オーストラリア東部の
森林保全ご支援のお願い

© Global Warming Images / WWF
© Shutterstock / Alizada Studios / WWF
地図の中で赤く塗られたところ。
そこは、世界の中でも特に森林減少が
激しく進行している場所*1を示しています。
WWFジャパンはこれまで、
スマトラ島やボルネオ島、
メコン地域(タイ、ミャンマー*2)で、
森林保全活動を行なってきました。
そして2021年。
新たに、オーストラリア東部でも、
保全活動を開始することとなりました。
そこに広がるのは、
ユーカリの木が優占する独特の森。
コアラを筆頭に、
多様な生きものたちが暮らしていますが、
森林火災や農地開発などによって
減少が続いています。
*1:報告書『森林破壊の最前線』WWF,2021より
*2:2021年4月現在、政治状況により、ミャンマーは海外からの支援ができない状況となっています。
オーストラリア東部の
森を脅かす危機
森林火災

2019年9月から2020年2月にかけて、
かつてない規模の森林火災が
オーストラリアを襲いました。
複数の大学とNGOの共同研究による推定では、
およそ30億頭の野生生物が
被害を受けたとの結果が示されています。
カメ類、魚類、無脊椎動物など、
評価が困難だった生きものを加えれば、
被害はさらに膨大になります。

鎮火後の森で見つかった親子。
このあと保護され、無傷であることが確認された。
©WWF-Australia / Sii Studio
火災によって影響を受けた
野生生物の推定頭数(一部抜粋)
小型の食虫性有袋類 | 3,672万5,000頭 |
---|---|
カンガルー、ワラビー | 496万3,000頭 |
コアラ | 6万1,000頭 |
ポッサム、リングテイル | 3,893万3,000頭 |
フクロネコ、タスマニアデビル | 1万9,000頭 |
ウォンバット | 118万4,000頭 |
各州の延焼面積

延焼範囲は、オーストラリア全体で
11万km2以上(北海道の面積が約8万3,500km2)。
うち80%が東部の森に集中しています。
農地開発
オーストラリア東部では、
開発による森林減少も起きています。
主な要因は牛肉の生産に関連する農地開発です。
オーストラリア産牛肉の主要な輸出先は日本。
また、肉牛の飼育は、
他の畜産業よりも二酸化炭素排出量が多く、
温暖化への寄与が高いといえます。
気候変動(地球温暖化)

もともと森林火災は
自然現象のひとつでもあります。
しかし最近は、
これまでにない頻度で火災が発生し、
大規模化、長期化する傾向に。
その背景には、
地球温暖化による異常乾燥などの
「気候変動」が関係していると指摘されています。
© Michel Gunther / WWF
オーストラリア東部の
森の生きものたち
多様な生物がすむ
オーストラリア東部の森を守るには、
火災被害からの回復、
そして、開発などによる
森林減少防止の両方が必要になっています。

コアラ
Phascolarctos cinereus
食べるのも眠るのも、赤ん坊を生むのも樹上。食べものの大部分を、ほんの数種類のユーカリの葉でまかなうコアラは、まさに「ユーカリの森がなければ生きられない」動物の代表です。現在の総個体数は10万~50万頭。絶滅危惧種。

ハナナガネズミカンガルー
Potorous tridactylus
体長約40センチ。見ためはネズミのようですが、原始的なカンガルーの仲間です。林床に草が密集するような森林を好みます。基本は夜行性。絶滅危惧種ではありませんが、2019-2020の火災で大きな影響を受けました。

カモノハシ
Ornithorhynchus anatinus
カモノハシもまた、オーストラリア東部と、タスマニアだけに見られる動物です。鳥のようなくちばしを持ち、卵を産む不思議な哺乳類。水中に暮らし、水生昆虫などを食べます。今のところ絶滅のおそれはありませんが、個体数は減少傾向にあります。

テリクロオウム
Calyptorhynchus lathami
オーストラリア東部と、南オーストラリア州のカンガルー島のみに生息。カンガルー島では、2019-2020 の火災で、生息地の半分が失われた可能性があります。火災の前までは絶滅危惧種ではありませんでしたが、今後の状況が心配されています。

ヒメフクロネコ
Dasyurus hallucatus
体長は25~37センチほど。西オーストラリア州、ノーザンテリトリー州、クイーンズランド州の沿岸部にある、さまざまなタイプの森林に生息。主に夜間に活動し、日中は樹洞や岩の隙間などに身を潜めてすごします。絶滅危惧種。

ハイガシラオオコウモリ
Dasyurus hallucatus
オーストラリア東部のみに生息。ユーカリやメラレウカ(ティーツリー)などの森のほか、果樹園や都市部の公園で見られることもあります。ビクトリア州では増加傾向でしたが、2019-2020の火災の影響が心配されます。絶滅危惧種。
© Global Warming Images /WWF
オーストラリア東部の森と
野生生物を守るため、
WWFジャパンは次の活動を行なっていきます。
森の再生と保全

WWFオーストラリアの
「2Billion Trees(20億本の木)」
プロジェクトを支援し、
森の再生をめざします。
また、森の減少をくいとめるため、
林産物や農産物の生産と
消費をサステナブル(持続可能)に
変えていくための活動も行ないます。
- 森の再生力を高める活動を進め、必要に応じて在来樹木の植林も行なう
- すべてのタイプの森林の少なくとも15%が法的に保護されることをめざす
- 自然林や、保護価値の高い森林の伐採の、段階的な廃止をめざす
- すべての林業が、FSC®など適切な森林管理のもとで行なわれるようにする
生物多様性の回復

WWFオーストラリアの
「Koala Forever」プロジェクトを支援します。
コアラの生息地拡大と個体数増加をめざすことで、
生物多様性の回復を図っていきます。
2050年までを見据えた長期計画で、
まずは以下の活動が行なわれます。
- 3500本の在来樹木を植え、低地亜熱帯林の再生を進める
- 野生動物病院の新設や拡張を進め、被災した野生動物の生存率向上を図る
- ドローンを使って在来種の種を撒き、分断された森をつなぐ「緑の回廊」を作る
人と自然が調和して
生きられる未来を目指して
WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。