新たなアムールヒョウの個体を確認
2011/12/20
※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。
2011年11月、極東ロシアのケドロバヤ・パジ自然保護区で、これまで未確認だったアムールヒョウの個体が確認されました。これは、保護区内での自動カメラを使った調査により、明らかになったものです。推定個体数が30~40頭といわれるアムールヒョウは、生息地の森林破壊や密猟によって絶滅が心配されており、WWFでは保護区の拡大などによる保護のための施策に取り組んでいます。
見つかった新しい「斑紋」
ロシア、中国、北朝鮮の国境地帯に位置する、極東ロシアのケドロバヤ・パジ自然保護区は、絶滅のおそれが極めて高いとされるヒョウの亜種アムールヒョウの、貴重な生息地の一つです。
ここで2011年11月11日に、これまで知られていなかった、新しいヒョウの個体の姿が確認されました。
これは、成熟したオスの個体とみられ、WWFなどが長年この保護区で取り組んできた、自動カメラを使った調査で、その姿を捉えられたものです。
ヒョウは、いずれもその毛皮の斑紋が、人間の指紋のように異なっています。そこで、画像に撮られたヒョウの斑紋をもとに、個体を識別します。
今回、新しいヒョウが撮影されたエリアは、年取ったオスのヒョウが長く縄張りにしている場所でした。
また、ここでは別の成熟したメスの個体も確認されていましたが、今回、新たに撮られたヒョウの個体の斑紋は、この2頭をはじめ、過去に記録されたいずれの個体とも異なる模様であることが分かっています。
中国でも確認されたアムールヒョウ
また、これに先立つ2011年9月19日にも、ロシアとの国境に位置する中国吉林省の森で、アムールヒョウの姿が自動カメラに収められました。
これは、WWF中国が北京大学などと進めている、この地域でのシベリアトラ(アムールトラ)の保護調査活動の一環で行なわれた調査で確認され、9月15日に国境地帯の森に仕掛けられた39の自動カメラの一つで撮影に成功したものです。
WWFでは2009年に同地域をシベリアトラを保護・調査するための、パイロット地域に指定して活動しており、これまでにも、フンや毛皮の痕跡から、アムールヒョウがいるらしいことは分かっていました。しかし、その姿がレンズに捉えられたのは、初めてのことです。
「調査用の自動カメラ(カメラトラップ)によって写されたヒョウの写真は、ロシアだけでなく、中国側にも確実にヒョウが生息していることの証明となるものです」
現地でWWFのトラ保護調査にかかわっている江広順博士は、そう語っています。
国境を越えた保護のための取り組みの必要性
WWFでは中国、ロシア双方の調査データを基に、最新となるアムールヒョウの推定個体数を、現在明らかにしようとしています。
ここ数ヶ月間にロシアと中国で確認されたヒョウの情報も、この総合的な調査結果に反映される予定です。
中国では吉林省でトラやヒョウの保護に向けた動きが出始めており、WWFに対しても、そのための資金と、調査等に必要とされる技術的な支援が期待されています。
また、ロシアでも現在、ケドロバヤ・パジに隣接した複数の保護区を統合し、新しい大規模な保護区、通称「ヒョウの森・国立公園」が設立される事になっています。
現地で活動する、WWFロシアの生物多様性保全プログラムのセルゲイ・アラミレフは、11月の新しいアムールヒョウ個体の撮影に寄せて、次のように言います。
「現在の小さな自然保護区が、ヒョウにとって魅力的な生息地であること、また同時に、狭いがゆえに、活発な縄張り争いが起きる可能性があることは、すでに明らかになっています。
「ヒョウの森・国立公園」の設立が、ネコ科の動物で最も絶滅の危機のレベルが高いアムールヒョウの多くの個体にとって、生息域の拡大につながることを期待しています」。
また、アムールヒョウの生息地を含む、ロシア沿海地方の南部では、ナラ類やタモなどを中心とした広葉樹が、今も違法に伐採されています。
これらは主に中国に輸出された後、家具やフローリングの素材に加工され、日本に再輸出されるケースもあると考えられることから、こうした広葉樹の保全が、今後の極東ロシアでの森林保全における、一つのカギとなりそうです。
WWFジャパンでも今後、極東ロシアに産する広葉樹の利用と保全を考えるセミナー等を、日本の企業向けに開催し、情報発信に取り組んでゆく予定です。