多様な地球の自然環境 代表的な植生と貴重な生きもの
2010/07/15
地球上の自然には、生物が豊かな熱帯林やサンゴ礁はもちろんのこと、砂漠や南極の海など、単に生物種の多さだけではその貴重さが判断できない環境が、数多く含まれています。環境保全に取り組もうとする時、これらの自然の多様性や違い、特徴を、きちんと踏まえた上で、活動を行なう必要があります。
生物の多様性とは、ただ生きものの数や種数が多ければいい、というものではありません。
多様性の価値は、さまざまな景観がこの地球上に存在していること、そのものにあるのです。
未来の地球の上で、多様な生命が生き残るためには、この多様な生態系と景観が欠かせないのです。
地域や気候によって変化する自然
地球上には、さまざまな生命が、気候や地形などの条件に応じて、多様な生態系を形作っています。
例えば、太陽から多くの光を受ける暖かい地域では、種が多様に進化し、さまざまな生物が息づいているのを目にすることができます。
熱帯林やサンゴ礁といった、熱帯の自然がその代表です。
一方、北極や南極に近い海のような、気温が低く、厳しい環境では、見られる生物の種類が限られており、多様性が低くなっています。
しかし、これらの環境では、それぞれ種の数は少なくとも、個体の数が多く、結果的にたくさんの生命が息づいている、という特徴があります。
地球上で見られるさまざまな自然
代表的な地球上の植生
大きく地球の植生を色分けすると、下の地図のようになります。
もちろん、詳しく見てゆくと、その地域の標高や気候によって、限られた範囲の中にも、多様な景観が存在することが分かるでしょう。これらの植生の特徴や多様性は、それぞれの場所に生息・生育する、動植物の種類、数などによっても現わされています。
山地
標高が高く、年間を通じて、低温や強風、乾燥にさらされる厳しい環境です。丈の低い植物や、塊状になる植物が生育します。
ツンドラ
一年を通して寒冷で、土壌に水分が多く、地下に永久凍土層があるため、樹木が深く根を張れません。草本や、地面にへばりつくような低い植物が大地を覆います。
亜寒帯林
北半球のみに見られる森林の植生です。ツンドラの南に広がり、低温の季節が長く、豪雪地帯も広く含まれます。主要な樹種は、針葉樹です。
温帯林
年間を通して一定の降雨がある地域には、落葉広葉樹林。雨量の多い地域には、常緑針葉樹林や照葉樹林。比較的寒冷な地域には常緑針葉樹林と、多様な植物が見られます。
温帯草原
温帯の中で気候が乾燥しており、背の高い樹木による森林が形成されにくい地帯に、広く見られます。イネ科の植物が中心となった草原の環境です。
熱帯林
赤道周辺に発達し、高温多湿の地域に見られます。高さ40m~15mにおよぶ、樹上を中心とした生態系が広がり、生存する野生生物の種数の多様さは、地球上でも屈指の豊かさを誇ります。
サバンナ
熱帯に発達する草原の環境で、樹木が点在します。年間を通じて高温ですが、夏の一時期に降雨がある以外は乾燥しており、雨期と乾期がはっきりと分かれています。
低木林
夏は高温で乾燥しており、冬は温暖で湿潤。干ばつに強い、硬い小形の葉を持つ低木が多く育ちます。主に、地中海を中心とした地域に、広く見られる植生です。
砂漠
非常に乾燥した地域で、一部の例外を除いて高温の地域に見られます。代表的な植物は、サボテンや少ない雨を待って発芽する一年生植物(一年で枯死する植物)など。
- ※ここでいう「砂漠」には、現在広がりつつある砂漠化した地域は含まれません。砂漠化とは「乾燥、半乾燥、ならびに乾燥半湿潤地域においてみられる、主に不適切な人為インパクトによって生じる土地荒廃である」(UNEP,1911)と定義されており、長い目の自然の営みによって成立した砂漠とは区別されるべきものです。
海洋
気候、海流、陸からの距離、深さなどにより、海には海の多様な生態系が存在しています。
限られた地域に息づく貴重な生物たち
高山帯や砂漠のように、気温が極端に低かったり、高かったり、また乾燥していたりする地域では、多様性、個体の数、いずれも少ないケースも見られます。
これらは、その限られた地域でしか見ることの出来ない、貴重な生態系を形作っており、その場所にしか生息していない、珍しい固有種も多く確認されています。
このような環境に適応した特定の生物の中には、絶滅の危機に瀕している種も、少なくありません。これらの生物たちを守っていくためには、その生物が生きる生態系そのものを守る必要があります。