日本初!MSC/ASC認証水産物社員食堂で提供開始
2019/11/29
パナソニック株式会社が、2018年3月22日より、同社社員食堂にてMSCおよびASC認証を取得したサステナブル・シーフードの提供を開始します。MSCおよびASC認証は、WWFジャパンが、現時点で唯一持続可能としている水産物の認証で、企業が社員食堂で継続的に提供するのは、日本国内では初めてです。WWFジャパンは、この取組みが、日本国内におけるサステナブル・シーフードの普及推進に大きく貢献するものと歓迎します。
社員食堂へのサステナブル・シーフードの提供始まる
パナソニック株式会社は、2018年3月22日より、MSCおよびASC認証を取得した持続可能な水産物(サステナブル・シーフード)を、同社社員食堂に導入します。
WWFジャパンは、日本国内におけるサステナブル・シーフードの普及を推進し、世界の海の豊かさを守ることに大きく貢献するものとして、この取組みを歓迎します。
サステナブル・シーフードとは
サステナブル・シーフード(持続可能な水産物)とは、海洋環境や水産資源に配慮した漁業および養殖業由来の水産物のこと。MSCおよびASC認証制度は、このような漁業および養殖業を認証し、応援する仕組みです。「定量的・定性的に評価できる基準であること」や「生産現場から食卓までのトレーサビリティが確保されていること」(トレーサビリティについては後ほど詳しい説明があります)などの特徴があります。MSCおよびASC認証は、WWFジャパンが、これらを満たし持続可能性を担保すると認める、現時点で唯一の水産物の認証制度です。
認証を取得した水産物にはエコラベルが付けられます。このエコラベル、MSC認証は、青い魚のチェックマーク、ASC認証は、緑の魚のチェックマークで、ラベルを付けて認証水産物を識別することで、消費者がラベルを目印に認証水産物を選ぶことができるようになっています。この認証ラベルは、欧米を中心に世界中で利用されています。
サプライチェーンを結ぶ―「海の豊かさを守る」ための協働
今回、社員食堂に、サステナブル・シーフードの導入を開始するパナソニック株式会社は、約20年にわたって、WWFジャパンの「海の豊かさを守る活動」を支援してきました。
これは、「有明海干潟保全支援」(2001年~2006年)、「黄海エコリージョン支援」(2007年~2015年)、「南三陸における環境配慮型の養殖業復興活動への支援」(2014年~)です。いずれも水産物のサプライチェーンのスタートとなる生産現場から、海の生態系を守るための活動への支援でした。
サプライチェーンとは
サプライチェーンとは、原材料調達・生産・加工・流通・消費からなる、商品を供給する流れです。チェーンのようにつながっているイメージであることから、「サプライチェーン」と呼ばれます。普段何気なく手にしている商品も、この流れに沿って消費者に届けられています。
サプライチェーンの中で大切な概念として、「トレーサビリティ」というものがあります。これは、追跡可能性とも呼ばれ、サプライチェーンの各段階の追跡が可能なことを指します。サステナブル・シーフードであることを保証するためには、生産現場から消費者が手にとる場面にいたるまでのトレーサビリティの確立が不可欠です。生産現場から消費まで追跡可能であることは、食の安全確保にも役立ちます。
MSCおよびASC認証制度は、漁業認証とCoC(Chain of Custody)認証の2つからなる仕組みを持っています。CoC認証は、加工・流通段階で、認証水産物がそれ以外の水産物と混ざらないことを保証するので、トレーサビリティを確保する上で不可欠な仕組みです。
サプライチェーンのゴール、消費の変革に向けて
パナソニック株式会社は、これまでWWFジャパンと共に、水産物の生産現場となる海の環境保全に取り組んできました。今回の取り組みでは、サプライチェーンのゴールである「消費」に着目し、社員食堂にサステナブル・シーフードを導入することで、従業員へのサステナブル・シーフードの普及を目指しています。
社員食堂での日々の食事を通じてサステナブル・シーフードのことを知り、海のエコラベルを目印に水産物を購入する消費者が増えることが期待されます。これは、持続可能な漁業や責任ある養殖業を応援し、漁業者や養殖業者がMSCおよびASC認証を取得する動機にもつながります。
社員食堂への継続導入の意義と期待
パナソニック株式会社が目指す、2020年までに国内全事業所の社員食堂への導入が実現されれば、最大約10万5千人の同社国内従業員を対象に、サステナブル・シーフードが提供され、またそのコンセプトについて伝えることが可能となります。
社員食堂に学校や病院等を加えた集団給食市場の規模は年間3.4兆円とされます*1。
今回の同社の取り組みがきっかけとなり、例えば、日本における1,000人以上の従業員を有する企業2,400社の社員食堂の1/3に認証水産物が導入されたとすると、約180万人(日本の企業従業員約1,500万人の12%に相当*2*3)に、サステナブル・シーフードが提供され、そのコンセプトを伝えることが可能となります。
従業員が社員食堂でサステナブル・シーフードについて知り、家庭でも伝えるようになれば、いっそうのサステナブル・シーフードの認知拡大と普及が期待できるでしょう。
さらにWWFは、パナソニック株式会社をはじめとする従業員食堂の水産物調達において、MSCおよびASC認証の導入を含めた持続可能な方針を設定し、水産物調達全体を持続可能に転換していくことを期待します。
調達を持続可能に転換するためには、MSCおよびASC認証を取得した持続可能な水産物の積極的導入に加え、資源や環境に悪影響を与えている漁業・養殖業由来の水産物を取り除くこともあわせて必要であるからです。
東京2020オリンピック・パラリンピック開催年、2020年を見据えて
パナソニック株式会社がスポンサーとなる東京2020オリンピック・パラリンピックでも、水産物を含め、持続可能性に配慮した食材調達がテーマとなっています。水産物については、「持続可能性に配慮した調達コード」、「持続可能性に配慮した水産物の調達基準」が、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下、オリパラ委員会)より出されています。
2012年のロンドンオリンピック・パラリンピックでは、大会を契機にイギリス全土にサステナブル・シーフード調達の動きが広まりました。スポンサー企業のコカ・コーラ等がケータリングとしてサステナブル・シーフードを採用する一方、政府・公営施設、学校等が率先して取り組み、イギリス全土の公営施設の1/3にサステナブル・シーフードが導入されました。結果として年間2億食ものサステナブル・シーフードへの需要が生まれています*4。
東京大会の開催年である2020年に向けて、ワールドワイドパートナー(TOP:The Olympic Partner)である同社が先頭に立ち、他の企業や政府、学校等にこの動きが広がれば、日本でも一気にサステナブル・シーフードの導入が拡大していく可能性があります。
今回の同社の取組みを通じて、社員食堂、学校や病院を含む集団給食市場に同様の動きが波及すれば、大きな効果が見込まれます。この動きを支援し、強化すれば、その後に続く、社会全体の消費行動の変革へとつながっていくことが期待されるからです。
WWFジャパンとしても、この動きを後押しし、大会を通じて「サステナブル・シーフードの導入、消費、普及」が、「レガシー」として、大会が終わった後も継承されていくために、さらなる支援を続けていきます。
『第1回ジャパン・サステナブルシーフード・アワード』イニシアチブ部門のチャンピオンに
パナソニック株式会社のこの取組みが、2019年11月7日開催の東京サステナブルシーフード・シンポジウム2019「第1回ジャパン・サステナブルシーフード・アワード表彰式」において、イニシアチブ部門のチャンピオンに選ばれました。
『ジャパン・サステナブルシーフード・アワード』は、日本でサステナブル・シーフードの動きを加速させることを目的に、その年に功績を残した優れた取り組みを表彰するもの。「イニシアティブ・アワード」と「コラボレーション・アワード」の二つからなり、それぞれ画期的な活動と複数組織の協働により、業界に大きなインパクトを与えた取り組みに賞が贈られます。
今回の受賞では、MSCおよびASC認証を取得した水産物を日本で初めて社員食堂へ継続的に導入した点や、給食サービス業界に、認証水産物の提供をするための流れを作った点が高く評価されました。また、自社のみならず他の企業への導入の拡大を支援し、サステナブル・シーフードの消費面での活動の広がりへの貢献も評価されました。
出典
- *1 一般社団法人 日本フードサービス協会 平成28年外食産業市場規模推計
- *2 経済産業省 平成29年企業活動基本調査 より、従業員数1,000人以上の企業の従業員数は921万人。
- *3 厚生労働省 平成19年就労条件総合調査の概況より、従業員1,000人以上の企業の社員食堂導入率を60.0%と仮定
- *4 出所:(株)シーフードレガシー