赤土の問題と白保海域での調査


サンゴ礁の自然を脅かす大きな要因の一つに、「赤土」の流入があります。「赤土」とは、琉球列島の島々に見られる、粒子の細かい赤茶色の土のこと。これが、沖縄では、亜熱帯特有の強い雨が降るたびに地表から流れ出し、水路や川を伝って海へと流れ込みます。「魚湧く海」といわれた石垣島の白保の海でも、集中豪雨のたびに農地から赤土が流出し、サンゴ礁の海に影響を及ぼしています。

サンゴを脅かす赤い土

海に流れ出た赤土は、サンゴをはじめとするさまざまな生きものたちに打撃を与えます。

赤土自体に毒性などはありませんが、粒子が細かいため、一度水に混ざると、なかなか沈殿せず、水を長時間にわたって濁らせてしまいます。

すると、雨が止んだ後も日光が遮られ、 サンゴは体内に共生している藻類による光合成ができなくなって、栄養不足になり、死んでしまうことがあります。

また、直接赤土を被った場合も、サンゴは大きな打撃を受けます。

かつては、赤土がそれほどたくさん海に流れ込むことはありませんでした。強い雨が降っても、豊かな森や曲がりくねった川、湿地などの自然環境が、赤土の流入を食い止めていたからです。

しかし、これらの自然が開発されてきた結果、赤土はサンゴ礁に大きな被害を及ぼすようになりました。

もともと、沖縄の海岸の大半は、サンゴのかけらや貝殻などによって出来た白い砂で覆われていますが、近年はこの赤土の流出によって、浜が赤茶色く染まってしまう場所も増えています。

赤土を被り、壊死したサンゴ

青い海を赤く染める赤土。白保、轟川河口にて

「しらほサンゴ村」の取り組み

いつ、どのような形で赤土による被害が起きているのか。対策を立てる上で欠かせないのが、赤土の発生源である陸上と、流出先である海での調査です。

WWFサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」では、白保のサンゴ礁の健全度と、赤土被害の現状を把握するため、10年以上にわたり、さまざまな調査活動を実施してきました。

その一つが、地元の市民グループと共に取り組んでいる、白保のサンゴ礁内に堆積した赤土の調査です。

白保のサンゴ礁に流入した赤土は、通常、リーフの切れ目から外洋へ、徐々に排出されています。しかし、天候や風の向きによっては、赤土がサンゴの群生地に広く拡散してしまうこともあり、赤土が原因と思われるサンゴの死亡も度々確認されています。

「しらほサンゴ村」では、こうした調査の結果を公開し、行政などに対策に役立ててもらう一方、地域の方々とも協力した、赤土対策の実現に役立てたいと考えています。


2000年~2013年までの赤土調査まとめ


2016年 赤土調査 速報

2016年春 結果(5月24日実施)

G-1、F-2、E-2、D-1の4カ所でランク6を記録。最大のSPSS値はD-1の77.6kg/m3であった。
調査員によると、数日前の雨の影響か、海水の濁りは確認したものの、底質には溜まってないような印象を受けた。
前回の冬の調査は比較的きれいだったので、今回は濁っている印象があった。(地図をクリックすると拡大します)

2016年冬 結果(3月13日実施)

F-1、F-2、D-2、D-1、C-1の5カ所でランク6を記録。最大のSPSS値はD-2の62.5kg/m3であった。
この冬は前年に比べて約1.5倍の降水量652mm(盛山観測所)となり赤土の流出が心配されたものの、強風の時間が2000年からの調査期間で過去最高となり、風による外洋への排出効果も高かったのではないかと考えられる。
また、F-3、E-3でランク2も記録している。
調査員の話では、大寒波の影響により干潮時に干出するサンゴは淡く白化しているところもあったとのこと。(地図をクリックすると拡大します)

2015年 赤土調査 速報

2015年秋 結果(11月29日実施)

今回の調査で人為的な影響であるランク6を記録したのはD-2のみでSPSS値は53.7 kg/m3であった。
期間中台風の接近が1つあったものの、降水量は少なめで(267mm:盛山観測所)風と波による排出効果が高かったと考えられる。
北風が優位で、轟川河口からの赤土が北風に押されてDのランクが高かったとのではないかと思われる。
調査員によると前回の夏季調査同様海水の透明度は良い印象だったとのこと。(地図をクリックすると拡大します)

2015年夏 結果(9月5日実施)

今回の調査ではG-1でランク7(SPSS値211.3kg/m3)を、F-1でランク6を記録。期間中降水量は804mm(盛山観測所)と、夏季調査としては過去2番目の降水量を記録した。
期間中3つの台風接近により降水量も増えたが、風と波による排出効果も高かったようでG-1、F-1以外の所では全体的に汚染度は低くなっている。
また、夏場に心配される高水温によるサンゴの白化も見られなかった。(地図をクリックすると拡大します)

2015年春 結果(5月26日実施)

今回の春季赤土調査では前回の調査(冬季赤土調査2/10)との期間中降水量は593mm(盛山観測所)。
今回の調査でランク6を記録したのは、F-1、F-2、E-1、D-2、の4個所であり、ランク7を記録したのはE-2の1ヶ所となっている。最大SPSS値はE-2の383.4kg/㎥となっている。
今回の調査では、前日に大雨が降っていたため轟川河口(E-1、2、3)では大量に赤土が流れ出ていて調査員によると30cm先も見えないほど濁っていた。(地図をクリックすると拡大します)

2015年冬 結果(2月10日実施)

ランク6を記録したのがG-1、G-2、F-1、F-2、E-1、C-1、Y-1の7か所で最大のSPSS値はE-1の114.5kg/m3であった。期間中の降水量は132mm(盛山観測所)。前回の調査(秋季赤土調査)でランク6を記録したのは4か所だったのが、今回7カ所に増えている。調査員によると、秋季調査の時のような濁りは感じられなかったということなので前回調査前にまとまって降った雨による赤土流出が冬季調査期間中までに沈殿したと考えられる。(地図をクリックすると拡大します)

2014年 赤土調査 速報

2014年秋 結果(12月28日実施)

期間中の降水量は311mm(盛山観測所)。ただし、前回調査日の9月29日から、白保集落一帯で水不足による夜間断水が開始された11月20日のまでの降水量は16mmで、2013年の約 10%程度しか雨が降っていない。夜間断水後は295mmで、平年並みの降水量となった。
調査の結果は、G-1、F-2、E-1、C-2の4か所でランク6の濁りを記録。最大のSPSS値はG-1、F-2の55.7kg/m3で、秋の調査としては過去3番目に低い数値となっている。しかし、調査前日に42.5mmの雨が降っており、砂を採取した調査員の話では、轟川河口付近の海水の透明度はかなり低かった。また、地元の漁業者によると、例年8~9月ごろによく見られるサンゴの白化が、2014年は10月ごろによく見られたとのこと。(地図をクリックすると拡大します)

2014年夏 結果(9月29日実施)

F-1、E-1、A-1の3か所でランク6を記録。最大値はE-1のSPSS値は125.4kg/m3となった。
前回調査からの降水量は312mm(盛山観測所)で、この間まとまった雨が降ったのは7/8の台風8号の接近による81mm(1日)。春~夏の調査間の降水量としては、調査を始めてから2番目に少ない数値となっている。
期間中最も八重山に接近した台風はこの8号のみだが、他にも8つの台風が近海を通っている。降水量が少なかったことと、台風により海が撹拌・排出されたためSPSS値もそれほど高い数値にはなっていない。また、あちこちでサンゴの白化、淡色化も確認された。

(地図をクリックすると拡大します)

2014年春 結果(5月27日実施)

E-2でランク8を記録した他、D-2でランク7を、G-2、F-2、E-1、D-1、C-1、A-1の6か所でランク6を記録。E-2のSPSS値は518.6kg/m3となった。ランク8を記録したのは、2012年冬以来。
期間中の降水量は671mm(盛山観測所)で、5/5に234.5mm、1時間に86.5mmの大雨が降った。この日に梅雨入りとなり、調査日の5/27までの2週間弱で降水量は399.5mmと、前回調査日からの降水量の半分以上の降水量が記録されている。
このため、海水は濁っており、轟川河口を中心にしたポイントでは特にひどかった。また、サンゴの単色化も確認された。

(地図をクリックすると拡大します)

2014年冬 結果(1月23日実施)

調査の間隔が62日と短いながらも、降水量は384mm(盛山観測所)で、過去3年間の冬の調査と比べると降水量は多い。
ランク6を記録したのはG-1、F-2の2カ所で、最大値はG-1の106.7kg/m3。
最小値はA-3の1.3kg/m3だった。
冬ということで、ランク6以外、全体の透明度は高く感じたが、X-2、Y-2、ワタンジ沖合はいつもに比べて濁っていた感じがするとのこと。

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