京都府および亀岡市に対し、京都スタジアム(仮称)の整備計画に関する意見書を56団体合同で提出
2016/12/16
11月下旬、「亀岡市都市計画公園及び京都スタジアム(仮称)の整備計画の策定にあたり考慮すべき基本方針 Ver.2」(以下、基本方針)が京都府と亀岡市によって、公表されました。しかし、いくつかの検討すべき点、改善すべき点があります。アユモドキの保全に関心を寄せる56団体で、下記の意見書を12月16日付で、京都府知事およ び亀岡市長宛送付いたしました。
2016年12月16日 共同意見書
亀岡市都市計画公園及び京都スタジアム(仮称)の整備計画等に関する意見書
京都府知事 山田啓二 殿
亀岡市市長 桂川孝裕 殿
平素より、アユモドキをはじめとする京都府下での生物多様性の保全にご尽力を頂き敬意を表します。
さて、本年11月下旬、京都府および亀岡市は、環境保全専門家会議での議論および提案された事項を基に作成した「亀岡市都市計画公園及び京都スタジアム(仮称)の整備計画の策定にあたり考慮すべき基本方針Ver.2」(以下、基本方針)を公表されました。今後は、この方針に基づいてアユモドキの保全を進められていくと伺っております。
その基本方針を拝見したところ、アユモドキ等希少水生生物が生息する集水域の保全を実行するにあたって、さらなる検討および改善が必須となる問題を、複数、見出しました。種の絶滅を防ぎ保全を進めることが、生物多様性条約の下、全世界が合意した愛知目標のひとつ(目標12)であり、京都府・亀岡市において、それに向けた明確な取り組みが行われることを期待します。
つきまして、私たちは、下記の点について必ず検討、改善していただけるよう要請します。
記
(1)基本方針の第1章では、これまでに行われた調査研究の結果等が示されており、それらを記録として公開したことは評価できる。また、その研究結果等に基づいて、第3章では、都市計画公園およびその周辺の水路ネットワークでのアユモドキ等希少生物の生息場所の保全・改善策が具体的に検討され、提言されていることも積極的に評価できる。ただし、
- 老朽化した灌漑用ラバーダムの改修は、曽我谷川・農業用水路等の水路ネットワークでのアユモドキの繁殖・産卵・仔稚魚の成育と当地での個体群の存続にとって、極めて重要である。しかしながら、基本方針では、その重要性が指摘されてはいるが、改修を行う主体が示されていない。上桂川用水土地改良区による主体的な改修が望めない現状であるのならば、アユモドキ生息地を保全するという目的で、府、または市、または国が主体となって改修を行うべきである。
- アユモドキをはじめとする様々な水生生物と共存してきた農業の形態(灌漑用ラバーダムの操作等を含む)を維持し、地域の人々の営みと湿地生態系の保全を両立させていくために、地域住民や専門家を含めた協議会を行政が設置すべきである。また、地域の人々の生活と生態系の保全の両立が将来にわたり継続的に可能となる社会的な仕組みづくりを、多様な関係者間の合意形成を図りながらこの協議会が段階的に進めていくことが不可欠である。
- 平成28年4月27日に公表された「座長提言」は、地下水保全等が十分に保証されることを前提として、スタジアム建設地を都市計画公園から亀岡駅北土地区画整理事業地に変更することを提言したものである。しかし、基本方針に記された亀岡駅北土地区画整理事業地における地下水保全対策のための調査は、スタジアム建設を前提として行われたものではない。従って、新たにスタジアムを建設する場合の地下水への影響調査と保全対策の検討が不可欠である。アユモドキの越冬地への影響を考えれば、地下水はただ監視すればよいというものではなく、十分な根拠を得た上で、現状の流量や流路を確保できるかどうか、検討すべきである。
- アユモドキの仔稚魚が成育場として利用する事業計画地とその周辺の水路群は、現状の水路ネットワークをただ整備するだけでなく、継続的な維持管理も不可欠である。その維持管理をどのように行っていくのかも明らかにすべきである。
(2)亀岡市都市計画公園及び京都スタジアム(仮称)用地の保全整備計画は、それぞれの計画を切り離して考えるのではなく、アユモドキ等の保全の観点から専門家会議の科学的な検討・評価に基づきながら関係機関、関係部局が連携し、一体として検討すべきである。
(3)アユモドキは、「京都府絶滅のおそれのある野生生物の保全に関する条例」で「指定希少野生生物」に指定されている。また、同条例に基づいて京都府が平成20年度に策定した「アユモドキ保全回復事業計画」には、各種保全事業を府が主体的に実施する旨が記されている。よって、京都府は、都市計画公園およびその周辺地域を「生息地等保全地区」に指定するなどして、亀岡市、環境省、文化庁等関係機関と連携しつつ、その中心となって積極的に保全対策を行うべきである。また、その保全策の検討・実施にあたっては、京都府、亀岡市、環境省、文化庁それぞれの役割分担を明確にすべきである。
意見書賛同団体
(公財)世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)、(公財)日本自然保護協会、(公財)日本野鳥の会、(一社)コンサベーション・インターナショナル・ジャパン、(公財)日本生態系協会、日本生態学会自然保護専門委員会、日本生態学会近畿地区会自然保護専門委員会、日本魚類学会、日本野鳥の会京都支部、全国ブラックバス防除市民ネットワーク(ノーバスネット)、(NPO)宍塚の自然と歴史の会(代表及川ひろみ)、小豆沢勤労者つりの会、呉勤労者釣りの会、(NPO)日本国際湿地保全連合、(NPO)秋田水生生物保全協会、阿武隈生物研究会、生駒の自然を愛する会、(NPO)エコパル化女沼、岡山淡水魚研究会、香川淡水魚研究会、(NPO)かごしま市民環境会議、霞ヶ浦チャネルキャットフィッシュバスターズ、亀成川を愛する会、外来魚問題連絡会in北海道東北ブロック、近畿大学バスバスターズ、(NPO)くすの木自然館、佐渡在来生物を守る会、滋賀県大生き物研究会、(NPO)シナイモツゴ郷の会、城北水辺クラブ、(一社)水生生物保全協会、(NPO)生態工房、生物多様性研究会、生物多様性保全ネットワーク新潟、ゼニタナゴ研究会、田沢湖生物研究会、土浦の自然を守る会、(NPO)鶴岡淡水魚夢童の会、手賀沼水生生物研究会、東海タナゴ研究会、東京勤労者つり団体連合会、ナマズのがっこう、琵琶湖外来魚研究グループ、びわ湖サテライトエリア研究会、琵琶湖を戻す会、ブラックバス問題新潟委員会、ぼてじゃこトラスト、水辺づくりの会鈴鹿川のうお座、(NPO)水辺と生物環境保全推進機構、深泥池水生生物研究会、三ツ池公園を活用する会、(公財)宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団、宮城大学自然研究部、淀川水系イタセンパラ研究会、渋谷勤労者つりの会、近江ウェットランド研究会
以上、56団体。
本件に関する連絡先
- 草刈秀紀(世界自然保護基金ジャパン 03-3769-1711)
- 志村智子(日本自然保護協会 03-3553-4103)
- 岩崎敬二(日本生態学会近畿地区会自然保護専門委員会 0742-41-9591)
- 小林 光(全国ブラックバス防除市民ネットワーク nobass3@gmail.com)
- 森 誠一(日本魚類学会自然保護委員会 smori@gifu-keizai.ac.jp)
- 名取洋司(コンサベーション・インターナショナル・ジャパン 03-5315-4790)