報告書『環境報告に見る企業の生物多様性取り組み』


2015年2月に発表した、企業活動が生物多様性に与える影響について、企業の取り組みを独自の視点により表彰する「ビジネスと生物多様性 勝手にアワード」の元となった調査報告書『環境報告に見る企業の生物多様性取り組み〜事業活動での位置づけと自然資源利用での考慮〜』を発表しました。これは、金融庁が発表したコーポレートガバナンス・コードの対象である一部上場企業の環境情報開示状況を示した初めての発行物となります。

企業による「生物多様性保全」の現状

2010年に名古屋で開催された「第10回生物多様性条約(CBD)締約国会議」をきっかけとして、日本の企業の間でも生物多様性の保全や配慮が独立した取り組みテーマとして語られるようになりましたが、まだ多くの企業では生物多様性は自社事業が直接関係する環境問題とは位置づけられていないことがこの調査で明らかになりました。

調査対象は、東京証券取引所第一部上場企業(内国株)計1,818社。

WWF独自の、9つの評価項目と4つの評価観点から分析を実施しました。その結果、対象期間中に入手可能だった報告書は4割の701本。

発行率は製造業では全般的に高く5割を超える一方、情報通信やサービス業・飲食業などの非製造業では1割程度にとどまっており、環境情報開示の重要性自体が必ずしも認識されていないことが明らかになりました。

WWFでは、生物多様性に富む世界のさまざまな自然地域が、私たちの衣食住の原材料を確保するために状況が大きく変化したり、自然の生態系が失われてしまい、 地球の生物多様性が悪化の一途をたどっていることを「生きている地球レポート(Living Planet Report 略称LPR)」の中で指摘しつづけてきました。

2014年9月に発表した最新版では、1970年から2010年までの40年間に、「生きている地球指数 (LPI)」は52%も低下しています。

この報告書では、「生物多様性への言及状況」「原材料調達方針の策定状況」「認証制度への言及状況」の視点で、2011年にWWFが実施した環境報告書発行状況に関する予備調査と比較しながら、具体的な企業名約260社をあげて一覧にまとめています。

また、生物多様性方針に対する体系的な進め方については、経営方針や環境目標への位置づけと実際の活動とはつながりが無く、生物多様性保全への取り組みは単発的・短期的なものが多いことも判明しました。

WWFは、世界の生物多様性を保全し自然環境の悪化を食い止めるためには、企業の事業活動に位置付けられた対策が必須と考えます。

環境情報開示全般を含め、今後の取り組みの検討や企業評価の材料として、広く活用してもらえるよう、企業・金融機関に働きかけていきます。

詳細はこちらの資料(PDF)をご参照ください。

報告書

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