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目撃者の証言:海岸の景色が変わってゆく
中央・南アメリカ(ベリーズ):ロゼンダ・アルダーナさん
中央アメリカ、ベリーズの海岸に位置するプラセンシアの町。ここで暮らす、ロゼンダ・アルダーナさんは、主婦として、また漁師として長年見てきた地元の風景が今、変わってきているといいます。海や気温は暖かくなり、嵐や洪水が増えた故郷の町。付近で続くマングローブの森の破壊が、温暖化による被害をさらに大きなものにしようとしています。
ベリーズの海岸からの証言
私の名前はロゼンダ・アルダーナといいます。主婦で、海での漁もやっています。57歳です。私はベリーズのスタン・クリーク州にあるモンキー・リバーという町で生まれ育ちました。結婚して、同じ州にあるプラセンシアの町に引越し、1980年代から24年間暮らしています。プラセンシアに住むようになってから最初の16年は、生活のために漁をしていました。今では、息抜きのために漁をしています。私の7人の子どもたちは、今も全員ベリーズに住んでいます。
水温と気温が上がる
気候変動は私たちの生活に深刻な影響を及ぼしています。
たとえば、3月、4月、5月は、以前よりも暑くなっています。正確な温度の違いはわかりませんが、屋内でも屋外でも温度が高くなっていると思います。そして、気温が上昇しているいため、このあたりの植物は、昔にくらべて多くの水を必要としています。
海も暖かくなっています。夏の海水温度は驚くほど高くなります。これまではこんなに高くなることはありませんでした。
それから風の吹き方にも変化があるようで、南西の風が減り、海岸付近の潮の流れに影響を及ぼしています。この風は今までは、海水の温度を下げる役割を果たしていました。
近年雨の降り方も大きく変わりました。まず、雨季の時期がはっきりとしなくなりました。通常、雨季は6月から11月でしたが、今ではいつでも雨がよく降ります。月を問わず、一度降り始めると、短時間に激しく降るのです。
嵐が増えた
嵐も多くなり、その風の吹き方も変わりました。
昔はもっと激しい「サウス・ウエスター」と呼ばれる南西から吹く嵐と、北東の風が吹いていました。当時は雲を見て「サウス・ウエスター」が向かって来そうだ、とわかったものですが、今はそう簡単にはいきません。嵐自体も長く続かなくなっています。
その一方で、洪水が多いと感じています。2007年は2回も、本当に激しい嵐がやってきて、洪水になりました。
激しい嵐や洪水は、プラセンシアの海岸線や、海沿いの土地を浸食してしまいます。そして、こうして浸食された土砂などの堆積物は、水によって他の場所に運ばれ、堆積していきます。海から吹きつける風は、海岸を削り取り、また新たに形作って、地形を変えてしまっているのです。
自然破壊と気候変動の悪循環
過去にも、プラセンシアの海辺では、ハリケーンによって、マングローブの林が枯れてしまうことがありました。しかし今、人々は海岸や沖合の小島周辺に、わずかに残っているマングローブを、さらに開発のために伐っています。
このマングローブの林は、海から押し寄せる嵐を海岸で食い止め、壁の役割を果たしてくれるものです。私たちの家や財産を守ってくれるものなのです。ですから、これを伐り払うことは、自分たちを危険にさらすことに他なりません。
プラセンシアでは、昔ほど動物や鳥を見かけることもなくなりました。それは、この付近の人口が急速に増加し、森が無くなったためです。動物たちは、他の地域に移動してしまったのです。オオハシや小鳥類など、よく目にしていた鳥たちも姿を消してしまいました。
WWFインターナショナル/ホームページ掲載日:2007年11月10日
Climate Witness: Rosenda Aldana Belize
科学的根拠
科学的根拠
アン・ゴードン氏(Ann Gordon) 気象学者 ベリーズ気象学研究所(Belize Meteorology Office)、ベリーズ
記録によると過去20年間、ベリーズでは温暖化の傾向が見られ、1990年代がもっとも暖かい10年でした。アルダーナさんの観察は気候学者が見てきたものと一致しています。気温上昇の結果、海水温も上昇します。2006年に、科学者はカリブ海の水温が通常の平均温度よりも3度以上上がっていることを示しています。また地球温暖化が海水温上昇の原因ではないかと推測する科学者もいます。
「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は2007年に、1970年代以来の北大西洋の熱帯低気圧の増加が熱帯地方の海水表面温度の上昇と関連があると報告しています。しかし、1年あたりの熱帯低気圧の数については明確な変化は認められていません。
風や降雨のパターンは気温の変化に影響されます。現在、この地方の風のパターンの変化は確認されていません。しかし、降雨パターンの変動については証拠があります。雨が短期間に激しく降るようになったことは、この地域への気候変動の影響と思われます。これが鉄砲水の増加にも繋がります。
ハリケーンによるマングローブ林の被害の状況は、マングローブ林がハリケーンに対してどこに位置しているかによります。ハリケーンの風向、風速、また波による直接の被害に加えて、波や風がもたらす堆積物が沈み込む場所にもよります。開発のためのマングローブ伐採は、それが持続可能な手段で行われなければ環境を悪化させます。こういった開発や投資は、気候変動の影響に対する脆弱性を減らすどころか増加させるのです。
サンゴの白化現象はさまざまな物理的ストレスに関連しており、中でも重要なのは海面温度の上昇です。文献によると、1980年代以来の大規模なサンゴ白化現象は、異常な高温によるストレスとして一般的な反応です。
私の結論としては、アルダーナさんが観察したプラセンシアでの現象は、気候の悪影響に関する信頼性のある学術論文の内容とある程度一致していると考えます。
更なる情報は以下のウエブサイトから入手出来ます。
- 気候変動2007:影響、適応及び脆弱性 http://www.ipcc.ch
- www.globalcoral.org
- www.enn.com/today.html
全ての記事は「温暖化の目撃者・科学的根拠諮問委員会」の科学者によって審査されています。
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公開日:2007/11/10
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