目撃者の証言:変わりゆく庭の植物たち


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北アメリカ(アメリカ): タラ・ディラードさん

アメリカのジョージア州アトランタで、造園の仕事を手がけるタラ・ディラードさんは、仕事の中で扱ってきた植物たちが、年々変わってきたと言います。気候の変化と共に、アトランタの土地に合った植物も変化しているのです。ディラードさんは、慢性的な水不足と、ガーデニングという仕事、そして人々の庭の未来を心配しています。

アトランタのガーデンからの証言

私の名前はタラ・ディラードといいます。47歳です。ガーデン・デザイナーをしながら、園芸書の執筆もしています。テキサス州ナッソーベイで育ちましたが、1982年からジョージア州アトランタで暮らしています。私は、ガーデニングや植物の研究に生涯情熱を傾けていこうと、23年前にプロとして働き始めました。

タラ・ディラードさん
(C)Tara Dillard

季節の変化

私はテキサス州の亜熱帯地域、つまり基本的に一年中季節が変わらない地域で育ちました。そんな私が、ジョージア州を愛し、移住してきた理由の一つは、ここには四季があったからです。ガーデン・デザイナーとして、それぞれの季節がもたらす変化にとても感謝しています。

ここで私が気付いた大きな変化の一つは、以前に比べて、ここ数年冬が暖かくなっているということです。冬は昔に比べて短く、寒さも激しくありません。また、水不足の状態がひどくなっています。私がアトランタに初めて来た時は、とても寒い冬がありましたが、それ以降はずっと穏やかで暖かくなっているようです。

冬の気温上昇の一例ですが、2006年の11月初旬に、私は家の玄関のドアの側で、小さなつぼみを見つけました。これはとても衝撃的なことでした。なぜなら、そのつぼみが、普段は冬に芽吹くことのないシャスターデージーだったからです。その後、数週間かけてつぼみはゆっくりと成長し、クリスマスの日に開花しました。美しかったのですが、とても不自然な出来事でした。

暖かい時期が非常に早く来る年は、ガーデニングの仕事がとても大変になります。
2007年はまるで、春が二度来たようなものでした。まず1月に気温が急に高くなり、そのためアジサイの仲間がとても早く葉をつけました。ところが、4月のイースターの頃に寒波が来たため、散々な状態になりました。春が来たと思って葉をつけた植物が、重大な被害を受けたのです。ナラの木でさえ状態が悪くなりました。

このような気温の変化から生じる被害に対し、植物は回復することができます。しかし、問題となるのは、周期的に襲ってくる水不足です。この地域の水不足は、自然のサイクルの一部ですが、最近は特に、水の不足が深刻化しています。

この水不足に加え、早すぎる芽吹きや、その後やってくる寒波が重なると、植物が元どおり回復できるのかどうか、わかりません。あらゆる要因が、植物に甚大なストレスを与えるため、病気や害虫問題も増加してしまいます。

ディラードさんの手がける庭。育つ植物が変われば、庭そのもの姿も変わってきます。(C)Tara Dillard

ハナミズキの花 C)Tara Dillard

アジサイ類も園芸品種として、ガーデニングには多く使われています。
(C)Michel Gunther/WWF-Canon

植物種の変化

アトランタはカナダツガの分布域の南限に位置しています。以前はよく、この樹木をガーデニングのデザインに使っていました。しかし、今では使っていません。暑く、乾燥した夏の間に、激しいストレスにさらされ、枯れてしまう可能性があるためです。

その一方で、昔はそれほどこの地域に適してはいなかった、いくつかの植物が、今はよく育っています。小さなスプリングタイム(シャリンバイ属)や、コクチナシ(クチナシ属)などは、これまで「ひ弱な植物」とされ、通常は年間を通して生き抜くことはできませんでした。しかし、今では一年中よく育っているようです。全般的に見て、植物は寒さに耐えるという点では、それほど強くなくても大丈夫になったのです。

ガーデニングにとっての厳しい時代

私は自分の仕事に最も影響を及ぼしているのは、ここアトランタの水不足がもたらした、給水制限だと考えています。業績は2006年の夏、秋で悪化し、2007年の春も、昔ほど忙しくありませんでした。経済全体が上向きになっているため、この業界の低迷ぶりが逆に際立っています。造園業だけで生計を立てるのは、とても厳しい状況にありますから、今この仕事を始めたいと思う人はいないと思います。

そして人々は今、庭をどんどん小さくしようとし、自分でその庭をすばらしいものにしよう!という気持ちを持たなくなっています。植物たちが息づく庭のかわりに、テラスやパティオ、屋外キッチンなどを作ることを望んでいるのです。私たちガーデン・デザイナーは、地球温暖化や水不足といった難問に直面するだけでなく、自然環境に関心の薄い人たちのことも考えなければなりません。

WWFインターナショナル/ホームページ掲載日:2007年8月16日
Climate Witness: Tara Dillard, USA

科学的根拠

スティーブ・マクナルティ(Steve McNulty)助教授 ノース・カロライナ州立大学(North Carolina State University)森林自然資源学部(Department of Forestry and Natural Resources)

ディラードさんの話には3つの要素があります。第1に、植物が成長する季節が長くなっているということです。米国農務省(USDA)が発表する植物の耐寒地帯は、ディラードさんがアトランタに住み始めた頃から北に移動しているので、この目撃談の根拠となります。

第2に、アトランタでは冬が終わる頃に気温が上昇し、その後に霜が降りるので、開花にとってマイナスの影響を与えるということです。この現象はすでに起きているのかもしれませんが、残念ながら専門家によって検証された文献がないため、寒さの緩みと霜の周期が植物の成長に悪影響を及ぼしていると判断することはできません。チャールズ・ボーグ氏他による(Bourgue et al.)文献が最も似ている例ですが、これは、カナダでのカバノキの減少についてのものです。

第3に、ディラードさんの述べている最近の水不足は、この地域でよく記録されているものです。
Charles P-A. Bourque, Roger M. Cox, Darren J. Allen, Paul A. Arp, Fan-Rui Meng (2005) Spatial extent of winter thaw events in eastern North America: historical weather records in relation to yellow birch decline Global Change Biology 11 (9) , 1477-1492

USDA Plant Hardiness Zone Map

City of Atlanta water restrictions [pdf]

全ての記事は「温暖化の目撃者・科学的根拠諮問委員会」の科学者によって審査されています。

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