地球環境の保全における企業の可能性


今、地球環境の保全において、企業の果たすべき役割が問われています。その役割とは、従来の単なる慈善事業を思わせるような、他者のための貢献を目指すものというだけではありません。今や、地球の環境問題、世界の生物多様性の劣化は、資源や経済といった、企業の事業そのもののゆくえにも大きく関係する、深刻な課題です。企業には、社会の一ステークホルダーとして、こうした問題を解決するための参画と取り組みが求められているのです。

世界が企業に寄せる期待

2012年1月、国連は「私達が望む未来」通称「ゼロドラフト」と呼ばれる文書を公開しました。これは、2012年6月にブラジルで開催された持続可能な開発会議「リオ+20」において、各国首脳による採択を目指し、作成されたものです。

この中には、新たな政治的コミットメントや、持続可能な発展と貧困の撲滅としてのグリーンエコノミー、持続可能な発展のための制度・実行のための枠組みが盛り込まれており、これからの持続可能な未来を実現するための方向を示したものとなっています。

また、ここには、企業に対して求める行動についても記述されています。
まず、企業(ビジネスアンドインダストリー)が、生物多様性の保全と持続可能な未来を築いてゆく上で、欠かせない参加者であること。特に、グリーンエコノミーの実現に向け、リーダーシップを発揮すべき存在であることを呼びかけています。

そのために、各企業や業界が持つ、経験や知識などのノウハウを共有し、また企業以外のさまざまなステークホルダーとも協力することも促しており、企業が今後、より一層大きな役割を果たすことにたいする、強い期待が表現されています。

(C) WWF/Firtz Polking

グリーンエコノミーの時代に向けて

しかし、こうした方向性と切実な希望が示される一方で、世界の実際の企業活動現場の多くにおいては、持続可能とはいえない資源の過剰な利用と、自然環境の破壊が続いています。

また、グリーンエコノミーの実現には、主に、食料と水とエネルギーの3分野での取り組みが重要となりますが、こうした分野においても、不適切な管理と規制が続いており、このことは、これまで以上に頻繁かつ深刻な食料・水・エネルギー危機を引き起こすと予測されています。

それは地域や、地球規模での安定をも損ねるものであり、もちろん企業活動の根幹にも関わりうる、きわめて大きな問題です。

地球全体の資源利用の現状に目を向けてみても、1970年代からは、地球本来が持つ生産力を大幅に上回る消費が続いており、このままでは、将来世代に対して負の遺産をのこすことになるでしょう(WWF Living Planet Report「生きている地球レポート」を参照)。

こうした問題を解決してゆくために、WWFジャパンは、すでにいくつかの企業と協働し、「地球一個分の企業経営」に向けた取り組みを始めています。

これは、地球環境と生物多様性の保全をはかりながら、資源の利用を持続可能なレベルの範囲内にとどめ、企業活動を展開・発展させてゆくことをめざす試みです。

(C)WWF-Canon/Kevin SCHAFER

そのための基本的な取り組みとしては、たとえば、企業による持続可能な林産物・水産物の調達方針や、温室効果ガス削減の方針の策定があります。さらに、こうした方針に基づき、具体的かつ野心的な改善目標の設定と、行動計画の策定にも協力しています。

また、持続可能性を客観的な立場から確認し、その透明性を高めるため、国際的に信頼されている第三者認証制度を立ち上げ、林産物、水産物、養殖水産物、パーム油などの産品の調達に積極的に導入するよう、企業に対する働きかけも行なっています。

こうした取り組みを通じて、日本がグリーンエコノミー実現をリードし、世界の持続可能性向上に大きく貢献してゆくのは、まさにこれからです。

WWFジャパンとしても、日本企業による「地球一個分の企業経営」の先進的な実践事例を共有する機会を創造してゆきながら、ビジネス界が環境保全に向けた取り組みを拡大させていくことを目指してゆきます。

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