自然への影響は?新石垣空港・事後調査報告の縦覧
2014/03/07
沖縄県石垣市白保近郊の新石垣空港の事業着工に伴う、事後調査報告の縦覧が、2014年3月27日まで行なわれています。この1月には、自然環境への影響と、環境対策やその効果等を検証する事後調査委員会も開催。WWFジャパンも委員として参加しました。委員会では、2013年3月7日に開港したこの新空港が、周囲の景観に及ぼす影響、また、今後懸念される課題について、検討が行なわれました。
新空港建設工事による自然への影響の検証
2014年(平成26年)2月25日~3月27日まで、「平成24年度新石垣空港整備事業に係る事後調査報告の縦覧」が行なわれています。
これは、2013年3月7日に開港した沖縄県石垣市の新石垣空港について、新石垣空港の着工に伴う自然環境への影響を調査し、環境対策やその効果等について検証するものです。
この検証を行なう「新石垣空港整備事業に係る事後調査委員会」では、新空港の建設工事着工後、毎年1回開催され、有識者やWWFジャパンなどの自然保護団体も参加して、検討内容を取りまとめてきました。
この新石垣空港は、国際的にもその規模と豊かさが認められているアオサンゴの群落を擁した、石垣島東部海岸の集落、白保地区の海に面した場所に建設され、その工事による自然環境への影響が懸念されてきました。
実際、空港は、白保の集落の北側約5キロの地点に位置しており、海岸線との距離も、最も近いところで100メートルほどとなっています。
平成25年度の「事後調査委員会」は、2014年1月31日に開催され、WWFサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」からもスタッフが参加。
まず委員会の開催に先立ち、委員と事業者である沖縄県、環境調査の受託者とともに、新石垣空港を訪れ、環境対策の現場を確認しました。
視察により確認された自然の状況
まず、空港展望台から平成24年度の工事及び環境対策の状況についての説明があり、続いて、貴重種などを移したビオトープの状況を視察。前回の視察時に比べて、移殖した植物が大きく育ち、良好な環境になりつつあることが確認されました。
その後、滑走路の北端部にある、樹木を移植した場所を視察しました。
ここは工事中、陸域から海に流れ込んでサンゴの生存に重大な悪影響を及ぼす「赤土」の流出対策として、それを沈殿させるための池が敷設されていた場所です。
空港が完成したことで池の必要がなくなったことから、工事計画中に現地の洞窟で生息が確認された小型コウモリ類(ヤエヤマコキクガシラコウモリ、カグラコウモリ、リュウキュウユビナガコウモリ)が、空港により分断された海岸林まで移動できるよう「緑の回廊」として再整備するために樹木が植えられました。
しかし、ここは表土の関係か、植物の生長が思わしくなく、樹種の見直しなどが提案されました。
また委員会では、コウモリのために設置された人工洞窟などの視察も行ないました。
このコウモリがもともと生息していた洞窟は、空港建設の工事によって洞口が付け替えられるなど環境が改変されたことから、コウモリの棲息環境を補完するために人工洞窟を設置したものです。
まだコウモリが十分に活用しているとは言いがたい状況でしたが、この洞窟の入り口には池が作られ、洞内の湿度を高めるなどの対策が取られたことから、一時利用は確認されるようになっているとのことでした。
委員会での調査報告
その後開かれた委員会での会合では、陸上植物、陸上動物・陸域生態系、河川水生生物、陸域生態系、地下水、海域生物・海域生態系など、それぞれのテーマごとに、事後調査の結果が報告され、追加的な環境保全措置について議論が行なわれました。
今回の議論で、特に新たな環境問題として提起されたのは、移入種、外来生物の問題です。
新空港ができ、人や物資の出入りが盛んになったことで外来種の侵入リスクが高まっていることが指摘され、その対策が求められました。
実際、新空港の開港後、石垣島を訪れる人の数は増加傾向にあります。旧空港では年間70万人だった訪問者が、2013年は1年間で90万人を超えました。
また、空港に発着する飛行機についても、一日あたりの便数が旧空港が約60便であったのに対し、新空港では80便以上となっています。
これに加え、設置されたビオトープなどの環境をはじめとして、周辺には外来生物が定着しやすい環境が多く存在していることから、これは今後、事前の対策を含めた十分な対応が求められる課題となります。
またWWFからは、空港の侵入灯などの明かりにより、白保の海岸に産卵のため上陸するウミガメなどに影響がおよぶことをあらためて指摘し、継続した調査の実施や海域の環境モニタリングの継続を要望しました。
空港建設事業の環境影響評価(アセスメント)に盛り込まれ、その可能性が指摘された自然環境への影響を回避し、また軽減のための措置がしっかりと実施されているかどうか。
これを確認するために開催されている「新石垣空港整備事業に係る事後調査委員会」の役割は、非常に大きなものがあります。
委員会は、2006年の着工から2018年まで継続される予定です。研究者の方々の協力の許、長年にわたりサンゴ礁の調査を実施し、事前の環境アセスメントの過程で開かれた「環境検討委員会」 においても提言を行なってきたWWFジャパンも、この委員として、空港建設が自然環境に及ぼす影響を、可能な限り抑えてゆく取り組みを行なってゆきます。
関連情報
WWFサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」について
豊かな生命を育む、沖縄・石垣島のサンゴ礁。中でも、世界最大級といわれるアオサンゴの大群落を擁した白保の海は、世界的にも貴重な自然が残る場所です。WWFジャパンは、この白保に、WWFサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」を設立し、その調査と保全活動を行なっています。また、この白保をはじめとして、沖縄を中心とした南西諸島で、それぞれの地域が主体となった環境保全の促進にも取り組んでいます。