【動画あり】撮影に成功!アムールヒョウの子育て映像
2014/04/04
※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。
極東ロシアの森にある「ヒョウの森国立公園」で、公園当局とWWFロシアは2013年11月、自動撮影のビデオカメラを用いて、アムールヒョウの家族の野生での姿を撮影することに成功しました。これは、これまで謎につつまれていたアムールヒョウの子育ての様子を明らかにするもので、長年ヒョウの調査を続けてきた研究者でさえ見たことのない、きわめて貴重な映像です。
謎につつまれてきたアムールヒョウの生態
極東ロシアの森に生息するヒョウの亜種アムールヒョウは、密猟や森林伐採により、個体数が50頭前後と絶滅の危機に瀕しています。
しかし、このアムールヒョウは生態については、未知の部分がまだ多く、子育ての方法などについても、ほとんど何も知られていません。
そこで、その生態を解明し、効果的な保護活動を実施するため「ヒョウの森国立公園」とWWFロシアは2013年10月、共同で調査(モニタリング)プロジェクトを立ち上げました。
これは、過去にもアムールヒョウの生息域で実施されてきた、自動撮影カメラを使った調査です。
調査では、ヒョウは毛皮の模様が一頭ずつ異なる点に注目し、撮影された斑点模様をもとに個体識別を実施。ここから個体数や、それぞれの個体がどれくらいの行動範囲を持っているかなどを調べます。
WWFロシアでは、この調査をすでに10年以上にわたって継続し、そこで撮影された貴重なアムールヒョウの画像は「写真集」としてロシア国内や世界各国の注目を集めてきました。
しかし、これまで行なわれてきた調査は、スチールカメラを使ったものが大半で、撮影された写真も、ヒョウが見せるほんの一瞬の姿をフィルムや画像に収めるのみ。
このため、研究者や保護関係者たちは、ヒョウの行動について、もっと多くを知りたいと常に望んでいました。
撮影に成功!アムールヒョウの親子の姿
そうした中、WWFロシアと「ヒョウの森国立公園」当局は2013年10月下旬、ビデオ機能つきのカメラを、国立公園内の数カ所に設置しました。
自動撮影カメラが置かれたのは、国立公園の専門家たちがこれまでの調査結果に基づき、ヒョウが現れる可能性が高い時間や場所を参考に、注意深く選んだエリアです。
そして11月初旬、3頭の仔を連れたメスのアムールヒョウの親子の動く姿を、映像で捉えることに成功しました。
10台のカメラが撮影した映像は、のべ70時間分。野生のアムールヒョウの家族の生態をくわしく撮影した映像としては、初めての例となりました。
また、この複数の映像をWWFロシアが1カ月以上かけて、パズルのようにつなぎ合わせ、全体像を明らかにして分析したところ、今回撮影された母親が、過去にも3頭の仔を産んだ「ケドロフカ」という名前のヒョウであることもわかりました。
野外に置かれたカメラによる映像の質は、今のところはまだ、見やすいといえるレベルのものにはなっていません。
その粗さを実際に見れば、これが編集時に特殊効果や処理を加えていない、ありのままの自然の姿であることがわかるでしょう。
しかし、大人か子どもかを見分け、模様から仔ヒョウたちの個体識別をすることは十分にできます。
WWFロシア・アムール支部のスタッフで、映像製作に携わったヴァシリー・ソルキンは、この新たな調査手法がもたらした1カ月分の映像の分析が「過去20年間分の調査よりも、多くのことを教えてくれた」といいます。
「これまで野生のアムールヒョウの撮影は、餌の近くで待ち伏せしなければならず、私たちは冬の夜、木の上で凍える忍耐を強いられていました。このプロジェクトはそんな時代に別れを告げるものです。
しかし、そんなことよりも嬉しいのは、人間の撮影者がいないこの調査が、動物たちのありのままの姿と、まったくの自然な行動を記録できる、ということです」
生態解明への新たな一歩
ヒョウの森国立公園の代表を務めるアンドレイ・ボロディン氏も、このプロジェクトの意義について次のように述べています。
「映像を使ったこの調査は、ロシアと世界中の自然科学に大きな進展をもたらします。地球上で最も希少なネコ科動物の一種である、このアムールヒョウの映像による調査は、最もユニークな取り組みと言えるでしょう。
この新しい手法のおかげで、私たちはヒョウたちの暮らしを攪乱することなく、彼らの行動特性を研究することができるようになりました。これは、最近まで不可能だったことです。
そして収録される映像は、ヒョウの家族を包む秘密のベールに隠された、その生活を知るための第一歩です」
撮影されたアムールヒョウの親子。それは、ヒョウの研究に人生を捧げた人でさえ見たことのない、きわめて貴重な映像となりました。
そして、こうしたアムールヒョウの親子と、その現場は、日本にも深いかかわりがあります。
日本は、極東ロシアの森で伐採された木材を輸入しており、違法に伐採された木材も建材や家具に加工され、輸入されている可能性があるためです。
したがって、日本の消費者がそうした違法材を利用せず、持続可能な方法で生産された木材(FSC認証材等)を選び、購入に責任を持つことは、現地での違法な森林伐採を防ぐことにつながります。
WWFではこれからも、木材の生産国であるロシアと消費国である日本のそれぞれで、協力しながら活動に取り組み、森林の保全と、持続可能な森林の利用を推進していきます。