太平洋クロマグロの資源量は12年で約10倍、13年前倒しで目標を達成し、漁獲枠増枠へ ネイチャー・ポジティブに関する好事例


© naturepl.com / Visuals Unlimited / WWF  <br>

公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区、会長:末吉竹二郎、以下 WWF ジャパン)は、2024年7月16日(火)、マグロの資源管理を話し合う国際会議において、近年太平洋クロマグロの資源回復と資源増加傾向が維持されたため、漁獲枠の増枠が決定したことについて、「ネイチャー・ポジティブの好事例」として歓迎の意向を表明しました。 第20回WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)北小委員会および第9回IATTC・WCPFCクロマグロ合同作業部会が、7月10日(水)から16日(火)まで北海道釧路市で開催され、本日閉幕しました。

太平洋クロマグロは、最大の漁獲・消費国である日本も含め、漁獲国による過剰漁獲が原因で、その資源量は2010年には初期資源量(漁業が開始される以前の推定資源量)の1.7%にまで減少しました。しかし、その後のWCPFCの合意に基づく各国の漁獲規制の効果により、資源量は回復傾向に転じ、2022年には2010年のおよそ10倍の14万4,000トンまで回復。13年前倒しで回復目標を達成しました。

今回の会議では、資源回復の報告を受け、各国で異なる増枠が提案されましたが、資源増加傾向の維持や魚価の安定といった社会的な影響を考慮した結果、30キログラム以上の成魚を現状の約1.5倍、30キロ未満の未成魚を1.1倍に増枠することが決定されました。また、2025年に管理戦略評価(MSE)と呼ばれる安全性の高い管理を可能にするシミュレーションツールに基づいた管理基準値や漁獲戦略を決定することが再確認されました。

WWFジャパン専門オフィサーのコメント 

自然保護室 海洋水産IUU漁業対策マネージャー、水産資源管理マネージャー 植松周平

「世界の生物多様性の豊かさを示す数値はこの50年で約7割も減少しており(注)、現在、2030年までに生物多様性の減少傾向を増加傾向に転じさせる必要性が、政治、経済、科学、の分野から指摘されていま。そのような中、一時期、絶滅の危機に瀕するレベルにまで陥った太平洋クロマグロの奇跡的な資源回復は、生物多様性の回復、つまりネイチャー・ポジティブを象徴する好事例といえます。これは、水産業界のみならず、地球全体の未来に希望を与えうる事例で、日本政府、漁業者、企業など、すべてのステークホルダーの働きかけや努力、リーダーシップの賜物です。

まだMSEの導入やIUU(違法・無報告・無規制)漁業への対策など、解決すべき課題もありますが、引き続き他国と協働し、世界の水産業をけん引する取り組みとしてあり続けてほしいと思います。今回の事例は、科学に基づいた資源管理をしっかり行えば水産資源は回復するという一つの証となりました。今後もこれを参考に、サンマ、イカ、マサバなど減少してしまった日本周辺の資源を回復するため、そして世界の持続可能な漁業の実現のため、日本のさらなるリーダーシップを期待しています。」

(注)https://www.wwf.or.jp/activities/lib/5153.html

【参考資料】

第20回中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)北小委員会および第9回IATTC・WCPFC北小委員クロマグロ合同作業部会に向けた声明(2024年7月12日)

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