひとつの大きな成果であるASC認証取得へと至りました。

WWFジャパン自然保護室水産担当の前川聡は、新しい認証制度であるASC認証をこれから日本国内で拡大してゆくにあたり、次のように述べています。

「震災から着実に5年かけ、日本初のASC認証取得という成果は、ひとつの震災復興の方向性を示しているのではないかと思います。今後 はいかにして認証を維持していくのか、認証を付加価値につなげていくのか、新たな取り組みが必要です。」

WWFジャパン水産プロジェクトリーダーの山内愛子は日本初の認証取得に次のようにコメントしました。

「国際的にも水産大国である日本で、地域の関係者が主体となりASCを取得したということは、非常に意義のあるものです。持続可能な水産物の推進を日本の関係者がリードしていることにWWFは敬意を表します。」

また、今回のカキ養殖でのASC認証取得を受けることとなった宮城県漁協志津川支所 支所長代理の阿部富士夫氏は、日本初の認証取得を受け、次のように期待をしています。

「子供たちや孫たちの世代にバトンを渡せるような、持続可能な漁場作りをしたいという強い想いがありました。それが結果的にASCという形になったことは、非常に嬉しく思います。ASCの名に恥じないよう、高品質なカキの生産を続けていきたいです。」

今回の戸倉のASC認証取得をきっかけに、加工、販売企業が新たにCoC認証を取得した他、宮城県内の他地域でも取得に向けた検討が始まっており、日本でのASC認証の基盤は着実に整いつつあります。さらなるASC認証の普及のため、消費者への正しい情報発信も含め、WWFはさらなる活動を続けていきます。

販売について(五十音順)

ASCを取得したカキは、下記の店舗で4月2日(土)より販売予定です。

イオン:東北、関東エリアの「イオン」等101店舗
イトーヨーカドー:アリオ仙台泉店、石巻あけぼの店、アリオ上尾店、アリオ鷲宮店、浦和店

ASC認証について

ASC(水産養殖管理協議会)は、責任ある養殖業の認証制度を管理する、独立した国際非営利団体です。WWF とIDH(Dutch Sustainable Trade Initiative=オランダの持続可能な貿易を推進する団体)の支援を受けて2010 年に設立されました。認証された製品に付けられるASC ラベルは、その水産物が自然環境と社会への影響を最小限に抑えて育てられた製品であることを、消費者に約束するものです。

【ASC認証のこれまでの経緯】
2012年:最初のASC認証製品(ティラピア)が国際市場に流通
2014年:ASC認証サーモンが日本で販売開始
2015年:カキをはじめとする二枚貝の審査体制が整備
2016年3月30日現在:認証取得した養殖場の数:234か所・29か国(うち二枚貝は9か所・4か国)
認証製品数:4903製品(57か国)(2016年3月4現在)

暮らしと自然の復興プロジェクトについて

WWFはASC認証取得に向けた活動と同時に、災害時の緊急エネルギーとしても重要な自然エネルギー機器の設置支援や、南三陸町戸倉の環境、文化、暮らしを子どもたちに伝える環境教育・交流事業も行い、より深く関係者のニーズや関心を探るよう努めてきました。詳しくは下記のURLをご参照ください。

/activities/resource/cat1305/wwf_4/index.html

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お問い合わせ

WWFジャパン広報室 03-3769-1714  press@wwf.or.jp

現地に直接お問い合わせいただく場合

宮城県漁協志津川支所 支所長代理 阿部富士夫 0226-46-9211 

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