和訳版発行「Above Board: 銀行の水産セクターポリシーの評価2023」

この記事のポイント
2024年4月、WWF は水産版「サステナブル・バンキング・アセスメント」の調査結果に基づく報告書「Above Board 2023」1を公表しました。これは、アジア、欧州、北米地域の40の銀行(日本の9行を含む)による水産関連の持続可能性の取り組みを評価したものです。調査結果によると、9つの銀行が2022年の評価時と比べて改善を示した一方で、評価された銀行の平均スコアは21%と、全体としては依然として低い水準にあることも明らかになりました。この度、和訳版「Above Board: 銀行の水産セクターポリシーの評価2023」をリリースする運びとなりましたのでお知らせいたします。

銀行の水産サステナビリティの取り組み 底上げが必要

海洋環境の悪化と海洋資源の枯渇が深刻化する中、海洋環境や資源を保全しながら、持続可能な経済活動を行う「ブルーエコノミー」と、そのための資金調達や金融機関による投融資である「ブルーファイナンス」の重要性が世界的に注目を集めています。
WWFは、アジア地域の46の銀行(日本の5行含む)における持続可能性の取り組みを評価した 「サステナブル・バンキング・アセスメント(SUSBA)」2を2017年から毎年公表しています。
これに加えて、金融機関による水産物に特化した持続可能性の取り組みを後押ししていくため、WWFは世界の40の銀行(日本の9行を含む)における水産業に関する取り組みを評価した新しい報告書「Above Board 2023」を2024年4月に公表し、その和訳版「Above Board: 銀行の水産セクターポリシーの評価2023」を2024年10月に発行しました。

「Above Board: 銀行の水産セクターポリシーの評価2023」和訳版

和訳版のダウンロードはこちら

調査結果では、9つの銀行が2022年の評価時と比べて改善したことが示されました。改善の内容には、水産物に特化した投資先企業に対する期待の方針への追加、既存のESGクレジットポリシーやリスク評価への水産関連の項目の追加などが含まれます。さらに、ブルーファイナンス商品への気運も高まりつつあることがわかりました。
地域別の傾向を比べると、欧州の銀行に比べ、北米やアジアの銀行は大きく遅れをとっています。ただし、アジアの銀行は、前年に比べて前進が見られました。
一方で、全体の平均スコアは21%と、前年よりわずかに上昇したものの、低い水準に留まっており、今後、さらなる前進が期待されます。

前進が見られた点と、いまだに課題として明確になっているポイントは、概ね次のとおりです。

前進した点

・大きな前進が見られた9行のうち、5行は「顧客への期待」で、4行は「銀行のコミットメント」で改善が見られました(9行のうち、8行がアジアの銀行)。
・サステナブルファイナンスの枠組みの中にブルー商品を位置付けるなどの取り組みを行なった評価対象の銀行は、前年の7行から11行(28%)に増加しました。

課題

・気候変動や自然関連に比べると、水産に関するリスクの認識や取り組みは遅れており、水産に特化した方針を持つのは12行(30%)、そのうち方針を公表しているのは10行のみでした。
・取り組みが進んでいる銀行(スコア71%)と取り組みが遅れている銀行(スコア0%)の間に大きな隔たりがあります。

銀行に求められるブルーファイナンスの取り組み

評価結果をもとに、レポートでは銀行に対し以下を含む取り組みを進めることを推奨しています。
・ 国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)の「持続可能なブルーエコノミー金融原則(ブルーファイナンス原則)」3や指針等に沿った、投融資方針を策定すること。
・水産物関連のエクスポージャーを定期的に評価し、投融資先とのエンゲージメントを通じて、事業の持続可能性の改善を支援すること。
・ 海洋環境の保全や持続可能性を向上に寄与するブルーファイナンス商品を開発・提供すること。
・UNEP FIの「持続可能なブルーエコノミー金融イニシアティブ(ブルーファイナンスイニシアティブ)」に参加すること。
詳細はレポートをご覧ください。

WWFは継続して持続可能なブルーエコノミーの実現における金融機関の役割を重視し、提言や働きかけを行なっていきます。

< 参考文献>
Above Board 原文(英語)
サステナブル・バンキング・アセスメント2022
UNEP FI ブルーファイナンス原則

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