© WWF-Aus / Christian Miller

世界自然遺産グレート・バリア・リーフが「危機遺産」に?


地球上の貴重な自然環境を後世にのこすため、ユネスコが登録している「世界自然遺産」。

国連の会議で、どこが新たに登録されるかは、毎回、世界的な注目の的です。

しかし、登録されればその自然が保全される、というわけではありません。

管理や保全の努力を怠れば、違法な侵入や密猟、過剰な観光などによって、登録地は荒廃し、世界遺産としての価値を失うことになります。

その警告として、ユネスコでは危機に陥った世界遺産を、「危機遺産」のリストに加え、必要な対応を当該国の政府に求めています。

そして改善が認められたら、リストから外される、という仕組みです。

進化論の島、ガラパゴス諸島に生息する固有種のゾウガメ。過去には、このガラパゴス諸島も一時、「危機遺産」のリストに名を連ねたことがあります。また、オマーンのアラビアオリックス保護区のように、改善がなされず、世界遺産の登録が抹消された残念な事例もあります。
© Antonio Busiello / WWF-US

進化論の島、ガラパゴス諸島に生息する固有種のゾウガメ。過去には、このガラパゴス諸島も一時、「危機遺産」のリストに名を連ねたことがあります。また、オマーンのアラビアオリックス保護区のように、改善がなされず、世界遺産の登録が抹消された残念な事例もあります。

この危機遺産のリストに先日、ユネスコが、オーストラリアの世界自然遺産「グレート・バリア・リーフ」を、危機遺産に加えようとしている、という報道がありました。

主な理由は、地球温暖化(気候変動)の影響による、サンゴ礁の減少や劣化。

オーストラリア政府はこれに反対する意向を表明していますが、石炭輸出を今も重視しているオーストラリア自体、温暖化対策については残念な国の一つなので、その意味では、サンゴ礁保全のためにできる努力は、もっとあるといえるでしょう。

世界最大のサンゴ礁として知られるグレート・バリア・リーフ。水温上昇などによるサンゴ礁の大規模な白化をはじめ、個体の9割をメスが占めるというウミガメの性比の偏りや、海面上昇による固有種の絶滅などが報告されています。
© Shutterstock / Debra James / WWF

世界最大のサンゴ礁として知られるグレート・バリア・リーフ。水温上昇などによるサンゴ礁の大規模な白化をはじめ、個体の9割をメスが占めるというウミガメの性比の偏りや、海面上昇による固有種の絶滅などが報告されています。

しかし同時に、オーストラリア1国で気候変動が解決できないことも事実。

危機遺産のリストは基本、その自然遺産を持つ国に改善を求めるものですが、今回のユネスコの動きは、その考え方を超え、気候変動への対策に向けた、国際的な努力を求めるものといえるかもしれません。

自然環境は本来、国境に関係なく存在し、その価値を有します。

それをどうすれば真に保全できるのか。今回のニュースであらためて考えさせられました。

議論の行方に注目したいと思います。

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自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

学士(芸術学)。事務局でのボランティアを経て、1997年から広報スタッフとして活動に参加。国内外の環境問題と、保全活動の動向・変遷を追いつつ、各種出版物、ウェブサイト、SNSなどの編集や制作、運用管理を担当。これまで100種以上の世界の絶滅危惧種について記事を執筆。「人と自然のかかわり方」の探求は、ライフワークの一つ。

虫や鳥、魚たちの姿を追って45年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの30年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと願っています。

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環境保全団体です。

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