消費者とスーパーを
つなぐ、新たなナッジ型
コミュニケーション*1
『買い物カゴ投票』
持続可能な消費行動の促進を目的に、スーパーマーケット(以下スーパー)などの小売店での導入を想定した『買い物カゴ投票』を考案しました。スーパーからの二者択一の問いかけに対して、消費者が買い物かごを返却する際に、「YES」か「NO」のかご置き場にかごを返却することで回答が行なえる仕組みです。スーパーからの問いに、消費者が簡単に意思表示でき、その声を受けてスーパーが取り組みを進めることができる新たなコミュニケーションの形です。
*1 ナッジ型コミュニケーション:ナッジ(nudge)とは、英語で「軽くつつく、行動をそっと後押しする」という意味の言葉で、行動科学の知見の活用により、人々が自分自身にとってより良い選択を自発的に取れるように手助けする手法のこと。
問いかけイメージ
買い物かご投票の流れ
- スーパーが二者択一の問いを設定
- 来店客が買い物カゴで投票
- 反応を受けてスーパーが行動
背景
スーパーは、消費者のニーズを事前に把握できる。
消費者は、意思表示でスーパーを変えるきっかけになれる。
『買い物カゴ投票』は、サステナブルな消費行動の促進を狙いとしています。持続可能な生活に関する世界的な消費者インサイト調査*2によると、「自分にも周囲にも環境にもよい生き方を妨げているものは何か」という問いに対し、日本の調査対象者の回答として「高価である(50%)」「何をしたらよいかわからない(38%)」「不便である(32%)」「私の行動では何も変わらない(28%)」という回答が並び、消費者の持続可能なライフスタイルの障壁となっている要因がわかりました。そこで、こうしたバリアを解消し、生活導線上で情報と行動の具体的な選択肢が提供され、売り場が変わることで集合的な効果にもつながりやすい、顧客参加型の『買い物カゴ投票』を発案しました。
ポイント
買い物カゴを
ニーズに答えながら同時に推進していくことが難しいサステナビリティやSDGsといった課題に対して、消費者と一緒に変化を生み出していくことができる
返却するだけ消費者の声が
積み上がるカゴの数で消費者の声が簡単に見えるようになります。
可視化される最低限のツールで
大掛かりな仕掛けを必要とせず、普段店舗で使用している什器やツールで実施が可能です。
実施が可能
*2 Healthy & Sustainable Living Report 2023:調査会社Globe Scanが毎年実施する世界的な消費者インサイト調査プログラム。31か国約30,000人の消費者を対象としたオンライン調査で、健康的で持続可能な暮らしに関する嗜好や行動の変化をブランドが理解できるように設計されています。https://globescan.com/trends/healthy-sustainable-living/
WWFジャパンと
滋賀県立大学が
有効性検証を共同研究
「買い物カゴ投票」は、その有効性の検証を滋賀県立大学人間文化学部生活デザイン学科の山田歩准教授とWWFジャパンが共同で行ないます。具体的には、2024年10月より「買い物カゴ投票」の実証実験を都内スーパーで実施し、その取り組みを研究対象として効果検証し、検証結果を本ページにて公開する予定です。
滋賀県立大学・山田准教授について
滋賀県立大学は、「キャンパスは琵琶湖。テキストは人間。」をモットーに、フィールドワークや実験・実習を積極的に取り入れた実践的な教育・研究を通して、“地”に足のついた「専門性」と他者への「思いやりの心」をそなえた「人が育つ大学」です。
山田研究室では、社会心理学や行動経済学などから得られる行動インサイトと生活者調査から得られる生活者インサイトを組み合わせながら、「人を動かす」コミュニケーション手法を研究開発しています。
『買い物カゴ投票』
実施レポート
ぜひ導入の参考にしてください。
コープみらいで『買い物カゴ投票』が実施されました。
『買い物カゴ投票』の効果検証を行う
実証実験にご協力いただきました。
- 店 舗
- コープみらい
コープ葛飾白鳥店
- 日 時
- 2024年10月1日〜
※問いかけ内容・結果に応じた売り場の変容は、
コープみらい独自の取り組みとなります
投票1
一部のお肉を「トレー」から「ノントレー包装」に変更してもいいですか?
結 果
- 合計 806票
- YES
- 583票(72.3%)
- N O
- 223票(27.7%)
投票の様子
CHANGE!
鶏肉の一部をノントレーに変更
投票2
売上が寄付につながる商品や、環境に配慮した商品が一目で分かる特設コーナーがあるといいですか?
結 果
- 合計 671票
- YES
- 466票(69.4%)
- N O
- 205票(30.6%)
投票の様子
CHANGE!
売上が寄付につながる商品や、環境に配慮した商品を集めた特設コーナーを設置
投票3
特定の時間帯に一部の商品棚の照明を暗くしてもいいですか?
結 果
- 合計 790票
- YES
- 580票(73.4%)
- N O
- 210票(26.6%)
投票の様子
CHANGE!
11:00~16:00 の間、飲料コーナーの照明を消灯
COMMENT参加された方々の声
『買い物カゴ投票』を
取り入れてみたい
お店の方へ
ポイント
- ニーズに答えながら同時に推進していくことが難しいサステナビリティやSDGsといった課題に対して、消費者と一緒に変化を生み出していくことができる
- お店として推進したい取り組みが、消費者に受け入れられるかを事前に判断することができる
- 普段は認知されにくい取り組みを「問い」にすることで、取り組みを知ってもらう機会になる
返却が投票になるのはおもしろい取り組みだと思った。 投票参加者・男性
お客さんの意見がわかりやすく反映されて良い。 来店者・60代女性
自分にできることはしたいといつも思っている。手軽で参加しやすい取り組み。売り場が変わったならぜひ利用したい。 来店者・80代女性
実際にノントレー商品が増えていて嬉しかった。 投票参加者・50代女性
『買い物カゴ投票』を開始したばかりのときはお客様にもやや戸惑いがありましたが、慣れてくるととても協力的に参加していただけました。
ふだんお店では商品やサービスについてのご意見、ご要望をいただくことがあっても、今回のような地域の皆さまの環境に対する潜在的な考えや思いを知る機会はなかったので、この投票によって思わぬ発見や学びがありよかったです。投票結果を受けてよりよいお店作りを進め、地域とのつながりを強化し、信頼のおけるパートナーとなることを目指していきたいと思います。 コープ葛飾白鳥店 斉藤店長
コープみらいとして、お客様の声をもっと取り入れたお店づくりをしたい、環境への取り組みをもっと進めていきたいといった課題感を持っているなかで、この2つを結びつけ、お客様が手軽に参加して意見を表明することができる『買い物カゴ投票』の企画を見て実施を決めました。
実際に投票を行って、多くのお客様が参加してくれたことで、「環境に良い取り組みをします」と店側から一方的に施策を実施するのではなく、お客様と一緒に考えていくことができました。環境の取り組みは事業者と消費者それぞれが協力し合うことがとても大切ですので、この『買い物カゴ投票』による双方向のコミュニケーションはとても役立つと感じました。 サステナビリティ推進部 長嶋さん