オーストラリア東部の
森林保全ご支援のお願い
地図の中で赤く塗られたところ。
そこは、世界の中でも特に森林減少が
激しく進行している場所 を示しています。
WWFジャパンはこれまで、
スマトラ島やボルネオ島、
メコン地域(タイ、ミャンマー )で、
森林保全活動を行なってきました。
そして2021年。
新たに、オーストラリア東部でも、
保全活動を開始することとなりました。
そこに広がるのは、
ユーカリの木が優占する独特の森。
コアラを筆頭に、
多様な生きものたちが暮らしていますが、
森林火災や農地開発などによって
減少が続いています。
オーストラリア東部の
森を脅かす危機
森林火災
2019年9月から2020年2月にかけて、
かつてない規模の森林火災が
オーストラリアを襲いました。
複数の大学とNGOの共同研究による推定では、
およそ30億頭の野生生物が
被害を受けたとの結果が示されています。
カメ類、魚類、無脊椎動物など、
評価が困難だった生きものを加えれば、
被害はさらに膨大になります。
火災によって影響を受けた
野生生物の推定頭数(一部抜粋)
小型の食虫性有袋類 | 3,672万5,000頭 |
---|---|
カンガルー、ワラビー | 496万3,000頭 |
コアラ | 6万1,000頭 |
ポッサム、リングテイル | 3,893万3,000頭 |
フクロネコ、タスマニアデビル | 1万9,000頭 |
ウォンバット | 118万4,000頭 |
各州の延焼面積
延焼範囲は、オーストラリア全体で
11万km2以上(北海道の面積が約8万3,500km2)。
うち80%が東部の森に集中しています。
農地開発
オーストラリア東部では、
開発による森林減少も起きています。
主な要因は牛肉の生産に関連する農地開発です。
オーストラリア産牛肉の主要な輸出先は日本。
また、肉牛の飼育は、
他の畜産業よりも二酸化炭素排出量が多く、
温暖化への寄与が高いといえます。
気候変動(地球温暖化)
もともと森林火災は
自然現象のひとつでもあります。
しかし最近は、
これまでにない頻度で火災が発生し、
大規模化、長期化する傾向に。
その背景には、
地球温暖化による異常乾燥などの
「気候変動」が関係していると指摘されています。
オーストラリア東部の
森の生きものたち
多様な生物がすむ
オーストラリア東部の森を守るには、
火災被害からの回復、
そして、開発などによる
森林減少防止の両方が必要になっています。
コアラ
Phascolarctos cinereus
食べるのも眠るのも、赤ん坊を生むのも樹上。食べものの大部分を、ほんの数種類のユーカリの葉でまかなうコアラは、まさに「ユーカリの森がなければ生きられない」動物の代表です。現在の総個体数は10万~50万頭。絶滅危惧種。
ハナナガネズミカンガルー
Potorous tridactylus
体長約40センチ。見ためはネズミのようですが、原始的なカンガルーの仲間です。林床に草が密集するような森林を好みます。基本は夜行性。絶滅危惧種ではありませんが、2019-2020の火災で大きな影響を受けました。
カモノハシ
Ornithorhynchus anatinus
カモノハシもまた、オーストラリア東部と、タスマニアだけに見られる動物です。鳥のようなくちばしを持ち、卵を産む不思議な哺乳類。水中に暮らし、水生昆虫などを食べます。今のところ絶滅のおそれはありませんが、個体数は減少傾向にあります。
テリクロオウム
Calyptorhynchus lathami
オーストラリア東部と、南オーストラリア州のカンガルー島のみに生息。カンガルー島では、2019-2020 の火災で、生息地の半分が失われた可能性があります。火災の前までは絶滅危惧種ではありませんでしたが、今後の状況が心配されています。
ヒメフクロネコ
Dasyurus hallucatus
体長は25~37センチほど。西オーストラリア州、ノーザンテリトリー州、クイーンズランド州の沿岸部にある、さまざまなタイプの森林に生息。主に夜間に活動し、日中は樹洞や岩の隙間などに身を潜めてすごします。絶滅危惧種。
ハイガシラオオコウモリ
Dasyurus hallucatus
オーストラリア東部のみに生息。ユーカリやメラレウカ(ティーツリー)などの森のほか、果樹園や都市部の公園で見られることもあります。ビクトリア州では増加傾向でしたが、2019-2020の火災の影響が心配されます。絶滅危惧種。
オーストラリア東部の森と
野生生物を守るため、
WWFジャパンは次の活動を行なっていきます。
森の再生と保全
WWFオーストラリアの
「2Billion Trees(20億本の木)」
プロジェクトを支援し、
森の再生をめざします。
また、森の減少をくいとめるため、
林産物や農産物の生産と
消費をサステナブル(持続可能)に
変えていくための活動も行ないます。
- 森の再生力を高める活動を進め、必要に応じて在来樹木の植林も行なう
- すべてのタイプの森林の少なくとも15%が法的に保護されることをめざす
- 自然林や、保護価値の高い森林の伐採の、段階的な廃止をめざす
- すべての林業が、FSC®など適切な森林管理のもとで行なわれるようにする
生物多様性の回復
WWFオーストラリアの
「Koala Forever」プロジェクトを支援します。
コアラの生息地拡大と個体数増加をめざすことで、
生物多様性の回復を図っていきます。
2050年までを見据えた長期計画で、
まずは以下の活動が行なわれます。
- 3500本の在来樹木を植え、低地亜熱帯林の再生を進める
- 野生動物病院の新設や拡張を進め、被災した野生動物の生存率向上を図る
- ドローンを使って在来種の種を撒き、分断された森をつなぐ「緑の回廊」を作る
人と自然が調和して
生きられる未来を目指して
WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。