守られるべき魚アユモドキ。その未来は?
2014/12/16
草刈です。
国の天然記念物で、環境省の「レッドリスト」では最も絶滅危機の高いランク(CR)に指定された動物。「種の保存法」でも保護が義務付けられている「国内希少野生動植物種」に指定された、世界で日本にしか生息していない動物が、新しいサッカースタジアムの建設によって絶滅しそうだ、と聞いたら、皆さんはどう思われますか?
スタジアムを造るな、とは言わずとも、せめて十分な保護対策を立てるべきだと思われるのではないでしょうか。
そんな動物が京都府にいます。名前はアユモドキ。かつて琵琶湖周辺の水系で広く見られた淡水魚で、河川の増水時に生じる「氾濫原」の自然と、水田環境を巧みに利用している、日本の水田文化を代表する生物です。
しかし近年は、開発や圃場整備によってそうした自然が失われた結果、姿を消してしまいました。
そして、京都府の亀岡盆地にわずかに残されたアユモドキのすみかで今、スタジアムの建設計画が進められようとしています。
私は今年、久しぶりにその場所を訪れました。
前に訪れたのは2005年8月。京都府の依頼を受け、「京都府絶滅のおそれのある野生生物の保全に関する条例(希少種条例)」の策定に参画し、現地を視察した時です。この条例策定の参考になったのが、他ならぬアユモドキの保護に取り組む、亀岡の市民団体の活動でした。
そして今年の8月、アユモドキ保護のシンポジウムに参加するため、再び同じ場所を訪れました。
水田の風景は前と変わりませんでしたが、唯一違ったのは、スタジアムの計画地にされてしまったことです。
「希少種条例」により、アユモドキが府の「指定希少野生生物」に指定されたのは2008年4月。
その精神を、京都府と亀岡市が失わずに貫けるか。
今年決着のつかなかったこのアユモドキ問題は、来年1月、計画が予算化される段階で、一つの結論に達します。