国際プラスチック条約 企業連合(日本)は、 野心的な国際条約について議論するイベントを開催しました
2024/10/24
- この記事のポイント
- 国際プラスチック条約 企業連合(日本)(代表:テラサイクルジャパン合同会社 代表 エリック・カワバタ)は、2024 年 10月 4 日(金)、東京都庁において、プラスチック汚染を根絶するための野心的な国際条約の必要性と企業の役割について議論するイベントを開催しました。
国際プラスチック条約 企業連合(日本)(代表:テラサイクルジャパン合同会社 代表 エリック・カワバタ)は、2024 年 10月 4 日(金)、東京都庁において、プラスチック汚染を根絶するための野心的な国際条約の必要性と企業の役割について議論するイベントを開催しました。
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(視聴期限:2024年12月31日まで)
イベントの目的
2024年11 月 25 日~12 月 1 日、韓国・釜山で、プラスチック汚染根絶のための国際条約の制定に向けた最終の国連の交渉会議(政府間交渉委員会第 5 回会合:INC-5)が予定されています。この最終交渉会議の前に、プラスチックを取り扱う企業の方々を主な対象として、プラスチック汚染根絶に向けての野心的な国際条約の必要性や企業の役割を認識してもらう機会として、本イベントを開催しました。
イベントでの登壇者は以下の通りです。
東京農工大学 農学部 環境資源科学科: 高田 秀重 教授
ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社 代表職務執行者 ジェネラルカウンセル: 松井 さやか氏
テラサイクルジャパン合同会社 代表: エリック・カワバタ 氏
株式会社ロッテ サステナビリティ推進部 企画課 課長: 飯田 智晴 氏
WWFジャパン サーキュラーエコノミー・マネージャー 三沢 行弘
イベントには、企業やメディアより、約30人が出席しました。
政策決定者からのごあいさつ
イベントには、環境省海洋環境課の水谷課長と経済産業省資源循環経済課の上鑪国際資源循環管理官も来賓として出席し、国際プラスチック条約制定に向けた交渉の現状に加え、企業連合との継続的対話の意志や企業連合参画企業のトップランナー的な活動への期待が示されました。また、自民党衆議院議員で大阪ブルー・オーシャン・ビジョン推進議員連盟事務局長である笹川博義衆議院議員より、国際プラスチック条約の政府間交渉もようやくゴールが見えてきたが、それぞれ事情を抱える各国が様々な意見を持つ中で、これらをどうやってまとめていくのかというところに日本の役割があり、「(企業の)皆さんには、もう少し高めな目標に向かって日本政府に頑張れよと叱咤激励をお願いしたい。それを受けて日本政府にも頑張ってもらいたい」というメッセージが寄せられました。
プラスチック条約の必要性と盛り込むべき内容についての講演
最初に、東京農工大学の高田秀重教授が「プラスチック条約の必要性と盛り込むべき内容」について30分程度、講演をしました。研究によると、プラスチックは生産直後から劣化が始まり、マイクロ/ナノプラスチックを放出します。また、プラスチックには添加剤やそれ自体に数千種以上の有害性が懸念される化学物質が含まれており、さらに流出後に自然環境中の有害化学物質を吸着します。それらプラスチック関連化学物質を含んだマイクロ/ナノプラスチックを野生生物だけでなく人も摂取しており、人の健康に実際に悪影響を与えているとする研究も出てきています。これに対し、多岐にわたり因果関係の特定が容易ではないプラスチック関連化学物質を一つ一つ禁止していくのでは対応が手遅れとなり現実的ではないため、予防的に生産や消費を抑えておく必要性が科学者から主張されています。そして、自らが関わったレジンペレットによる国境を越えた世界的汚染の調査結果や、国内で禁止された化学物質が輸入により出回っている事例を用いて、国際条約で国際的規制をすることの重要性を示しました。
解決策として、大量消費・大量リサイクルは持続的ではなく、パリ協定を遵守するために大量焼却にも頼れないため、構造的な転換が必要であるとの見解を示しました。そして条約に盛り込むべき内容として、使い捨てに相当するプラスチック生産量・消費量の50%削減、規制対象物質選定委員会を創設しての高懸念化学物質の規制、毒性が高かったり劣化し易かったりする高懸念ポリマーの規制、マイクロプラスチックが発生しにくくリサイクルしやすいように製品の造り方やデザインの規制、拡大生産者責任制度の導入、の5項目を提唱しました。
企業連合と参画企業の取り組み
次に、国際プラスチック条約企業連合の日本の事務局責任者であるWWFジャパンの三沢行弘から、企業連合の目的やこれまでの活動、INC-5に向けての日本政府へ求めていくことについて説明しました。企業連合では、条約でプラスチックの生産と使用の削減、根絶できないすべてのプラスチックの循環、削減も循環も不可能なプラスチックの流出の予防と回復、という3つの分野で条約交渉の進展を求めている。そして、国際条約を法的拘束力のある野心的な世界共通ルールに基づくものとして成立させることが、特にプラスチック削減に向けて積極的に取り組んでいる企業にとって公正な競争環境を築くことにつながるため、これらの企業からのさらなる参画を期待しているとの呼びかけがありました。イベントに参加した企業連合参画企業のキリンホールディングス株式会社の池庭愛氏からは、プラスチックを取り扱う企業としてプラスチックの引き起こす問題解決への責任を果たすために活動しているが自社だけでは限界があるため、企業連合として国際的規制に向けて政府への提言をすることでさらに貢献していきたいという抱負を語られました。
続いて、同じく企業連合の参画企業であるユニリーバ・ジャパン・ホールディングスの松井さやか氏により、「プラスチックがごみにならない未来へ向けて ユニリーバのゴールと野心的な条約の必要性」についての講演がありました。松井氏は、「サステナビリティを暮らしの当たり前に」をパーパスとして掲げるユニリーバのプラスチックにおけるサステナビリティ目標や進捗、「ユーマイルプログラム」という115万人が登録する消費者参加型の使用済み容器の回収の取り組みなどを説明しました。
しかしこういった自主的な取り組みだけでは限界があり、回収した製品を製品へと戻す水平リサイクルや、そのための製品デザイン、再生プラスチックの使用などを社会実装するためには、そのための共通ルールとしての法律、さらには条約が必要となる。プラスチックへの規制は必ずしも産業への制約にはならず、むしろ統一されたルールが存在しないこと自体が私たちにとっての制約なのだと強調しました。そして、国際プラスチック条約を野心的なものとするために、企業連合のような枠組みに企業が参加し、一緒に声を届けていくことが大切だという力強いメッセージで締めくくりました。
「野心的な条約に向けて企業は何をすべきか」についてのディスカッション
最後に、「野心的な国際プラスチック条約に向けて企業は何をすべきか」をテーマに、東京農工大学の高田教授、企業連合からユニリーバ・ジャパンの松井氏、テラサイクルジャパンのカワバタ氏、ロッテの飯田氏が登壇し、パネルディスカッションを行いました。
条約が不十分であった場合の問題点としては、高田教授(東京農工大)より使用中から発生するマイクロプラスチック汚染には、廃棄物管理の強化だけでは対処できず、生産量を減らす必要があるが、条約でそれが欠けてしまえば、汚染は続くことになるとの見通しが示されました。飯田氏(ロッテ)からは、企業としても容器包装などを持続可能にアップデートするために今後の政策の方向性を知る必要があり、それが条約で早急に示されなければ、企業の設備投資のタイミングも遅れてしまうという指摘もありました。カワバタ氏(テラサイクル)からは、条約で法的拘束力のある野心的なルールが設定されれば、企業の調達コストも下がり設備投資が容易になる。環境への悪影響を企業や社会が負担しないという経済外部性の問題は、企業自らが解決できず、全体的な規制が必要となる。また、日本ではB2Bのリユースを前提としたガラス瓶の回収システムという成功事例があり、条約で野心的なルールが設定されても対応できるだろうという発言がありました。松井氏(ユニリーバ)からは、条約が野心的では無ければ、企業の自主的な取り組みに委ねられる状況は続く。プラスチック汚染の問題は一企業では対応できず、法的拘束力のある条約により各国のビジネスルール自体を書き換える必要があるとの意見があげれられました。
企業連合に参加した理由として、飯田氏(ロッテ)からはプラスチックのいい面や問題点を踏まえ、企業として経済合理性を保てる形でルールメイキングに自ら加わっていくことに意義を感じている。条約交渉の情報収集や企業の取り組みを広く伝える場としても企業連合を活用できるといった、メリットも提示されました。
条約交渉における課題として、高田教授(東京農工大)からはプラスチック汚染や生態系や人への健康影響について世界的に共有できていないこと、また、産油国とそれ以外の国々とのスタンスの隔たりが大きいことが挙げられました。
日本政府に求めたいこととして、松井氏(ユニリーバ)からは、規制することは競争を減らすのでなく、安心して競争できる共通の土俵を設定することになる。日本では一人当たりのプラスチックの消費量が多いが、各国をリードして説得力のある主張ができる国として日本政府に期待しており、政府の背中を押していきたいとの抱負が示さされました。カワバタ氏(テラサイクル)からは、資源の少ない日本にはもったいない精神がある。また、調べた中では、リターナブル瓶の洗浄業界がある世界唯一の国でもあり、過去の循環経済の事例からも学べる。こういった背景のある日本の政府には世界をリードしてほしいとの期待が表明されました。高田教授(東京農工大)からは、日本には地域資源循環という政策があり、これを世界標準にしていくことで、世界全体でプラスチックを減らすことができるので期待したいとの声もありました。
今後に向けて
イベント後のアンケートでは、野心的な条約の必要性や、企業連合の活動への理解が深まったとする回答が多くみられ、企業連合への加盟を検討したいとする参加企業もありました。
深刻なプラスチック汚染を早期に収束させるためには、国際条約を法的拘束力のある野心的な世界共通ルールに基づくものとして成立させることが重要です。企業連合では、日本をはじめとした各国の政策決定者に、野心的な条約とするよう引き続き働きかけていきます。
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(視聴期限:2024年12月31日まで)