逮捕から2年、トラの密猟者に判決下る


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

自然保護室の川江です。
私たちが自然保護活動を支援している極東ロシアの森には、2種のネコ科の絶滅滅危機種、シベリアトラとアムールヒョウが生息しています。

この2種は、国の法律で保護されているにもかかわらず、今も密猟の被害が絶えません。

2015年8月にも、極東ロシアの沿海地方で、銃で撃たれ、足を怪我した若いメスのトラを住民が発見するという出来事がありました。

通報を受けて、沿海地方狩猟局の職員と農業アカデミーの獣医が現場に急行。

応急処置を施し、ウラジオストク市内の動物病院へ移送した後、緊急手術が実施されました。

手術後も獣医らが10日間にわたり手当てを施しましたが、その努力も功を奏せず、このメスは息を引き取ってしまいました。

トラがこのような原因で死んでしまうのは非常に残念で、悲しいと同時に、犯人に対する憤りを覚えます。

その後、WWFロシアのトラ保護を専門とする熟練スタッフが、このメスのトラの検死に協力。

このトラが人に対して危害を加えようとした形跡はなく、密猟者が意図的にトラを狙って銃を撃ったことがわかりました。

そして、こうした情報を基に捜査が行なわれた結果、犯人が逮捕され、事件から2年後の5月30日、1年10か月の保護観察処分と2万9,700ドル相当の罰金という判決が下された、という知らせがありました。

WWFロシアの専門スタッフによれば、この判決は妥当なものということです。

しかし絶滅の危機にあるトラが1頭失われたことに変わりはありません。

こうした犯罪行為によって、失われてゆく絶滅危機種は、決してトラだけではありません。

国境を越えた協力を続けながら、可能な限りその防止に貢献しなければという思いを新たにした出来事でした。

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自然保護室長(森林・野生生物・マーケット・フード・コンサベーションコミュニケーション)、TRAFFICジャパンオフィス代表
川江 心一

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修士課程修了。
小学生の頃に子供向け科学雑誌の熱帯雨林特集に惹きつけられて以来30年間、夢は熱帯雨林保全に携わること。大学では、森林保全と地域住民の生計の両立を研究するため、インドネシアやラオスに長期滞在。前職でアフリカの農業開発などに携わった後、2013年にWWFに入局。WWFでは、長年の夢であった東南アジアの森林保全プロジェクトを担当し、その後持続可能な天然ゴムの生産・利用に関わる企業との対話も実施。2020年より現職。

小学生の頃に科学雑誌で読んだ熱帯雨林に惹きつけられると同時に、森林破壊のニュースを知り「なんとかしなきゃ!」と思う。以来、海外で熱帯林保全の仕事に携わるのが夢でしたが、大学では残念ながら森林学科に入れず・・。その後、紆余曲折を経て、30半ばにして目指す仕事にたどり着きました。今でもプロジェクトのフィールドに出ている時が一番楽しい。

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