日本の「化石賞」の受賞は何を語るか


南アフリカのダーバンで開かれているCOP17の会場より、温暖化担当の山岸です。
地球温暖化問題に取り組む世界の500以上の団体のネットワーク、CAN(気候行動ネットワーク)インターナショナルは、2000年から、こうした国連会議でのその日その日の交渉において、後ろ向きな発言や行動をした国に「化石賞」を与え始めました。

以来、日本はこの不名誉や賞の常連として知られるようになりました。とくにCOPでは、化石賞を受賞しなかったことはありません。

しかし、ここダーバンで開催されているCOP17では、2週目に入っても、授賞式で日本の名が呼ばれることはありませんでした。こんな会議は初めてです。

しかしそれは、日本の交渉姿勢が理解され、受け入れられたからではありません。
むしろ、京都議定書の第2約束期間に反対し続け、「すべての締約国が参加する包括的な枠組みが必要」と主張しながら具体策を示さない日本に、世界が注目も期待もしなくなったことの現れといえます。

ところが、とうとう8日、日本、カナダ、ロシアの3か国が2位を受賞しました。7日にはカナダと日本の、8日はロシアの環境大臣がそろって京都議定書の第2約束期間に反対する演説をしたからです。

この3か国が第2約束期間に反対していることは知られていましたが、今回は温暖化による深刻な影響を受けているアフリカでのCOP。アフリカ諸国は特に京都議定書の第2約束期間の締結を求めているので、少しは態度を変えるかもしれない―― そうしたわずかな希望は、またも裏切られました。化石賞の受賞は、そんな3国に対し、交渉姿勢を変えてほしい、という最後のメッセージです。

COP17も最後の1日を残すだけとなりました。会議室の扉の向こうでは、各国が自国の利害を守ろうと、熱い議論を交わしていることでしょう。

地球全体の環境を守らずして、各国がそれぞれの利益を守ることなど決して出来ないこと、そして、「温暖化を防ぎ、未来を守る」というこの会議本来の意義に立ち返り、「化石賞」の国々が、合意に貢献してくれることを望んでいます。

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化石賞の授賞式に駆けつけた世界のメディア関係者

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京都議定書の第2約束期間に反対している日本・カナダ・ロシアの3か国が2位を受賞しました

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一方、2050年までに温室効果ガスを80%削減するなど積極的な提案を行なったアフリカグループはCOP17初の「宝石賞」を受賞しました。

 

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自然保護室長(気候エネルギー・海洋水産・生物多様性・金融)
山岸 尚之

立命館大学国際関係学部に入学した1997年にCOP3(国連気候変動枠組条約第3回締約国会議)が京都で開催されたことがきっかけで気候変動問題をめぐる国際政治に関心を持つようになる。2001年3月に同大学を卒業後、9月より米ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士プログラムに入学。2003年5月に同修士号を取得。卒業後、WWFジャパンの気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連気候変動会議に毎年参加し、国際的な提言活動を担当。2020年より自然保護室長。

京都議定書が採択されたときに、当地で学生だったことがきっかけでこの分野に関心をもち、大学院を経てWWFに。以来、気候変動(地球温暖化)という地球規模の問題の中で、NGOがどんな役割を果たせるのか、試行錯誤を重ねています。WWFの国際チームの中でやる仕事は、大変ですがやりがいを感じています。

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