象牙より高価な「赤い象牙」?ワシントン条約でも注目


サイチョウ=犀鳥をご存知でしょうか?

東南アジアとアフリカの熱帯林に54種が生息していて、特徴的な大きなくちばしをサイの角に見立てサイチョウと呼ばれています。

その1種、オナガサイチョウのくちばしが今、象牙の高価な代替品として注目され、犯罪シンジケートによる密猟のターゲットになっています。

オナガサイチョウは東南アジアに生息していて、特にユニークなくちばしを持っていて、英語名は、ヘルメット・ホーンビル。

「カスク」と呼ばれるくちばしの上の突起部分は、美しい赤色で「赤い象牙」とも呼ばれます。

これに彫刻を施した装飾品や装身具が、特に富裕層の増加している中国で珍重されているのです。

日本でも根付の材料として使用されていたことがあるそうで、名工といわれる懐玉斎正次作のウサギやネズミの根付の目の部分にもこのカスクが使われてとかいないとか。

トラフィック最新の報告書『OBSERVATIONS OF THE HELMETED HORNBILL TRADE IN LAO PDR(オナガサイチョウの取引に関する動向(ラオス))(英語)

密猟と違法取引が急増したのは、2010年頃から。

トラフィックが行なった調査でも、2012年3月から2014年8月までの間に中国とインドネシアで2,170個ものカスクが押収されたことをわかりました。

オナガサイチョウは、その生息国すべてで保護され、ワシントン条約で国際取引も禁止されている(1975年から!)にも拘わらず、です。

私たちトラフィックでは、最近発表した報告書でも、規制強化の必要性を強調。

また現在、南アフリカ共和国で開催されているワシントン条約の第17回締約国会議でもオナガサイチョウについて話し合いが行なわれています。

カスクに彫刻を施した装飾品。サイチョウ科の中でも、このように装飾品として利用されるのはオナガサイチョウだけです。

この会議では、条約事務局が、野生生物犯罪と闘う国際コンソーシアム(ICCWC)とタッグを組んで生息国での密猟・違法取引の取り締まりを強化する決定がなされました。

こうした問題の犠牲になる野生生物を少しでも減らしていくために、私たちも取り組みを続けてゆきたいと思います。(トラフィック 若尾)

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自然保護室(野生生物)、TRAFFIC
若尾 慶子

修士(筑波大学大学院・環境科学)
一級小型船舶操縦免許、知的財産管理技能士2級、高圧ガス販売主任者、登録販売者。
医療機器商社、海外青年協力隊を経て2014年入局。
TRAFFICでペット取引される両生類・爬虫類の調査や政策提言を実施。淡水プロジェクトのコミュニケーション、助成金担当を行い、2021年より野生生物グループ及びTRAFFICでペットプロジェクトを担当。
「南西諸島固有の両生類・爬虫類のペット取引(TRAFFIC、2018)」「SDGsと環境教育(学文社、2017)」

子供の頃から生き物に興味があり、大人になってからは動物園でドーセントのボランティアをしていました。生き物に関わる仕事を本業にしたいと医療機器業界からWWFへ転身!ヒトと自然が調和できる世界を本気で目指す賛同者を増やしたいと願う酒&猫好きです。今、もっとも気がかりな動物はオガサワラカワラヒワ。

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