未来に向けた
WWFジャパンの2つのチャレンジ
気候変動(地球温暖化)に由来すると考えられる異常気象や、大規模な森林火災。そして新たな感染症の発生。
環境問題は今や、多くの野生生物を絶滅の危機に追い込むのみならず、私たちヒト自身の暮らしと未来にも、深刻な影響を及ぼしています。
この問題を解決していくため、活動開始から50年を迎えたWWFジャパンは、2030年、さらにその先の未来に向けた、2つの大きな目標を掲げています。
世界の生物多様性の劣化を「反転」させる
2030年 生物多様性回復目標
気候変動の脅威をくいとめる
2050年 脱炭素社会実現目標
目標 12030年 生物多様性回復目標
世界の生物多様性を回復させる。
そのために、2030年までに、生物多様性の劣化を回復に向かわせる。
世界の生物多様性の劣化を
「反転」させる!
WWFは『生きている地球レポート』の中で、地球上のさまざまな環境に生息する4000種あまりの野生生物の個体数の変化から、過去半世紀の間に世界の生物多様性がどれくらい劣化してきたかを示しました。
この下降線をたどり続けてきた結果が、3万5,000種にものぼる野生生物の絶滅危機と、世界各地で続く深刻な森林破壊、そして新型コロナウイルス感染症のような動物由来感染症のパンデミックです。この状況を変え、身近に迫るさまざまな問題を解決していくためには、この下降線のグラフを、上向きに「反転」させ、自然と人が調和して生きられる未来を築いていかねばなりません。
生物多様性の回復を描く
「カーヴ」のシナリオ
下降線を上に向けるにはどうすればよいのか。WWFはそのためのシナリオを用意しました。シナリオの要素になっているのは、次の3つです。
1. 野生生物の生息環境の保全(緑)
2. 持続可能な生産の推進(青)
3. 持続可能な消費の実現(赤)
この3つの要素を組み合わせ、同時に推進していくことができれば、青緑や紫、緑の「カーヴ」を描くことができます。そして目指すのは、この3つを合わせた黄色のシナリオよりも野心的な目標を設定し、2050年までに実現することです。
生物多様性を回復させる3つのチカラ
3つの要素をそれぞれ具体的に見てみましょう。
人の消費行動によって生じる環境への圧力を下げる取り組みです。地球の生産力に見合った規模の消費を行なうことが、カギになります。
- 森や海の生態系を壊さない水準で、木材や水産物などの資源を利用するための仕組みをつくる
- 農地の生産性を高め、森などを新たに開発することを防ぐ
- 持続可能な形で、製品の生産に取り組む企業が一緒になって、自然を利用する際のルールを決める
- 製品を作る企業が、ビジネスで使うエネルギーや原料の調達、廃棄物の処理について、20年先のゴールを設定した長期的な目標を立てる
- 環境や人権に配慮した、持続可能な生産活動を支える法律を整備する
途上国の農業生産の支援
企業の調達目標の策定支援
水資源の持続可能な利用の推進
環境に配慮した投資の促進
減プラスチックを推進する
法の整備
自然と資源に配慮した
漁業管理の推進
持続可能な生産と、経済を支えるため、消費者一人ひとりが意識を持ち、声を上げ、行動する必要のある活動です。
- 太陽光や風力など、温室効果ガスを出さない電力や、省エネの製品を選ぶ
- 持続可能な方法で作られた製品に、一目でわかるエコラベルを付ける
- 教育の場で環境の危機と消費の関係を教え、どのような選択が未来を守ることにつながるかを伝える
- 非持続可能な方法で作られた製品を選ばず、そうした製品を作る企業に対し、改善を求める声を届ける
- 持続可能な消費や選択を促進する政策を推進する国会議員に投票する
持続可能な生産についての発信
森や海を守るエコラベルの普及
企業に対し情報の開示を要請
パンデミックを防ぐ
ワンヘルスの普及
「食」を通じた消費と生産の改善
持続可能な消費を
促進する法整備
目標 22050年 脱炭素社会実現目標
2050年までに、世界の二酸化炭素の排出ゼロを実現する。
そのために、2030年までに、日本の温室効果ガスの排出量を50%削減する。
気候変動の脅威をくいとめる!
日本をはじめ世界各地を襲うようになった異常気象。
それに伴って生じる森林火災や洪水の被害。地球温暖化、すなわち気候変動は、もはや遠い国の話ではなく、身近で深刻な脅威となっています。
サンゴ礁をはじめ、この問題により危機にさらされている自然や野生生物も少なくありません。
温暖化の原因となっている、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を「ゼロ」に抑える、すなわち石油や石炭に頼らない、「脱炭素社会」を実現することが今、必要とされています。
二酸化炭素を出さない
エネルギー社会の実現
温暖化対策とは、エネルギーを転換させることです。
持続可能な太陽光や風力などの自然エネルギーを
主力とした、グリーンな経済を実現する。
そのためには、消費者一人ひとりの意識と行動も重要です。
脱炭素社会のために
具体的に、次の5つが重要です。
- 消費者が、太陽光や風力など、温室効果ガスを出さない電力や、省エネの製品を選ぶ
- 企業が、ビジネスで使うエネルギーを化石燃料から再エネに切り替え、明確な排出削減目標を立てる
- 温暖化防止に意欲的な企業に投資する
- 再生可能な自然エネルギー政策を推進する国会議員に投票する
- 政府に働きかけ、より高い排出削減目標を掲げ、実現するよう求める
国連会議で各国政府に働きかけ
排出削減目標の改善を政府に要望
企業の温暖化対策を評価
自然保護とエネルギー開発の両立
企業や自治体と協力した取り組み
「排出ゼロ」シナリオの提示
「自然の回復」と「脱炭素」を達成する10年に
今や環境問題は、絶滅の危機にある野生生物だけでなく、世界のあらゆる国や地域、あらゆるビジネス、そしてすべての人の暮らしに直結する問題になりました。
この問題を解決し、生物多様性の劣化を回復させる3つの取り組みと、脱炭素社会を実現するためには、WWFのような国際団体だけでなく、個人や企業、各分野の専門家や行政の関係者など、さまざまな人たちの協力が必要です。
そしてこの協力は、これまで「環境問題」と呼ばれてきた分野の壁を越えた、より大きな規模での協働と連携に基づいたものでなければなりません。
特に、過去10年間を振り返った時、社会をよりよいものに、より持続可能な形へ変えていくことを目指す、声や取り組みは、SDGsにも代表されるとおり、確実に大きなものとなってきました。
その中で、多くの人々が、「自分たちには未来を選び、変える力がある」と気づき、行動を始めています。次は、これを一つの大きな声と力に換え、真に持続可能な、人と自然が共生する社会を実現してゆかねばなりません。
環境問題は決して、分かり易く、単純な問題ではありません。何が正義で、何が悪なのかを、軽々に判じてよいものでもありません。しかし必ず、私たち自身のためにも、解決してゆかねばならない問題です。
未来を変える気づきと理解、そして行動を何よりも大切に、WWFジャパンはこの設立50周年を機に、決意をあらため、特に重要なこれからの10年に向け、次の一歩を踏み出します。
皆さまには是非これからも、環境問題とWWFの取り組みにご関心をお持ちいただき、共に歩み、声を上げ、行動していただきますよう、お願い申し上げます。
この生きものたちと
共生できる世界を目指して
WWFが目指すのは、人と自然が共存できる
「サステナブル(持続可能)」な社会の実現です。
さまざまな野生生物がさらされている危機と、
その解決に必要な取り組みを紹介します。
環境保全の輪を
より大きく広げていくために
国連等の機関ではない、
民間団体のWWFの活動は、
公的資金に頼らず、
多くの皆さまからの
ご寄付や募金、会費等のご支援によって支えられてきました。
人と自然の未来の道筋を決定づけるため、
特に重要となるこれからの10年に向け、
環境保全の輪をより大きく広げていくために。
ぜひ皆さまのご支援をお願いいたします。
人と自然が調和して
生きられる未来を目指して
WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。