水産資源の持続可能な利用とMSCについて
水産資源の持続可能な利用とMSCについて
近年の水産資源をめぐる情勢
近年、水産資源の過剰利用は国際的に早急な対応が必要な課題として認識されています。FAO(国連食糧農業機関)が発表しているデータでも、28%の水産資源が枯渇、または深刻な乱獲状態にあり、また50%強が現状以上の増産が困難であり、適切な管理体制の構築が必要、とされています。
世界の生産状況を見ても、1990年代以降、漁業生産力が伸びているにも関わらず、生産量自体は頭打ちとなっています。これを補う形で世界的に台頭してきているのが養殖業で、世界の水産物供給に養殖水産物が締める割合は増加傾向にあります。
特に資源状況が深刻なものとしては、世界の市場での利用が多いマグロ類、白身類、エビ類となっていますが、養殖業の伸張に伴い、飼料原料となる魚種の大量漁獲も新たな問題となっています。
一方、グローバルな市場の動向を見ると、これまでの欧米や日本といった水産物消費国に加え、経済発展を遂げつつある新興国での消費量も増えており、世界的な資源の争奪が始まっています。
こうした情勢のなか、水産物消費大国である日本市場がこれまでどおりのやり方で持続的な水産物調達を目指すことは年々難しくなってきています。
天然水産資源
水産資源とは本来、適切な管理手法に基づき、国際的なルールを遵守すれば、持続的に利用可能な自律更新性の資源です。
しかし、世界の水産物市場の伸展や漁業生産力の増強は、こうした管理体制の確立や遵守状況のモニタリング体制が構築される猶予を与えないほどに日々の生産が行われています。
さらに、管理体制があっても、ルールを遵守しない違法・無報告(IUU)な生産も横行しており、こうした水産物をより分けて調達するためには、公的なシステムに加え、企業による実効性のあるトレーサビリティを確立することも課題です。
グローバル化が著しく進んだ現状では、持続可能な調達を目指すうえで、より企業も主体的に持続可能な水産物市場の構築を目指した取り組みが重要となってきています。
養殖水産物
養殖水産物は、高品質かつ大量の水産物を生産し、多くの人々に動物性タンパク質を供給する有望な産業です。
しかし養殖業の急激な発展は、同時に、保全価値の高い海域や沿岸域の開発、マングローブ林の減少、水質汚染、養殖魚の自然界への流出、餌魚の乱獲などを引き起こしてきました。養殖業を取り巻く環境的な問題は、さまざまな角度から、指摘されるようになっています。
その結果、安定した生産体制と持続可能な経営が長期的に実現できるような水産養殖業を目指し、国際的な規模で関係者の問題意識共有や持続可能な水産養殖業に向けた生産規格の検討が急務となっています。
- ASC(水産養殖管理協議会)の認証取得
関連リンク
MSC(海洋管理協議会)について
「MSC(Marine Stewardship Council、海洋管理協議会)」のマークはいつまでも魚を食べ続けることができるように、海洋の自然環境や水産資源を守って獲られた水産物(シーフード)に与えられる認証エコラベルです。WWFは、国際的な海洋保全活動の一環として、MSC認証制度の普及をサポートしています。
ASC(水産養殖管理協議会)について
「海のエコラベル」として知られるMSCが、天然の水産物について行なっている認証と同様に、養殖による水産物を認証する仕組みがあります。これが「ASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)」の認証制度です。
持続可能な漁業の推進
魚や貝などの水産物は、獲り尽くしたりしなければ、いつまでもその恵みを受けることが出来ます。しかし、利用の仕方をひとたび誤れば、その自然の恵みも失われてしまいます。海の環境と私たちの食を守る上で、今、水産資源の「持続可能な利用」が大きなテーマになっています。WWFではMSCの認証制度の普及などを通じた、適切な資源管理の促進に取り組んでいます。
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