アマゾンの保護区の開発許可が白紙に
2017/10/19
WWFは、2017年8月30日、南米アマゾンで、2014年から2015年にかけて、381種の新種が発見されたという報告書を公表しました。同時に、アマゾンの一部の保護区が開発にさらされようとしており、生物多様性の保全上、予断を許さない状況であることも伝えていました。しかし、9月25日、ブラジル政府は開発許可を白紙にすることを明らかにしました。国内外からの反対する声に耳を傾け、方針を改めることにしたのです。
豊かな生物多様性を誇るアマゾンに迫る脅威
大小いくつもの河川がめぐり、流域を熱帯林に覆われた南米のアマゾンは、世界でも屈指の豊かな生物多様性を誇ります。
その保全の重要性をかねてから指摘し、活動にも取り組んできたWWFブラジルは、2017年8月30日、2014年から2015年にかけて、381種の新種が発見されたという報告書『アマゾンの新種の脊椎動物種・植物種 2014-2015』を公表しました。
ここに含まれる新種は、20種の哺乳類、93種の魚類、32種の両生類など。科学的調査を行なえば、それまで確認されていなかった新種が、アマゾンでは今も発見されることを証明しました。
しかし、WWFでは、そのアマゾンに開発の脅威があることも指摘。
特に、北部に位置する広大な保護区「銅及および類似鉱物の国立保護区」(National Reserve of Copper and Associates:通称RENCA)では、開発計画が持ち上がっていいました。
このRENCAは、スイスの国土と同規模の面積を有する広大な保護地域ですが、ブラジル大統領令によって、森林伐採と資源採掘が許可されようとしていたのです。
保護区の開発計画は白紙へ
もともとRENCAは金や銅、鉄鉱石などの鉱物資源に恵まれているため、主に外国資本による採掘から守る目的で、1984年にブラジル政府により、保護区の指定を受けました。
そのことは、同時に、保護区内の自然環境や地元住民の生活を守る役割も果たしてきました。
ところが、経済政策の一環として、RENCAの保護区の一部指定解除と森林伐採および資源採掘を許可するブラジル大統領令が2017年8月23日に出されました。
この大統領令は、アマゾンの保全を求める科学者やNGO、地元住民の意見を聞かずに出されたことから、国内外の激しい反発を招き、大統領令の停止を求める署名活動などが展開されました。
また、ブラジルの裁判所も大統領令の執行の一時停止を宣告。
こうした批判や反対する動きを受けて、ブラジル政府は「社会とのより広範囲な議論」が必要と判断し、2017年9月25日に、大統領令の取り消しに言及しました。
「過去50年で、アマゾンに対するもっとも大きな攻撃」」ともいわれた、この大統領令の取り消しについて、現地では「自然保護の大きな勝利」とも称され、危機は一旦、回避されることになりました。
しかし、ブラジル政府は「ブラジルはもっと成長し、多くの雇用を生み出す必要がある」と述べており、今回と同様の政策決定がなされる可能性は、今後も残されています。
アマゾンの保護区に再び開発許可が与えられることのないよう、WWFでは引き続き事態を注視していきます。