パリ協定の早期締結のお願い


要請書 2016年10月3日

衆議院 外務委員会
参議院 外交防衛委員会
議員各位

拝啓

仲秋の候、時下ますますご清祥の段、お慶び申し上げます。議員各位におかれましては、平素より、地球環境問題を含む外交問題解決に格別のご尽力を賜り、厚く御礼申し上げます。

私どもWWFジャパンは、世界約100か国以上で活動を展開する国際的な自然保護団体です。私どもは国際環境NGOとして、昨年12月に採択されました気候変動(地球温暖化)に関する国際条約「パリ協定」への締結を、日本が本臨時国会で早期に決定することは、極めて重要であると考えております。現在以下の通り急速に状況が変化しております。

  1. 10月2日には世界排出第4位のインドが批准し、パリ協定の発効は秒読み段階に入りました。
  2. パリ協定発効の条件は、世界の排出量の55%以上の占める55か国が批准することですが、排出第1位と2位の米中は9月早々に批准しており、すでにインドを含めて62か国が批准し、その排出量は約52%まで来ています。
  3. さらに欧州連合(EU)が今週中にも批准する見込みで、そうなるとパリ協定は発効します。
  4. G7伊勢志摩サミットのホスト国として、パリ協定の早期批准を世界に呼びかける宣言をとりまとめた日本が遅れをとっていいのでしょうか?言行不一致も甚だしく、国際的な信用は地に落ちます。
  5. ましてや、今後の我が国の産業界にとっても重要なパリ協定のルール作りにおいて、交渉力の低下は免れえません。

つきましては、議員各位に、できれば10月7日まで、遅くともCOP22の始まる11月7日までに、日本がパリ協定の第1回目の会議にきちんと締約国として参加できるように、締結のお願いを申し上げたく、別添の要請文を送付させて頂く次第です。ご高覧賜れますよう、何卒お願い申し上げます。

敬具


パリ協定締結に関する要請文

衆議院 外務委員会
参議院 外交防衛委員会
議員各位

WWFジャパン会長 徳川恒孝

昨年12月の国連の気候変動会議・COP21において採択された「パリ協定」は、アメリカや中国といった主要排出国を含むすべての国々が削減目標をもって参加する、極めて画期的な、気候変動(温暖化)対策の国際枠組みです。

このパリ協定の国際法としての発効が秒読み段階に入っています。

日本も、本協定に早期に参加できますよう、一刻も早く、本臨時国会内で、パリ協定締結へ向けたご承認を頂くべく、皆さまのご尽力をお願い申し上げます。

同協定に関する各国の締結作業が急がれている背景には、パリ協定によって生み出された、気候変動対策を前進させるための国際的な気運を失わせてはいけないという国際社会の意思があります。

9月3日には、アメリカおよび中国が早々と締結を発表いたしました。これに多くの国々が勢いを得て、9月末には61か国が締結を済ませました。

パリ協定の発効には、「55カ国」以上による締結と、締結国の総排出量が全体の「55%」以上になるという2つの条件があります。このうち、前者の「55カ国」条件は既に達成され、残るは「55%」条件のみとなっております。この55%の条件も、10月2日にインドが締結を発表したことによって、「51.89%」となり、あと1歩に近づいています。

こうした動向に焦りを感じているのがEU(欧州連合)です。EUは、気候変動対策の分野でのリーダーを自認してきましたが、正式な批准には加盟国全体での合意が必要なため、年内の批准は困難であると当初考えられてきました。

しかし、自分たち抜きでパリ協定が発効してしまうかもしれないという状況を受け、9月30日の臨時環境相会合において、パリ協定に10月初旬に批准することに合意しました。各加盟国の国内手続きを待たず、EUとして一括での批准に踏み切る異例の措置です。

もはやパリ協定発効は時間の問題であり、焦点は「年内に発効するのかどうか」から、「(11月7日から開催される)モロッコ・マラケシュでの次の国連の気候変動会議・COP22が、「パリ協定の」第1回締約国会議になるかどうか」に移ってきております。

10月7日までに発効条件がそろえば、COP22が最初の「パリ協定の締約国会議」になります。

そして、その際に、日本が締約国でなければ、日本は「世界で初めて主要な国が全て参加する画期的な気候変動に関する条約」の第1回会議において、正式な参加国ではなく、「オブザーバー」としての扱いになります。

その象徴的な瞬間に、オブザーバーとして参加するのが、この分野で「リーダーシップ」を発揮すべき国の姿といえるでしょうか。

日本は、パリ協定を今後実施に移していくための、「先頭集団」に入れるか、それとも「そこから脱落するか」の岐路に立たされています。

今回、発効を各国が急いでいる背景には、上記の理由に加えてもう1つあります。

それは、アメリカの大統領選をにらみ、現時点でパリ協定を発効させれば、今後4年間は、国際法上、パリ協定からの離脱が法的に難しくなるという状況を確保しようという暗黙の戦略です。

こうした国際社会共通の必死な動きに貢献しなかった国は、今後本格化するパリ協定のルールブック作成の交渉において、発言力が低下することは避けられません。

本臨時国会では、「パリ協定」以外にも、様々な重要議題が議論されることと存じます。しかし、そうした条件は他国も同じです。しかも、日本では、どの政党においても、パリ協定締結には賛成していると聞きます。

あとは、皆さまのご尽力如何にかかっております。

地球環境のため、そして、日本のためにも、できる限りの早期締結へ向けた作業を進めて頂きますよう、何卒お願い申し上げます。

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