被災地の海・志津川湾にて、養殖の環境影響調査が実施されます


2011年の東日本大震災で、養殖施設が全損した宮城県の志津川湾では今、ワカメ、カキ、ホタテ、ギンザケなどの養殖が復興し、盛んに行なわれています。

私たちも支援してきたこの水産業の復興は、ただ「状況を震災前に戻す」ものではありません。

事業に取り組む宮城県漁協志津川支所戸倉出張所の皆さんは、被災を契機に、カキについては養殖イカダの数を1/3に削減。ギンザケについては生け簀の間隔を広げると同時に生産尾数を減らす改善に取り組んできました。

これまでの養殖のあり方を見直し、環境への負荷を減らした、新しい水産業の復興を目指す道を選んだのです。

水産物の養殖は、魚を直接乱獲するわけではありませんが、きちんと管理しないと、さまざまな環境の負荷をもたらします。たとえば、養殖魚のエサになる小魚(天然魚)の乱獲や、排泄物による海の汚染などです。

こうした問題を解決し、海の生態系を守るために、私たちはASC(水産養殖管理協議会)認証の普及に取り組んでいます。この認証は、世界共通の基準に基づき、海への悪影響を抑え、適切な管理をした水産物の養殖を認証するものです。

そして今回、志津川湾ではこのASC認証の基準にそって、環境への悪影響が無いかどうかを調べる調査が行なわれます。

よい結果が出れば、この志津川湾で始まった試みが、一つの震災復興にとどまらない、世界の養殖業が抱える問題の解決をみちびく「持続可能な漁業」の優れた取り組みであることが、確かに示されることになるでしょう。

また、現場の生産者によるこの取り組みを支えるのは、市場や消費者の理解と選択です。こうした水産物を、消費者自らが選ぶことが重要なのです。

被災地の取り組みを支援するため、ぜひこうした取り組みにも注目していただければと思います。(自然保護室 前川)

ギンザケの生け簀。今回の調査では、養殖施設の周辺と離れた場所で海底の土砂を採取し、健全なレベルかどうか、ASCの環境基準を満たすかどうかを分析します。

震災後、イカダの数を減らし養殖密度を下げたことで、大きく育ったカキ。

養殖ロープに着生した海藻。志津川湾は、多種多様な海そう群落が生育する場所として、環境省が「日本の重要湿地500」として定めた自然豊かな場所。また、国際的な湿地保全条約である「ラムサール条約」の湿地潜在候補地にも指定されています。

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自然保護室(海洋水産 グループ長)
前川 聡

修士(動物学・北海道大学)
渡り性水鳥の全国調査および国際保全プログラムのコーディネーター業務、WWFサンゴ礁保護研究センター(沖縄県石垣島)での住民参加型の環境調査および普及啓発業務、海洋保護区の設定および管理状況の評価業務等に従事後、2011年より東日本大震災復興支援プロジェクトと水産エコラベルの普及および取得支援に携わる。養殖業成長産業化推進協議会委員。

日本各地の漁師町を訪ねては、持続的な養殖や漁業の推進のために関係者の方々と話し合いをしています。道すがら、普段はなかなか見ることができない風景や鳥を見つけては、一人ほくそえんでいます。もちろん、新鮮な魚介とお酒も! 健康診断の数値が気になるAround Fifty

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