宮城県南三陸町の志津川湾で漁業経済調査を実施
2011/10/17
宮城県南三陸町の志津川湾における影響調査の第一歩として、WWFジャパンでは2011年9月22日、漁業経済調査を実施しました。この調査は、地域の行政、自治体、水産関係者の方々にお話をうかがい、被災状況等の実態を調査し、東日本大震災により被災した地域の水産業復旧、復興に役立てるためのものです。
海の恵みゆたかな志津川の海
志津川湾は三陸海岸のほぼ南端に位置し、湾内ではカキ、ワカメ、ホタテ、ホヤなどの養殖業が盛んに行われています。中でもギンザケは養殖発祥の地と言われ、宮城県漁協の養殖ギンザケは「伊達のぎん」としてブランド化されています。
また志津川湾はアマモ類、ガラメ、アラメ、コンブといった多種多様な海草・海藻類が生息する貴重な場所として重要湿地500にも指定されており、豊かな漁場ともなっています。
しかし、東日本大震災により、湾内の養殖施設は全壊。南三陸町全体を見ても、家屋の全半壊率が6割を超えるなど、今回の震災でもっとも被害の大きかった地域の一つとなりました。
そして震災から半年、秋からの養殖再開に向けた作業が急ピッチで行なわれています。
「暮らしと自然の復興プロジェクト」での現地支援
この再開事業の中で、志津川湾南岸に位置する戸倉地区では、過去の過密養殖による生産性悪化の教訓から、養殖漁場の再建に際して、思い切った養殖施設の削減を実行することにしています。
また、施設が減った分は、個々人の競争ではなく、協業化の導入などによって公平な生産体制を確立しようとしています。こうした取り組みは、戸倉地区における将来的な養殖業に対する展望を兼ね備えた先駆的なものといえます。
2011年は試験的な再開となり、戸倉地区の取り組みは沿岸の海洋環境の改善だけではなく、国内における持続可能な養殖業の牽引役として、日本の水産業の未来に貢献するものとWWFは期待しており、「暮らしと自然の復興プロジェクト」を通じて戸倉での取り組みを支援していきます。
2011年8月30日に、東北大学で開催された東北沿岸生態系連絡会では、湾内のアラメ(海藻の一種)は特に湾奥部で被害が大きく、ウニやアワビのような重要な水産資源の生育にも影響が出ていることが報告され、生態系にも大きな攪乱が生じていることが予想されます。
戸倉地区の沿岸環境の現状とその後の推移をしっかり調査することは、沿岸環境の改善に取り組む漁業者にとっても不可欠となっています。
WWFジャパンでは今後、特に漁業者による漁場管理の体制づくりを支援しつつ、自然環境調査や社会経済調査を通して、自然環境の再生と水産業の復興に必要な活動を明らかにし、地域の方々と実施する仕組み作りを進めていきます。