10年で600種の新種!「宝の島」マダガスカルの危機


WWFは2011年6月、新しい報告書『宝の島:マダガスカルの新たな生物多様性(Treasure Island: New biodiversity in Madagascar)』を発表しました。危機にさらされているマダガスカルの自然の多様性と、この10年あまりの間に発見された、新種の野生生物についてまとめたものです。1999年以降の約10年間に発見された新種は、615種にのぼり、その多くがすでに絶滅の危機に瀕しています。

約10年間で600種が発見された

世界で4番目に広い島、マダガスカル島。この熱帯の島では、1999年から2010年の間に、615種もの新種の野生生物が発見されました。

これらの新種には、41種の哺乳類、42種の無脊椎動物、17種の魚類、69種の両生類、61種の爬虫類、385種の植物が含まれています。

この中には、世界でマダガスカルにしか生息していない、キツネザル類の新種も含まれています。2000年に発見された、マダムベルテネズミキツネザル(Microcebus berthae)です。
赤茶色の毛を持った、30グラムしかないこのキツネザルは、最小のネズミキツネザルであるだけでなく、世界最小の霊長類でもあります。

新種の色を変えるヤモリも発見されました。普段は、体色が樹皮の色に似ていますが、求愛時期には鮮やかな明るい青色に姿を変えます。

また、ヤシ科の植物も発見されました。このヤシの一種は、(Tahina spectabilis)は、生涯に一度だけ花を咲かせ、実をつけた後には枯れてしまいます。

しかし、こうした新種多くは、見つかったその時から、すでに絶滅の危機にさらされています。
特に深刻なのは森林破壊で、専門家によれば、かつての森林の90%が失われてしまったといいます。

 

発見された時から絶滅の危機に

実際、マダムベルテネズミキツネザルなどの多くの種は、すでに森林破壊によって危機に瀕しています。
深刻な森林破壊と分断は、野生生物をおいつめるばかりではありません。

土壌の浸食と、それに伴うサンゴ礁への土砂の流出を引き起こします。そして、そうした環境破壊に干ばつが加わった結果、地域社会の暮らしまでもが脅かされるようになりました。
こうした社会的な不安が、破壊的な漁業や、さらなる自然破壊の呼び水になっています。

さらに、2009年3月に起きたクーデターとその後の政治的な混乱の中で、マダガスカルの熱帯雨林では、特にローズウッドを中心とした貴重な樹木が多く伐採されました。

被害は何万ヘクタールにも及び、島内でも最も豊かな生物多様性を持つマロジェジ、マソアラ、マナナラなどの国立公園も、その被害に含まれています。

新たに発見された種の一つであるヘビが2010年に発見されたマキラ国立公園でも、違法な伐採が起きており、おそらくこのヘビの数も既に減少していると推定されています。

また、違法伐採と同時に、野生動物の密猟も増加しました。マダガスカル北部にあるレストランでは、キツネザルの肉の値段が一皿ほんの3ユーロほどで出されているといいます。こうした問題は、国立公園の周辺で暮らす住民の生活を支えていた、観光産業にも打撃を及ぼしています。

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マダムベルテネズミキツネザル (Microcebus berthae)

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新種のヤシの一種、Tahina Palm(Tahina spectabilis)

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報告書『Treasure Island: New biodiversity in Madagascar』

「宝の島」の危機をレポート

WWFは、2011年6月、この10年あまりの発見をまとめた報告書『宝の島:マダガスカルの新たな生物多様性』(Treasure Island: New biodiversity in Madagascar)を発表しました。

このレポートは、島の自然の豊かと多様性を明らかにすると共に、その環境を脅かす脅威についても警鐘を鳴らしています。

WWFマダガスカルの自然保護ディレクターであるナニー・ラツィファンドリハマナナは、次のように言います。
「この報告書は、このように異なるすべての種を宿し、ほかの生態系とは一線を画すマダガスカルの生態系が、どれだけユニークでかけがえのないものであるかを改めて示しています」。

そして、10年間の新種の発見については、この事実が、マダガスカルで何が危機にさらされ、私たちが保護しなければ何を失ってしまうことになるのかを示している、と言います。

WWFでは、マダガスカルの人々が周囲の自然と調和し、環境と島の生物多様性を守れるような生計の手段を確立し、より持続可能な社会づくりを推進できるように、保護区をネットワークで結び、森林と海域、動植物を守る活動に力を尽くしていきます。

記者発表資料

関連情報

報告書(全文/PDF形式)

 

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