生物多様性の宝庫・メコン川で1,000種の新種を確認


WWFは新しい報告書の中で、インドシナ半島を流れる東南アジアの大河・メコン川流域で、過去10年間におよそ1,000種にのぼる新種が確認されたことを発表しました。

メコン川 10年間の記録

WWFは2008年12月15日、東南アジアのメコン川流域の自然についてまとめた、最新のレポート『FIRST CONTACT in the Greater Mekong』を発表しました。

1980年代以降、大型哺乳類の新種発見が相次いだアンナン山脈などを含め、インドシナ半島全体に大小の水系を広げるメコン川流域は、WWFが世界で最も重要な生態系の一つとして調査と保全を進めている地域です。

報告書は、続けられてきた一連の生物調査と情報収集の結果、脚を広げると30センチにもなる世界最大のアシダカグモや、体内にシアン化合物を持つピンク色のヤスデ(dragon millipede)を皮切りに、1997~2007年までに、メコン流域で1,068種の新種が見つかったと発表。
急激な開発によって自然が失われ行く中、まだ知られていない貴重な生態系がこの地域に息づいていることを訴えました。

発見された新種の多くは、人がほとんど足を踏み入れていない密林と、湿地帯で発見されました。しかし、中には驚くような場所で見つかった種もいます。

マムシ亜科に属するとみられる毒ヘビの一種(Siamese Peninsula pitviper)は、タイのカオ・ヤイ国立公園内にある、レストランの屋根で見つかりました。

また、猟師につかまり、地元の市場で売られていたところを科学者に発見された、イワネズミの一種(Laotian rock rat)もいます。このイワネズミは、1100万年前に絶滅したと考えられていた、きわめて珍しい動物でした。

1000の新種

このWWFの報告書は、519種の植物、279種の魚類、89種のカエル、88種のクモ、46種のトカゲ、22種のヘビ、15種の哺乳類、4種の鳥、4種のカメ、そして2種のサンショウウオを、新種として紹介していますが、この他にもさらに、数千種にものぼるとみられる、昆虫などの無脊椎動物が、同時に発見されたと考えられています。

「このメコン流域は、私が子どもの頃に読んだ、ダーウィンの物語のようです」と、トーマス・ツィーグラー博士は言います。「人跡未踏の地へのいざないと、この生物多様性について世界で初めて書き記すこと。本当にすばらしいことです。そのどちらもが、謎と美しさに満ちている」。

また、WWFグレーター・メコン・プログラムのディレクターを務めるスチュアート・チャップマンは、多くの新種の発見が、メコン川流域の自然の重要性をあらためて明らかなものにした、と指摘。
さらに、地域の生物多様性を未来にのこすためには、流域に位置する6つの国々、中国、カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムの諸国が、正式に協力して保全に取り組む必要があることを訴えました。

「生物多様性の宝庫」を守るために

レポートが強調するのは、環境に配慮した経済発展の重要性です。地域の貧困を軽減するために必要な協力が無ければ、人が暮らしのために自然を無計画に浪費する悪循環を、断ち切ることは出来ません。
この取り組みを実現しなければ、この地に生きる、まだ多くの未知の生きものたちを含めたメコンの自然は、いずれ失われてしまいます。

「科学者たちは今やっと、この地域の人々が何千年もの間、当たり前に知っていたものを、知るようになりました」と、チャップマンはいいます。
「1000種の新種のほかに、どのような生きものたちが、さらなる発見の時を待っているのか。それは誰にもわかりません。でも、それがさらに多くの発見となるだろう、ということは確実です」。

「生物多様性の宝庫」メコン川。その、驚くべき自然の未来は、これからの保全の取り組みにかかっています。

報告書:FIRST CONTACT in the Greater Mekong

PDF形式:英文/7.26MB

WWFインターナショナルのサイト

この記事のオリジナルはこちらです。(英文)

15 Dec 2008
Greater Mekong a biological treasure trove: more than 1000 new species discovered in a decade
http://www.panda.org/index.cfm?uNewsID=152622

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