国際的な森林認証制度FSC(R)の普及啓発キャンペーン「FSCフォレストウィーク2015」が終了
2015/09/28
2015年9月11日から9月28日まで、国際的な森林認証制度、FSCの普及啓発キャンペーン「FSCフォレストウィーク2015」が初めて開催され、WWFジャパンもこれに参加しました。FSCが1993年に発足されて20年以上、世界中でWWFを含め多くの企業や団体がその普及に取り組み、拡大を続けてきたFSC。欧米と比較すれば、日本での認知はまだそれほど高くはないものの、期間中には消費者向けの普及啓発イベントやビジネス向けのセミナー、FSC認証林を訪問するツアーなど多様な機会が、20を超える参加企業・団体によって設けられました。
「FSCフォレストウィーク」とは?
1993年に発足したFSC は、木材を生産する森林と、その森林から切り出された木材の流通や加工の過程を認証する制度を管理する国際的な機関で、その認証は自然環境保全に貢献し、地域社会の利益にかない、経済的にも継続可能な形で生産された森や製品に与えられます。
WWFは、森を守りながら利用を続けられるよう、また消費者がそうした森から生産された製品を容易に選ぶことを可能にするため、FSC®(Forest Stewardship Council®:森林管理協議会)の森林認証制度の普及に取り組んできました。
本キャンペーンは、FSCが毎年9月の最終金曜日に世界で実施している普及啓発イベント「FSC Friday」の日本版としてスタートしました。今も止まらない違法伐採や違法でなくとも非持続可能な方法で破壊される森林、そしてそれに付随する社会的な問題などに対し、FSC に取り組んできた約 20 の企業・団体が参加し、企業や消費者に向けて 環境や社会に配慮して生産された林産物を選ぶという森林保全の手段を普及することを目的としています。
【FSC フォレストウィーク開催概要】
■主催:FSCジャパン
■共催:FSC応援PROJECT・WWFジャパン
■期間:2015年9月11日(金)〜 9月28日(月)
■参加企業・団体(五十音順)
イオン株式会社、株式会社イオンファンタジー、株式会社イトーキ、王子ネピア株式会社、王子ホールディングス株式会社、一般社団法人木暮人倶楽部、株式会社誠晃印刷、株式会社ダイエー、株式会社竹尾、田中林業株式会社、株式会社東急ハンズ、株式会社西粟倉・森の学校、
一般社団法人日本インテリアコーディネーター協会、日本生活協同組合連合会、日本テトラパック株式会社、浜松市、公益財団法人ボーイスカウト日本連盟、三菱製紙株式会社、三菱製紙販売株式会社、丸美工藝株式会社、メリタジャパン株式会社、森永乳業株式会社、株式会社ラッシュジャパン
「体験を通じて」を実践 消費者啓発イベント
キャンペーン初日の9月11日には、開催を記念してオープニングイベントがダイエー赤羽店にて開催されました。
近隣の幼稚園とも協力し、約60名の子供たちにWWFジャパンのFSC普及啓発用絵本「森を守るマークをえらぼう!」をもとに作成した紙芝居で、森や動物、そしてFSCの意味を伝え、その後実際に店内をまわってFSCラベル付き製品を探すワークショップなどを行いました。
またダイエー赤羽店では、期間中継続して一般の来店客を対象とした「FSCラベルラリー」も実施。
FSC認証製品は、身近な日用品のなかに徐々に増加しつつあるものの、ラベルのサイズや位置によっては、一般の消費者には意識していないとなかなか気が付きにくいものです。このことはFSCの普及における課題の一つともなっています。
そこでこのラベルラリーを通じて、実は身近なところにラベル付きの製品があることを伝えるために、売り場でFSCのラベルの付いた飲料紙パックやキッチンタオル、ノートやコピー用紙などの紙製品を探そうというもので、このようなFSC普及の取り組みは世界的にみても珍しいものとなりました。
翌日の9月12日には、「FSCフォレストウィーク」の共催団体であるFSC応援プロジェクトにより、東京都の檜原村にある田中林業へのFSC認証林ツアーが一般に呼びかけられました。
定員を上回る応募のなかから抽選で選ばれた14名と三菱製紙販売株式会社が招待した大学生10名の総勢24名が参加。
普段なかなか訪れることのできないFSC認証林を訪問し、FSCの意味や森の管理について実際に森を歩きながら学び、その後はその森から切り出された薪でピザ焼いて、さらにバターナイフづくりも挑戦しました。
適切に管理される森からの恵みを満喫できるという内容でした。
FSCを通じてビジネスに付加価値を FSCビジネスフォーラム2015
9月18日には、株式会社イトーキによりFSCビジネスフォーラム2015が開催され、100名を超える参加がありました。現在、宮城県南三陸で進行中のプロジェクトで、森林ではFSC認証、そしてその森とつながる海では国際的な養殖による水産物の認証取得を目指し、地域で連携し新たな価値を生み出そうとするユニークな取り組みが紹介されました。
続いて、スープストックトーキョーを運営する株式会社スマイルズやイオントップバリュ株式会社などからも、店舗で使用される建材やテーブルなどの内装に、国内のFSC認証材が活用されている事例などが報告されました。
FSCのFM(Forest Management)認証というと海外の認証林について語られることが多くなりがちですが、日本にも34のFM認証を取得する団体があり、認証林は33都道府県に存在しています。国内の認証林もそれぞれの地域やビジネスと連携しながら、その価値を高めていこうとする活発な動きあることが紹介されました。
また講演後には、日本のこれまでの「FSC Friday」でも恒例イベントになっているFSC関係者の交流会、「FSC フォレストウィークパーティー」が開かれました。これは、認証取得者や普及に関わる企業・団体などが誰でも参加可能で、自由に、そして気軽に最近の動向や今後の展望などを情報交換できる場ともなっています。
拡大するFSC 2020年に向けて高まる期待
本キャンペーンの最終日となった9月28日には、締めくくりのクロージングイベントがイオン葛西店にて開催されました。
参加団体の一つで、森をはじめ自然のなかでの活動を基幹とする公益財団法人ボーイスカウト日本連盟からは、FSCに賛同する応援宣言が、またキャンペーン期間中、全国の60以上の店舗でFSC普及のためのワークショップなども行っていたイオン株式会社からも2020年に向けFSCの認証製品を増やしてゆく計画であること、そしてより消費者の理解も得られるようコミュニケーションを行なっていくことが発表され、今後も継続してFSCが推進されてゆくことが期待できるものとなりました。
またFSCフォレストウィーク期間中には、多くの場面で2020年に開催されるオリンピック・パラリンピック東京大会での林産物調達が話題となりました。これは「最も環境に配慮されていた」と言われる2012年のロンドン大会では、競技場やチケットやプログラムなど多くの林産物にFSCが採用されていたこと、そして2016年に開催されるリオ大会では、さらに厳しい基準がサプライヤーに求められていることによるものです。
2020年のビックイベントも視野に、日本でも関心が高まる第三者認証。今年初めての開催となった本キャンペーンではありますが、FSCの普及のためにサプライチェーンの最上流である林業者から最も消費者に近い流通業まで、さまざまな異なる立場の企業・団体が参加し、協働するかつてない機会となりました。
今後もWWFジャパンは、FSC認証がより多くの企業や団体に、責任ある調達を実践するための信頼できる手段として活用され、またそのような認証制度に認められた製品が消費者によっても認知され、積極的に選ばれてゆくよう取り組みを継続します。