【スクープ】え、トラ?!近年その姿を直接確認できていなかったインドシナトラを、カメラトラップは捉えた!
インドシナトラとは、生息する森の減少などにより絶滅の危機に瀕しているトラの亜種で、現在推定されている個体数は、なんと200頭以下。タイのケーン・クラチャン国立公園では、かつてインドシナトラの姿が確認されていましたが、近年では直接確認されておらず、” ケーン・クラチャン国立公園にはもういない”可能性も指摘されていました。
そんな時、カメラトラップは捉えたのです!
<カメラトラップとは>
謎に包まれた、奥深い森の世界に生きる野生動物たち。 実際には目で見る機会のほとんどない野生動物を調査し、保護してく為に、保護活動の現場では、自動撮影カメラ「カメラトラップ」が活用されています。
これは、赤外線センサー付きのカメラを、文字通り「罠(トラップ)」として森の中に仕掛け、動くものが前を通ると、センサーが反応して、自動でシャッターが下りる仕組みです。
WWFが活動を行っている世界中のフィールドで、この「カメラトラップ」が捉えた、貴重な動物たちの姿をお届けします。
<自動カメラが写した動物たち>
カメラトラップの最大の利点は、調査する人間がその場にいなくても、動物たちの姿を撮影できることです。
それでも、時には一度入れば2週間は戻れないような奥深い森の中で、撮影ポイントを決め、撮影したい動物に合うようカメラの高さやレンズの角度を調整するのは、簡単なことではありません。
カメラトラップ設置の手順
①カメラトラップを仕掛ける場所を決める
対象となるフィールドを網羅的に調査するため、地図上でカメラトラップの設置場所を決めていきます。
②現地にカメラトラップを設置しに行く
森の奥深くに仕掛ける時には、なんと片道1週間もかけ、キャンプをしながら設置場所へ向かう場合も。
③カメラトラップの位置を調整しながら、設置する
実際に動物が現れた際に、ちょうど良く撮影ができるよう、四つん這いになりカメラの位置を調整します。少しシュールな光景。
④一定期間後に現地に戻り、データの取得やバッテリーの交換、カメラトラップの回収を行う
森の奥深くにカメラトラップを仕掛けても、「あ~終わり!」ではありません。データの取得やバッテリーの交換、カメラトラップの回収で設置場所へ戻らなくてはなりません。
⑤データの解析
こうして撮影された野生の動物たち。種名と撮影場所を調査の目的に合わせて使用します。時には、ページの最初にご紹介したインドシナトラのように、驚きの写真が撮影されていることも!
森に生きる動物たちの姿
スマトラサイはカメラトラップでも、最も撮影が難しい動物の1種。過去の撮影成功例も数えるほどしかありません(撮影地:スマトラ)
スマトラ島に生息するトラの亜種スマトラトラ。カメラトラップは構図の調整ができませんが、希にこうした素晴らしいカットが撮影されます(撮影地:スマトラ)
アジアゾウの亜種スマトラゾウ。群での行動が撮影されることもあります。これは仔ゾウの姿をしっかり捉えた一枚(撮影地:スマトラ)
アジアゴールデンキャット。別名テミンクネコ。スマトラではトラ、ウンピョウに次いで大型のネコ科の肉食獣です(撮影地:スマトラ)
夜行性のマレーバク。カメラトラップは夜間や光が弱い状態の時は、画質を落としたモノクロでの撮影に切り替わります(撮影地:スマトラ)
マメジカ。世界最少の有蹄類の1種。夜間撮影ではカメラのフラッシュが光るため、それが動物たちの目に反射します(撮影地:スマトラ)
北東アジアに生息するヒョウの亜種アムールヒョウ。推定個体数はわずか70頭ほど。その大半はカメラトラップによる画像で個体識別されています(撮影地:ロシア沿海地方)
アムールヒョウの母子。母親が3頭の子育てに成功したきわめて希な例が撮影されました(撮影地:ロシア沿海地方)
ヒョウを撮るため設置したビデオトラップに写ったツキノワグマ。日本のツキノワグマと同種ですが、大柄で毛足が長いのがわかります。(撮影地:ロシア沿海地方)
ウンピョウ。樹上が主な生活場所ですが、地面に降りてくることがあります。その機会を捉えた貴重な一枚(撮影地:ブータン)
サンバー。シカの一種でインド亜大陸から東南アジアの島々まで広く分布します。トラなどの重要な獲物でもあります(撮影地:ブータン)
ガウル。ウシ科の野生動物では最大級で、大きな個体では体重1トン、肩のコブの高さは2メートルを超えることもあります(撮影地:ブータン)
あれ、何をしているの? 意外な行動の撮影に成功
地上性の大型鳥、セイラン。オスは見事に羽を広げてメス(手前)に求愛行動をしている様子が、たまたまカメラに捉えられました(撮影地:スマトラ)
マレーグマの親子。熱帯林に生息する唯一のクマで、冬眠をしません。よく木に登りますが、ちょうど仔どもが木によじのぼっています(撮影地:スマトラ)
カメラトラップの前で寝そべり、何かをかじっているトラ。紙か標識か、調査用の備品でしょうか?おもちゃにしています(撮影地:スマトラ)
ブタオザルの群が通りました。一頭は何か美味しそうなものを見つけたようです(撮影地:スマトラ)
親子でしょうか?2頭のトラが水場のカメラの前に現れました。仔トラは水を飲んでいます(撮影地:スマトラ)
これも水を飲みに来たキョン(ホエジカ)。頭しか写っていませんが、伸ばした舌が見えています(撮影地:スマトラ)
これぞ迷カット?こんな写真も撮れました
「百の目を持つ巨人」にちなんだ学名が付けられているセイランの羽。なるほど、たくさんの目玉模様(撮影地:スマトラ)
コレハ、ナンダロウ? ブタオザルが興味津々の様子。カメラを認識しているかもしれません。(撮影地:スマトラ)
なかなか見られない?トラの後頭部。トラの耳の裏側は黒くて白い班があるのですが、それがよくわかります(撮影地:スマトラ)
アジアゾウのお腹。ゾウは大きいので、他の動物の高さにカメラを合わせるとこういう写真になってしまいます(撮影地:スマトラ)
ふんふんふん? 鼻が近づいてきます。ニオイを嗅いでいるのでしょうか? マレーバクの親子のようです(撮影地:スマトラ)
首長竜あらわる!? 進行方向は向かって左。2頭のイタチのようです。尻尾の長さが見事です(撮影地:スマトラ)
自然保護の現場では、こう活用されています
タイのケーン・クラチャン国立公園では・・・
希少なインドシナトラを守っていくために、2018年から国立公園の中心部30か所に60機の自動撮影カメラを仕掛け、本格的な調査を開始しました。
【動画あり】タイ最大の国立公園でトラの調査を開始
スマトラ島では・・・
絶滅が危惧されているスマトラトラやスマトラサイなどの野生動物にとって、重要な生息域がカメラトラップによって明らかになり、「集中保護区」の特定に寄与しました。
160機のカメラを設置!サイやトラの保護に向けた調査活動ボルネオ島では・・・
インドネシア領カリマンタンで、1990年代に絶滅したとされていた“幻のサイ”スマトラサイの生存を、カメラトラップにより20年ぶりに確認。保護のための緊急プロジェクトがスタートしています。
20年ぶりに確認されたスマトラサイ 初の動画撮影に成功!極東ロシアでは・・・
世界にわずか80頭とされるアムールヒョウ。その主要な生息地である極東ロシアで実施された個体数調査において、約8割の個体の識別にカメラトラップが活用されました。
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