野生生物取引の問題とCITES、フェアワイルドについて


企業による資源の持続可能な利用

野生生物取引の問題とCITES、フェアワイルドについて

ワシントン条約

ワシントン条約(正式名:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約:CITES)は、野生の動植物種が国際取引により脅かされることのないよう、国と国との間でおこなわれる国際取引を規制・監視する国際条約です。2012年2月現在、175カ国が加盟しています。

ワシントン条約は野生の動物、植物の個体にくわえ、その部分や派生物なども対象としています。たとえばワニ・トカゲ・ヘビなど爬虫類の皮革、生きた動物、漢方薬、毛皮、化粧品の原料、象牙やサンゴなどの装飾品、香料、木材、水産物(魚や貝類など)など、生活の中で利用する多種多様な生物資源の中には、この条約の対象となっているものがあります。

ワシントン条約の対象種は、条約の「附属書」に、種の学名(ラテン名)で掲載されます。種の生息状況や取引状況の評価のうえ、3つの附属書のいずれかに掲載されます。最も規制がきびしく国際取引を原則禁止している附属書I、国際取引には原産国政府の許可書や原産地証明書が必要となる附属書II、IIIがあります。

附属書I、IIは2年半に一度の締約国会議(CoP)のたびに更新されるほか、附属書IIIはある国が自国に生息する種の保護のため他国の協力を必要とする際、随時改正されるので注意が必要です。

原料の供給などを海外からの輸入に頼ることの多い日本の市場では、さまざまなワシントン条約対象の種が取引されています。企業として条約対象種を扱う場合に、条約や日本の国内法、また原産国側の法律で定められた手続きを遵守することが最低限必要です。

さらに、今はこの条約に掲載されていなくても、過剰な取引・利用をつづければ将来的にこの条約が保護しなければならないことになるかもしれません。このようなことにならないよう、野生動植物の持続可能な利用への配慮が求められます。

フェアワイルド

薬や香料、食品、染料、化粧品など、さまざまな製品の原料として、自然の植物に由来した天然の成分が利用されています。このように薬用・アロマティック植物として利用されている植物は、世界に5万~7万種あるといわれていますが、その多くは野生から採集され利用されています。その一方で、利用されるそのうちの1万5,000種が絶滅の危機に瀕していると見積もられています。

発展途上国には、その8割の人々が一次医療を野生の薬用植物に依存している国があります。また植物の採集で生計を立てている地域もあり、貴重な現金収入としても野生植物は人々の生活に欠かせないものです。これらの植物を持続可能な形で「使い続ける」ことができるよう、その仕組みのひとつとしてできたのがフェアワイルドです。

フェアワイルドは、野生植物の持続可能な採集と利用のための基準です。野生の植物の保全を目的としたエコロジカル(生態学的)な要素、フェアトレード(途上国の人々の権利と利益を尊重して行なわれる取引)や地域への支援などソーシャル(社会的)な要素、そしてビジネスの継続というエコノミカル(経済的)な要素という3つを包含した、世界で初めての野生の植物利用に対する国際的な基準です。

フェアワイルド基準を満たした植物製品に対する認証制度も準備しており、フェアワイルドのオリジナルの認証マークが付けられた製品が、すでに欧米などで流通し始めています。フェアワイルドは、認証が開始された2008年から世界的に徐々に広がりはじめ、2010年には13の国で23の野生の植物採集を行なっている企業が、認証の取得に動いています。

トラフィックは日本の産業界においてもフェアワイルド基準、認証の採用が広がるよう活動しています。

関連リンク

ワシントン条約について

ワシントン条約は、人間による過剰な取引によって、絶滅するおそれのある野生生物を保護するため、1973年に設けられた、国際条約です。この条約の正式名称は、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引における条約」といい、野生生物の取引をする際の国際的なルールを定めた、唯一の国際的な取り決めです。

フェアワイルドについて

薬品や香料(アロマ)、食品などに含まれる、さまざまな成分の中には、自然の植物に由来した天然の成分が多く含まれています。しかし、そのために特定の植物が、過剰に採集され、絶滅の危機に追い込まれるケースは少なくありません。「フェアワイルド」は、こうした問題を解決するため、持続可能な形で採集された植物を、国際的な基準で「認証」する国際基準です。

トラフィックイーストアジアジャパンの活動

WWFは、IUCN(国際自然保護連合)と共同で、野生生物の国際取引を監視し、市場での野生動植物の流通を調べる、国際的な機関「トラフィック・ネットワーク」を設立し、現在もその取り組みを支援しています。トラフィックは、野生生物の取引状況について調査を実施。現状や改善のための提言を、ワシントン条約事務所に対し行なっています。

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