気候変動への「適応」にかかるコストは?


国連気候変動会議(COP20)の会場より、温暖化担当の小西です。

7日、UNEP(国連環境計画)が、温暖化の被害に対応する「適応」についての新しいレポートを発表しました。

その内容は、世界の国々が「適応」のため必要とする資金額は、これまでの想定を大きく上回るという衝撃的なものです。

気候変動の深刻な影響をくいとめるには、地球の平均気温の上昇を「2度未満(産業革命前に比べて)」に抑えることが必要とされており、国際社会もそれを目標としています。

初めて適応ギャップを発表したUNEPのサイドイベント

しかしこのレポートでは、たとえこの「2度未満」という目標を達成したとしても、途上国全体で必要になる適応資金は、2025~2030年までに毎年1,500億ドル(18兆円)。

2050年までには2,500~5,000億ドル(約30~60兆円)に達する可能性があると指摘。

この規模は、これまでIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の評価に基づき「2050年までに毎年700~1,000億ドル(85~120兆円)」と予測されていた金額の、4~5倍に相当します。

会場の一角では、国連機関から各国政府、NGOなどのブースが並ぶ

これに対し、実際に2012~2013年の期間で、「適応」のため投じられた公的資金は、230~260億ドル(2.8~3.1兆円)。

その90%は途上国自らが、厳しい経済状況の中で支払っていたことが明らかになりました。

さらに、各国による温室効果ガスの排出削減目標は、全てを積み上げても、「2度未満」という目標を到達するレベルに達していないのが現状です。

空の皿を前に気候のための断食を呼びかける若者たち

7日に行なわれたサイドイベントでUNEPの研究者は、「たとえ2度目標を実現しても膨大な資金が必要だが、対策をおこたれば必要な金額は2倍にふくれあがる」と訴えました。

2週目を迎えたCOP20に参加する世界のリーダーたちには、この問題への真摯な対応が求められています。

温暖化によって絶滅の危機にあるホッキョクグマのぬいぐるみ

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専門ディレクター(環境・エネルギー)
小西 雅子

博士(公共政策学・法政大)。米ハーバード大修士課程修了。気象予報士。昭和女子大学特命教授、京都大学院特任教授兼務。
中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005 年に国際 NGO の WWF ジャパンへ。専門は国連における気候変動国際交渉及び国内外の環境・エネルギー政策。2002 年国際気象フェスティバル「気象キャスターグランプリ」受賞。環境省中央環境審議会委員なども務めている。著書『地球温暖化を解決したい―エネルギーをどう選ぶ?』(岩波書店 2021)など多数。

世界197か国が温暖化対策を実施する!と決意して2015年に国連で合意された「パリ協定」の成立には感動しました!今や温暖化対策の担い手は各国政府だけではなく、企業や自治体・投資家・それに市民です。「変わる世の中」を応援することが好きな小西です♪

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WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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