より強固なマグロ漁業の監視・管理体制の構築を 2017年WCPFC会合
2017/12/01
2017年12月3日から7日まで、フィリピンのマニラで、WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)の第14回年次会合が開催されます。この会議では、中西部太平洋が世界最大の生産海域である熱帯マグロ類の管理措置の議論とともに、太平洋クロマグロの暫定的な漁獲戦略の採択が議論されます。
次期管理目標の正式な採択を
太平洋の海洋生態系の頂点に立つ大型魚類クロマグロ。
日本は、その最大の生産国であり消費国です。
現在、太平洋海域では、乱獲に起因するクロマグロ資源の深刻な枯渇が確認されています。
資源量を評価する北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)の最新の報告では、すでに初期資源(漁業が開始される以前の推定資源量)と比べ、2.6%まで資源が減少している「枯渇状態」にあり、かつ「過剰な漁獲が続いている」と指摘されています。
さらに、現在導入されている暫定的管理措置についても、漁業を行なう際に、毎年十分に遵守されていない状況が報告されています。
2017年8月に韓国の釜山で開催された、WCPFC北小委員会では、暫定的な漁獲戦略および、遅くとも2034年までに推定初期資源量の20%を、少なくとも60%の確率で達成する、という次期回復目標に合意しました。
今回の年次会合では、この次期回復目標を正式に採択することが期待されています。
求められる資源管理措置の確実な実行
また、以前から課題となっている、加盟国による漁獲管理方策の確実な実行も、この会議の重用なポイントです。
特に、太平洋クロマグロの漁獲生産国が、2016年来、地域漁業管理委員会が定める漁獲規制を守らず、漁獲を続けていることが頻繁に報告されています。
これを受け、WWFは、WCPFCに対して、加盟各国が合意した資源管理措置のルールを正しく守るよう、取り組みを改善するために、漁業のMCS(monitoring, control and, surveillance:調査、監督、監視)措置の強化および、CDS(Catch Documentation Scheme:漁獲証明制度)の設定を早急に行なうことを強く要請しています。
また、不遵守行為に対しては、断固とした厳しい制裁を取ることを求めます。
マニラの会議場で議論の行方を追うWWFジャパン自然保護室海洋水産グループ長の山内愛子は、次のように述べています。
「これまでの話し合いの中で、太平洋クロマグロの資源回復計画の枠組みが固まったとはいえ、現状では戦略通りの回復を確かなものにするには、加盟国の監視管理体制がまだ不十分であると考えています。資源回復措置に対する順守を徹底し、加盟国の積極的な関与を示すことを強く訴えていきたいと思います」
WWFは、より強固な監視・管理体制の構築によって、日本をはじめとする漁業国は合意事項の遵守徹底を図り、太平洋クロマグロの確実な資源回復を妨げないよう求めていきます。
WWFの要望
【太平洋クロマグロ】
WWFは、太平洋クロマグロについて、WCPFCに対して以下のことを求めます。
- 太平洋クロマグロに関して、暫定的な漁獲方針(ハーベスト・ストラテジー)を採択すること
- 小型魚、親魚ともに、暫定回復目標達成前に漁獲上限を増加させないよう勧告すること
- 太平洋クロマグロの徹底したモニタリングのために、漁獲証明制度を設定すること
- 加盟国の太平洋クロマグロの管理措置に対する遵守を確実にすること
【熱帯マグロ類】
また、日本のマグロ市場で欠かせないメバチ、キハダ、カツオといった熱帯マグロ類の包括的かつ強固な管理措置の合意をもとめて、以下のことを求めます。
- 2014年に採択された漁獲戦略の確実な措置導入について、設定された期限内に行うこと
- カツオを漁獲対象とする巻き網漁業に対して、より厳しい漁獲制御ルールの検討
- 南太平洋のビンナガ資源を漁獲対象とする延縄漁業の目標管理基準値設定に向けた進展
- 管理施策の優先事項として、サメ類を含むすべての管理対象資源に関する限界管理基準値と目標管理基準の設定
- メバチ、キハダの予防原則に従った暫定的目標管理基準値の導入
WCPFC 2017年次総会閉幕(2017年12月5日 追記)
フィリピンのマニラで開かれていた第14回WCPFC年次会合が2017年12月7日に終了しました。
今回の年次会合では、太平洋クロマグロについて、2017年8月のWCPFC北小委員会で合意された、暫定的な漁獲戦略および、遅くとも2034年までに推定初期資源量の20%を、少なくとも60%の確率で達成する、という次期回復目標が正式に採択されました。
漁獲規制を守らない不遵守行為に対する対応について、WWFは引き続きWCPFCに対して、透明性と責任を高めるために、加盟各国への割当量の公表およびCDSの設定を早急に行なうことを要請していきます。
熱帯マグロ類については、有効期限が切れてしまうメバチ、キハダ、カツオの熱帯マグロ類の資源管理について、新たな管理措置の採択が課題となっていましたが、2017年8月の科学委員会でメバチの資源評価が良好とされたことを受け、FADs(魚群集魚装置)などの漁業管理措置が緩くなる方向で議論がなされていました。
今回の年次会合では、一部暫定措置を含む2018年からの3か年の資源管理措置が合意されましたが、合意するために妥協を重ねた結果、予防的アプローチに沿った持続可能な熱帯マグロ類資源管理の実効性という意味では、今後に多くの課題を残していると言わざるを得ません。
マグロという資源を経済成長の基盤としている発展途上国をはじめ多くの漁業国にとって、世界最大の重要なマグロ漁場となっている中西部太平洋は短期的な利益ではなく、長期的な視野に立って協力していく体制を確実に築くことが求められています。