【抄訳】一部報道について
2025/02/21
注)本資料は、WWF Internationalが2025年2月19日に公開した「WWF response to an article published by The Guardian on 15 February 2025」の日本語抄訳版であり、当資料の内容および解釈については原文(英語)が優先されます。原文は以下URLからご確認ください。
https://wwf.panda.org/?13500441/Guardian-response-polar-bears
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2025年2月15日にThe Guardian紙において、WWFについて言及した記事が掲載されました。WWFは、ホッキョクグマの毛皮取引を支援、促進するためのロビー活動や活動は一切行なっておらず、同紙に記事内容の訂正を求めています。
狩猟は複雑な問題であり、しばしば先住民や地域社会の権利と関連しているため、WWFは全ての事例において狩猟に反対しているわけではありません。ホッキョクグマの毛皮の取引について、支援やロビー活動、促進することとは異なります。
WWFは北極圏を含む全ての地域における、持続可能ではない狩猟や違法な狩猟に反対しています。ホッキョクグマにとって最大の脅威は、生息地の喪失と気候変動です。WWFはこれらの脅威を解決するための活動を続けています。
詳細お問い合わせ先:news@wwfint.org
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詳細情報
1. WWFがホッキョクグマの毛皮取引を支援するために活動しているというのは本当ですか?
いいえ、全く違います。WWFは、科学的知見と先住民の権利の尊重に基づく活動を行なっており、今回のThe Guardian紙の記事では誤った報道がなされています。WWFは今回の誤った報道に対して訂正を求めています。
2. ドナーからの資金は、ホッキョクグマの保護にどのように使われていますか?
WWFの資金は、ホッキョクグマの個体群の科学的モニタリングや、環境DNAのような非侵入型の追跡方法の開発、気候変動がホッキョクグマに与える影響に関する研究の支援、ホッキョクグマの生息地の保護のためのアドボカシー活動などにあてられています。これらの活動は、ホッキョクグマを守るために不可欠です。
3. WWFは先住民コミュニティとどのようにホッキョクグマの保護に取り組んでいるのですか?
WWFが北極圏のコミュニティと結んで行なっている活動は、何世代にもわたって持続的に行なわれてきた伝統的な文化的慣習に対する深い敬意と信頼に根差しています。WWFは、伝統的に彼らの文化の一部である動物を管理し、利用する権利を含め、先住民族と地域コミュニティの権利を、関連する法的枠組みと科学的助言の範囲内で尊重します。
北極圏の海氷が減少するにつれて、ホッキョクグマが北極圏のコミュニティに入り込むことが増え、ホッキョクグマと人間の危険な遭遇が頻発するようになりました。その結果、ホッキョクグマが人の財産を傷つけたり、人を襲ったり、怪我や死亡事故を引き起こしたり、また人が生命や財産を守るためにホッキョクグマを殺したりすることもあります。
WWFは、ホッキョクグマのパトロールや、ホッキョクグマとの共存の在り方についての教育機会創出など、さまざまなかたちで地域社会と協力しています。また、カナダ北極圏におけるホッキョクグマの生息地のモニタリングなど、先住民コミュニティが主導する北極圏の個体数モニタリングのプロジェクトも支援しています。
4. WWFの見解をさらに説明していただけますか?
WWFの見解は、利用可能な最新の科学とデータに基づいており、ホッキョクグマが直面している最大の脅威は、気候変動と生息地の損失です。
北極圏は世界平均の4倍近い速さで温暖化が進み、海氷が溶け出しています。海氷の消失は、北極グマの主な獲物であるアザラシの生息を脅かします。ホッキョクグマの生存率を向上させるために最も重要なのは、温室効果ガス排出削減とホッキョクグマの生息地の保全であり、WWFはホッキョクグマの生息地の保全に力を注いでいます。
WWFは、ワシントン条約(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)による国際的な規制や各国政府による規制に沿った持続可能なものである限り、一部の限られた地域ではホッキョクグマの狩猟が北極圏のコミュニティにとって不可欠な収入源となりうることを認識しています。
しかし、先住民がホッキョクグマを狩猟するのは、主に経済的な理由ではなく、衣食住を含む文化的・栄養的な理由であり、代替収入の選択肢を開発することは、コミュニティのニーズに置き換えられるものではありません。WWFは、ホッキョクグマの長期的な保護のために、科学的根拠に基づいて活動を行なうとともに、先住民の文化の一部として動物をどのように管理・利用するかについては、先住民コミュニティの権利を尊重しています。
5. ホッキョクグマの保護に関して、WWFはワシントン条約にどのように取り組んでいますか?
ワシントン条約では、国際取引の規制対象となる動植物を、「附属書(Appendix)」に掲載しています。取引状況と生息状況によって、附属書にはⅠ~Ⅲの三つのレベルが設定されており、それぞれ規制の内容が定められています。
附属書Ⅰに掲載された種は、すでに絶滅のおそれがあり、一番厳しい「取引禁止」いう規制の対象となります。ホッキョクグマが掲載されている附属書Ⅱは、種の取引を行なっている国が、その取引と種の個体数を監視し、持続可能であることを確認することを目的としています。WWFは、利用可能な最新の科学とデータに基づき、附属書Ⅱへのホッキョクグマの掲載に同意します。
また、ホッキョクグマの附属書Ⅰへの掲載は、上述のとおり、現在ホッキョクグマにとって保全上の脅威となっていないカナダでのホッキョクグマの狩猟を妨げるものではなく、先住民の権利を侵害するものです。WWFの見解は、ワシントン条約事務局の専門家や、IUCN、TRAFFICを含む環境保全団体の見解と一致しています(参考情報)。