パナソニック株式会社のご支援によるWWFジャパン黄海エコリージョン支援プロジェクトが終了
2015/05/01
2007年9月から7年以上にわたりパナソニック株式会社にご支援いただいた、黄海エコリージョン支援プロジェクトが、2015年3月に無事終了しました。3月26日にはWWFジャパンおよびWWF中国の担当者らが同社を訪問し、活動の成果について報告するとともに、長年のご支援に対する感謝状を贈呈しました。
東アジアを代表する干潟の海を守る
黄海エコリージョンは、中国と朝鮮半島にはさまれた黄海と渤海沿岸に広がる約46万平方キロ(九州・有明海の約270倍の広さ)の海域です。
ここには、黄河と長江という世界有数の大河が流れ込み、ラムサール条約登録湿地を複数含む貴重な干潟が残されています。
また、周辺海域は東アジア最大級の大陸棚を有する豊かな漁場であり、日本へ輸出されるアサリやハマグリの主要な生産地となっているほか、絶滅危惧種を含む多種多様な野生生物の生息地としても知られ、シギ・チドリやクロツラヘラサギなど、国境を越えて旅する渡り鳥の重要な飛来地となっています。
一方で、黄海では近年、急速な経済発展に伴う、埋め立て、過剰漁獲、水質汚染による自然環境の悪化が深刻化しました。その結果、渡り鳥や希少な野生生物の休息地、これらの生きものを支える干潟の底生生物の生息地は、急激に減少、劣化し、その豊かな生物多様性が脅かされ、漁業資源の枯渇も生じています。
始まった「黄海エコリージョン支援プロジェクト」
そこで、WWFジャパンは、2002年から黄海エコリージョンの保全プログラムを開始し、特に優先的に保全すべき23の地域を選定。2006年に「黄海エコリージョン優先保全地域マップ」を作成しました。
この優先保全地域を実際に保全してゆくため、WWFジャパンはWWF中国、およびKIOST(韓国海洋研究院)と協力し、「黄海エコリージョン支援プロジェクト」を開始しました。
本プロジェクトの特徴は、WWFジャパンが主体となり、日本企業であるパナソニック株式会社が必要な資金を全面的に支援し、WWFの国際的なネットワークを活かした3か国連携のプロジェクトだったことです。日本における企業とのパートナーシップを軸として、黄海沿岸の中国・韓国の地元住民の方々、大学・NPO等の関係者らが、多数協力して実施されたプロジェクトでした。
このプロジェクトの成果の一つは、現地の調査研究・保全活動を助成することで、黄海の優先保全地域の各地の環境保全活動の情報を収集すると共に、活動に取り組むグループの能力開発を支援できたことです。
さらに、中国遼寧省の鴨緑江河口域沿岸干潟と韓国全羅南道のムアン干潟の2か所のモデル地域において、地域の主要産業である水産業の持続可能な発展や、エコツーリズムと環境教育の視点からの地域振興を目指す保全活動モデルをそれぞれ実践しました。
この成果は、2014年10月に韓国・平昌(ピョンチャン)で開催された生物多様性条約第12 回締約国会議(COP12)や、政策決定者を対象としたワークショップの際に報告されるなど、様々な機会を通じて発信されています。
そして、プロジェクトの集大成として、各活動の結果を踏まえた活動報告書を中国語、韓国語、英語、日本語の各言語で作成しました。これらは、黄海の保全活動に関わる多様な人たちのもとに届けられました。
社員参加型のパナソニック株式会社の支援
パナソニック株式会社には、資金的なご支援のほか、日本・中国・韓国各国の社員の方々に保全活動や成果報告会等にも積極的にご参加いただきました。
とりわけ社員の方々の参加は、社内外へ黄海エコリージョンの生物多様性の価値を広く教育・普及することにつながり、また現場で日々奮闘しているスタッフにとっても、大きな励ましとなりました。
こうした多角的な取り組みを通じた、7年以上にわたる継続的なご支援のおかげで、本プロジェクトは、黄海エコリージョンという世界的にも貴重な海洋生態系の保全に、大きく寄与するさまざまな成果を挙げることができました。
WWFジャパンは、国際的な協力のもと、今後も黄海エコリージョンにおける持続可能な水産業の推進に努めるとともに、本プロジェクトで実践した生物多様性保全の「黄海モデル」を世界に向けて発信し、展開していきます。
また、この「黄海エコリージョン支援プロジェクト」のように、日本企業とWWFジャパンとのパートナーシップによる世界的に貴重な生物多様性保全の取り組みを、今後も各地で展開していきたいと願っています。