沖縄県東村高江の米軍ヘリパッド建設の中止を!
2011/02/28
多くの固有種、希少種が生息し、世界的に貴重な自然が残る沖縄島北部の山原(やんばる)の森。現在ここにある高江の集落を取り囲むようにして、6カ所のアメリカ海兵隊のヘリパッドが新たに建設されようとしています。2011年2月23日、住民の生活を脅かし、地域が強く反対しているこの計画の中止を求める緊急集会が開催され、WWFも他のNGOと共に声明を発表しました。
「やんばる」の保全を防衛省に申し入れ
沖縄島北部にある、約7,500ヘクタールの米軍海兵隊の北部訓練場(ジャングル戦闘訓練センター)の一帯には、亜熱帯の常緑広葉樹林、いれゆる「やんばる(山原)」の森が、良好な状態で残されています。
この森には、地球上でここだけに生息するノグチゲラやヤンバルクイナ(共に天然記念物)をはじめとする、数多くの固有種、固有亜種、絶滅のおそれのある種の重要な生息地です。
しかし、この日本が世界に誇ることのできる自然は、現在ここで進められようとしている、アメリカ海兵隊のヘリパッド(軍用ヘリコプターの発着場)建設により、危機にさらされています。
これまでに幾度も建設工事の中止を求めてきたWWFでは、2011年2月23日、日本自然保護協会、日本野鳥の会、グリーンピース・ジャパンなどの各環境保全団体とともに声明を発表。
現在工事を強行している政府と防衛省に対し、強く抗議を申し入れました。
またこの日、上記団体を含む4つの環境団体、6つの平和団体、沖縄の地域の団体1つの11団体は、東京・霞ヶ関の参議院議員会館で、緊急の院内集会および記者会見を開催。定員を超える約130名の参加者と、各党の複数の衆参議員、さらにはアメリカの市民団体からも代表者の参加を得て、現政府の強硬な態度に抗議しました。
集会に参加した各団体からは、現地の緊迫した現状と、事業の問題点がさまざまな視点から報告・指摘されました。
また、国会議員からも、山口県上関原発を巡って同様の強行的な工事が進められていることについて発言があり、国民の間での情報の共有と、いずれも事業を中止させるため全力をつくす、としたコメントがありました。
脅かされる「やんばる」の生物多様性と人の暮らし
現在、高江では建設中止を訴える地域住民の意思を無視する形で、大勢の職員、作業員が動員され、住民を威圧しながらの建設工事が、着工されています。
建設現場にはダンプカーにより大量の土嚢が運び込まれ、パワーショベルが稼働し、樹木の伐採も行なわれており、工事の音が集落にも響き渡っているといいます。
この訓練場で建設が進められようとしている新たなヘリパッドは6カ所。一つあたりの直径は75メートルにもなります。
那覇防衛施設局の「環境影響評価図書(2006年)」では、このヘリパッド建設予定地とその周辺で、4,158種の野生生物が確認されており、その中には、植物12種、動物11種の固有種・固有亜種が含まれています。
また、環境省の「レッドリスト」に名が載っている野生生物が177種、沖縄県版の「レッドリスト」に掲載されている種も188種確認されています。
これは、世界自然遺産の選定基準のひとつである「世界的な価値の絶滅のおそれのある種を含む生物多様性の保存のための重要な自然の棲み場所がある地域」という項目を十分に満たすものでもありますが、その保全に対する配慮は、なされていないのが現状です。
生物多様性の保全をリードする国として
IUCN(国際視線保護連合)が主催する「世界自然保護会議」では、これまで度重なる「やんばる」の保全勧告が出され、日米両政府に「やんばる」に生息するノグチゲラ・ヤンバルクイナとその生息場所を保全することが求められてきました。
また、日本が議長国を務めた2010年10月に名古屋で開催された「生物多様性条約第10回締約国会議」でも、生物多様性のための戦略計画である「愛知ターゲット」が採択されました。
これは2020年までに「生物多様性の損失を止めるために効果的かつ緊急な行動を実施する」ことを使命として掲げています。
東村高江での米軍へリパッド建設は、この使命に大きく反するもので、会議の議長国として、世界に率先して生物多様性を心がけるべき日本政府が取るべき行為ではありません。
WWFジャパンは発表した声明の中で、政府に対し、世界自然遺産の候補地となりうる「やんばる」の生物多様性保全に力を入れるべきこと、そして、地域住民の安全な生活を保証するために、高江での米軍ヘリパッド建設計画中止を強く求めています。