象牙の違法輸出阻止と国内取引の停止を日本政府に要望
2018/01/11
高値で売買される象牙を狙われ、年間2万頭が密猟の犠牲になっているといわれるアフリカゾウ。象牙は、ワシントン条約で国際取引が禁じられていますが、今も密輸が絶えません。そうした中、世界各地で象牙の国内取引を自粛、停止する動きが強まっています。2017年12月31日には、世界最大の違法象牙の輸入国である中国が、自国内での取引を停止。こうした国際的な情勢の中、WWFジャパンは、2017年に実施した日本の象牙の国内市場と違法取引の実態調査をふまえ、日本政府に対し、象牙の違法輸出の阻止に向けた緊急措置の実施と、国内での象牙取引の停止を要望しました。
象牙の厳格な違法輸出の阻止と国内取引の停止を求めて
WWFジャパンは、2018年1月10日~12日、環境省、経済産業省、財務省、外務省の各大臣に対し、下記の2点を求め、要望書を提出しました。
I. 緊急な措置をもって象牙の違法輸出を阻止すること
II. 厳格に管理された狭い例外を除く国内取引を停止すること
この要望の根拠となっているのは、WWFジャパンの野生生物取引調査部門トラフィックが、2017年5月~9月にかけて日本国内の骨董市やオークション、古物買取業者などの古物市場と観光エリアを対象に行なった、象牙取引の実態調査の結果です。
この調査では、各販売店などを拠点としたルートで、外国人客やプロのバイヤーにより、日本から海外に象牙製品を持ちだす違法な輸出が横行している実態が明らかになりました。
また、明らかに外国人客をターゲットにした象牙製品の製造や販売が日本国内で行なわれていることも確認。
販売者側も違法な輸出につながることを知りつつ、購入した象牙を「国外へ持ち出すことが可能」であると、客に伝えていたことなどが判明しました。
象牙の主な仕向け先となっているのは中国です。
2011年以降、日本から違法に輸出されたことが確認された2.4トン以上の象牙のうち、95%が中国で押収されています。
さらに調査の結果、日本の国内規制と法の執行状況が、こうした実態を取り締まる上で、極めて不十分な水準にあることも明らかになりました。
一方、中国では、2017年12月31日をもって、自国内の象牙製品の製造・販売・取引を原則禁止する政策を実施。
しかし、WWFとトラフィックによる消費者調査(2017年6月から11月にかけて15の都市で実施)の結果によれば、取引停止の政策を認識していたのはわずか19%で、政策について知らされた後「思い当たる」と回答した人も46%にとどまるなど、政策が十分認知され、徹底されるまでは時間を要するものと考えられます。
こうした状況の中、日本をはじめ諸外国が中国に向けた違法な象牙輸出の温床となる事態は避けねばなりません。
日本では、今後、東京オリンピック・パラリンピックに向けた外国人旅行者の更なる増加に伴い、違法輸出の問題が一層深刻化することが懸念されます。
WWFジャパンは、日本政府が早急にこの問題に対処し、ワシントン条約の締約国としての責務を果たすよう、強く求めています。