ここ数年、
日本で急激に人気が高まったカワウソ。
その愛らしさに夢中になる人が増える一方で、
東南アジアから日本へ、
カワウソが密輸される事件も相次ぎました。
暴れないよう薬を投与され、
スーツケースに詰め込まれて運ばれる中、
命を落とすカワウソも少なくありません。
世界中で、さまざまな野生動物が取引
されていますが、
その目的のひとつが「ペット」です。
かわいい。美しい。
そう感じる心は大切ですが、
その動物が、
野生では絶滅の危機にあるとしたら?
さらに、野生動物の多くは、
飼育に適さない面を持っています。
カワウソも、
カニの甲羅をかみ砕くほど噛む力が強い生きもの。
飼い主が大怪我をする危険は否定できません。
なにより、広い行動圏を持ち、
川から草地、海辺まで、
さまざまな環境を利用する
カワウソ本来の暮らしを、
一般家庭で再現するのは不可能です。
好きだからこそ、その動物の危機や、
飼育に適さないことにも気づいてほしい。
WWFは、
カワウソを愛玩動物のように扱う風潮に対して、
警鐘を鳴らしています。
ペット目的の取引が野生生物を脅かす問題は、
日本の南西諸島 でも起きています。
南西諸島は、
世界でここにしかいない、
希少なカエルやトカゲ、
カメなどの宝庫。
しかし、開発などの影響で、
絶滅の危機にあるものも少なくありません。
さらに、ペットにするための捕獲や取引が、
その危機に拍車をかけています。
TRAFFIC
南西諸島の両生類や爬虫類が、
国内外で活発に取引されていることが判明。
環境省のレッドリストで
「特に絶滅のおそれが高い」とされ、
国の天然記念物でもある、
ミヤコカナヘビやヤエヤマセマルハコガメなども含まれています。
ミヤコカナヘビもヤエヤマセマルハコガメも、
国の法律などによって
捕獲が禁止されていますが、
「飼育繁殖させたもの」と
書かれて販売されており、
その証明までは求められないのが現状です。
両生・爬虫類は、
世界的にもペットとして人気です。
しかも、希少であればあるほど、
人気が高まる傾向すら見られます。
好きだからこそ、希少性を喜ぶのではなく、
絶滅をくいとめる必要性を理解してほしい。
WWFは、
南西諸島の両生類・爬虫類の
取引規制の強化を、
政府に求めています。
2019年8月、ワシントン条約会議
コツメカワウソの国際取引を
原則禁止とする提案が可決されました。
これに伴って、日本国内での取引も、原則禁止となります。
これは、コツメカワウソの保護にとって
大きな前進です。
ただ、規制を潜り抜けて
違法取引が起きる心配もあるため、
これからも監視を続けることが不可欠です。
また、カワウソの他にも、
ペット目的の違法な取引にさらされているのは、
小型のサル、インコやオウム、フクロウ、リクガメ、トカゲなど、
挙げればきりがありません。
さらにペット以外の利用でも、
ゾウ(象牙)、
サイ(犀角)、
トラ(毛皮や骨、牙)、
センザンコウ(肉や鱗)などの
違法取引があとを絶ちません。
「欲しい」気持ちだけを優先させる人がいる限り、
密猟や違法取引は続きます。
好きだからこそ、考える。
その動物がどこからどうやって連れてこられたのか、
絶滅のおそれはないか、
購入することでどのような影響が
起こるのかを考えたり、
売る側に尋ねたりする。
そういう人が増えれば、
野生生物を過剰な利用や
違法取引から
守る大きな力が、
必ず生まれます。
市場の動向や動物を取扱う事業者の法令遵守状況などの調査を行ない、
ペット業界へ必要な改善策や規制遵守の徹底などを求めていきます。
展示即売会やネット上で行なわれるペット取引を重点的にモニタリングし、
疑わしいものについては警察へ情報提供を行なっていきます。
ワシントン条約で国際取引は禁止されましたが、
規制前に輸入された個体などとして国に登録すれば
国内での取引は可能です。
密猟・密輸された個体が登録されるなどの不正行為が起きないよう、
政府に対策を提言します。
ペット取引が目的で起こった密輸事件に関する情報を
収集、分析し、違法取引の動向や
法執行強化へ向けた課題について政府や政策決定者、
業界など広く関係者へ情報共有します。
絶滅のおそれのある野生動物が
ペット扱いされることの問題点を発信し、
需要の削減や意識変革にも取り組んでいきます。
国際取引の規制の導入・強化を政府に求めると同時に、
生息地の自治体や地域住民と協力し、
希少な生きものを違法取引から守る体制を作ることをめざします。
日本で購入した象牙製品を海外へ持ち出す「違法輸出」をなくすため、
訪日観光客に象牙製品を買わないよう呼びかけるキャンペーンを行ないます。
また、ネット上で違法な象牙取引が起きていないかモニタリングを継続します。
違法な国際取引を取り締まる最前線となる税関職員や、
監視や報告などの協力が期待される空港・航空業界の職員を対象に、
野生生物の違法取引に関する研修を継続して実施します。
人と自然が調和して
生きられる未来を目指して
WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。