APP問題 NGOが解決すべき課題を提示


WWFを含めた多くのNGOは、APP社が今後解決すべき課題をまとめた提言書を2013年9月19 日、共同発表しました。これまで約30年間にわたり、自然林の皆伐による原材料調達と、それにともなう温室効果ガスの大量排出や地域社会との紛争などの問題が指摘され続けてきたAPP社。寄せられる批判に対し、数々の環境方針や誓約をもって、顧客やステークホルダーに理解を求めてきました。しかし、どんなに素晴らしい方針が書面上謳われたとしても、それが現場において実行されなければ、「改善」とは言えません。提言書に関わった多くのNGOは、APP社がこの提言書に提案された「解決すべき課題」を受け入れるよう求めています。

APP社、不名誉な歴史

アジア・パルプ・アンド・ペーパー(以下、APP社)は、1984年のスマトラ島での操業開始以来、主にインドネシアのスマトラ島、ボルネオ島インドネシア領のカリマンタンで、自然林の大規模な皆伐を行なうことで製紙原料を調達し、また植林地を拡大させてきたことが、批判の的となってきました。

APP社のために破壊された自然の森は、スマトラトラやゾウなどの深刻な絶滅危機にある野生生物の生息地であったばかりでなく、泥炭地と呼ばれる地中に大量の炭素を含む湿地を乾燥させて植林地を造成・操業することで大量の温室効果ガスを排出していること、さらに土地の利用権をめぐっては、地元住民との紛争も報告されていることから、環境、社会面の両方で問題が指摘され続けています。

こうした様々な批判に対し、APP社はこれまでに何度も、様々な方針や誓約を発表してきました。

しかし残念ながら、それらは全ての問題の解決するには不十分なうえ、実施面においても、原料調達の行なわれる現場において、確実に実行されているとは言えません。

伐採のつづくスマトラ島中部の森

最近では、2012年6月に「持続可能性ロードマップ−ビジョン2020」を、事業全体で持続可能な操業を行なうためのガイドとして発表。原料調達や温室効果ガス排出、人権など11の取組み項目を掲げました。翌年の2013年2月には、「森林保護方針」を追加発表し、全サプライチェーンにおいて自然林の伐採を停止することを誓約しました。

こうした動きに、長く批判の的となってきたAPP社が、ついに責任ある企業へと方向転換するのか、多くのステークホルダーから注目を集めています。

山積みの課題 遠い道のり

しかし、長期にわたってAPP社に操業の改善を求めつつ、行政などの関連機関や市場に対しても働きかけを行なってきたWWFは、「森林保護方針」が発表されて以降も、多くの課題を抱えたままの状態が続いているのが現状と考えます。

それは、ビジョン2020で掲げられた11の取組み項目については、そのすべての項目について具体的な目標や改善行動が示されておらず、加えて「森林保護方針」の実施面においては、インドネシア現地のNGOのモニタリングにより、数々の問題点が明らかとなっているからです。

今回の提言書は、これまでAPP社の環境、社会問題に関わってきたグリーンピース、熱帯林行動ネットワークなどの国際的な環境団体とインドネシア現地で活動するNGOとが協働し、これまで同社が「森林保護方針」および「持続可能性ロードマップ−ビジョン2020」で述べた誓約ごとに、解決しなければならない課題を「確認事項」としてまとめています。

<提言書より「確認事項」>

森林保護方針で述べられた誓約に関して

1.    保護価値が高く、かつ高炭素蓄積の地域および景観が維持され、価値が向上する。
2.    泥炭地が保護され、二酸化炭素排出が最小限に押さえられる。
3.    社会的紛争や土地紛争が解決され、影響を受ける地域住民の「十分な情報に基づく自由意志による事前の合意(FPIC)」が尊重される。
4.    APP社の原料供給企業および新たに買収された全ての土地で森林保護方針が遵守される。

持続可能性ロードマップ-ビジョン2020で述べられた誓約に関して

5.    混交熱帯林広葉樹の受け入れは、2014年1月1日までに終了する。
6.    透明性が保証され、独立した第三者の監査機関によって検証が行われる。
7.    インドネシアの優先して保全されるべき景観が回復され、保護される。


APP社が責任ある企業と認められるには、同社がここに揚げられた全ての課題への取組みを、継続的に実施していることを、自己宣言ではなく第三者が証明する必要があります。

この提言書の作成に関わった多くのNGOは、APP社がこの提案を受け入れることを要望しています。APP社からは、現在までのところ、正式な回答は得ていませんが、いずれにしても、同社が抱える多くの問題が解決と呼べるようになるまでには、相当の時間を要することが予想されます。

今後も、WWFを含めた国際的なNGOとインドネシア現地で活動するNGOは連携し、APP社の操業のモニタリングを継続します。そして、一年後の2014年9月には、初年度の進捗を報告書にまとめ、発表する予定です。

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