伊藤忠グループのご支援によるWWFジャパン北ウルセガマ森林再生プロジェクトの森林再生活動が完了
2016/03/28
伊藤忠グループにご支援いただいた2009年4月から約7年にわたる、ボルネオ島北ウルセガマ森林再生プロジェクトの森林再生活動が、2016年1月に無事完了しました。2016年2月19日にはWWFジャパンおよびWWFマレーシアの担当者らが同社を訪問し、活動の成果について報告するとともに、長年のご支援に対する感謝状を贈呈しました。
絶滅危惧種ボルネオオランウータンの生息地の再生
ボルネオ島は、赤道直下に位置する東南アジアの島。
日本の約2倍の面積を持つ地球上で3番目に大きいこの島には、世界でも最大規模かつ非常に生物多様性の豊かな熱帯林が現存します。
ここは、多種多様な野生動植物の生息地であり、ボルネオオランウータンやスマトラサイなどの絶滅危惧種にとっても貴重な生息地となっています。
しかし、ボルネオ島では、木材生産のための過剰な木材伐採や、無計画なアブラヤシ農園(プランテーション)の開拓、さらに大規模な火災によって森林が消失し分断され、生物多様性の深刻な劣化が進行。ボルネオオランウータンなど、そこに生きる希少な野生生物も絶滅の危機に脅かされています。
今回の森林再生プロジェクトの活動地となったボルネオ島サバ州(マレーシア領)の北ウルセガマでも、環境への配慮を欠いた過剰な木材伐採と、1997年から1998年に生じた大規模な火災の影響で森林が著しく失われ、天然の更新に任せるだけでは、森の再生が望めない地域となってしまいました。
その一方、2008年に実施したWWFの調査等によって、同地域には非常に高い密度でボルネオオランウータンが生息していることが明らかになり、その保護が求められてきました。
地上数十メートルの熱帯林の樹上をすみかとする、この大型霊長類を長期的に保護するためには、植林を中心とした人為的な森林再生を行なう必要があります。
始まった「北ウルセガマ森林再生プロジェクト」
そこで、2007年に、WWFマレーシア、サバ州の政府機関であるサバ州森林局、そしてその他二つの地元の財団は、北ウルセガマにおいて12,000haに及ぶ広大な森林を再生させるプロジェクトを開始しました。
その一環として、WWFジャパンも2009年からWWFマレーシアとともに、伊藤忠商事株式会社及び伊藤忠グループ会社からの資金支援を受け、全域の内967haで森林再生活動をスタート。
世界中から多数の企業、団体、各国WWFの国際的なネットワークの理解と支援を受け、WWFとしては総計2,400haの大規模なプロジェクトを実施することになりました。
そして2016年まで継続された活動の結果、北ウルセガマでは森林の被覆率が回復し、ボルネオオランウータンの生息環境の向上についても成果が出ていることが、WWFの調査でも明らかになってきました。
さらに、プロジェクト開始以前には商業目的の伐採が認められていた北ウルセガマの森林は、サバ州政府にその重要性を認められ、2012年には法律に基づいた完全な森林保護区となりブキ・ピトン森林保護区という新たな名前を与えられ、ボルネオオランウータンが生息する貴重な森林として保護されていくことが決まりました。
これは、WWFなどの団体が同地で展開してきた「北ウルセガマ森林再生プロジェクト」が後押しとなって導いた成果でした。
これまでの活動の成果は、地元メディアでも多数報道されたほか、サバ州森林局からも高く評価されるなど、森の再生とボルネオオランウータンの保全に向けた期待を担う取り組みとして認知されつつあります。
WWFでは2016年2月、一連の活動結果をまとめた活動報告書を作成。成果はプロジェクトに関わった多くの人たちのもとに届けられました。
社員参加型の伊藤忠商事株式会社及び伊藤忠グループ会社の支援
今回のプロジェクトの遂行にあたり、伊藤忠商事株式会社及び伊藤忠グループ会社には、資金的なご支援のほか、世界各国の社員の方々にも保全活動等に積極的にご参加いただくなど、大きく貢献していただきました。
とりわけ社員の方々の参加は、現場で森林再生のため日々奮闘しているスタッフにとって、大きな励ましとなったほか、社内報やウェブでの情報発信を通して、社内外に対しボルネオ島の生物多様性の価値や、現在直面している危機を広く普及・発信してゆくことにもつながりました。
こうした約7年間にわたる多角的な取り組みは、ボルネオ島の熱帯雨林という世界的に貴重な森林生態系の保全に、大きく寄与することになりました。
WWFジャパンは、この「北ウルセガマ森林再生プロジェクト」を一つの取り組み事例として、国際的な協力と日本企業とのパートナーシップのもと、今後もボルネオ島をふくめた国際的に貴重な生物多様性の保全活動を展開していきます。